第6章 鉄蹄の下で
二匹の護馬甲は位置を取りながら、じりじりと俺に迫ってくる。一左一右、打ち合わせたように。
左のやつが先に突っ込んできた——体当たり、お決まりのパターンだ。烁殻虫を右にかわさせると、軽く避けられる。烁殻虫の四本脚が地面に弧を描き、スタミナはちょっとだけ減っただけだ。
でも右のやつは突っ込まなかった。こいつは俺の着地する位置を待っていた。
前蹄を上げ、勢いよく踏みしめる。地面が炸裂し、扇状の衝撃波が三本、地面を這うように押し寄せてきた。烁殻虫は向きを変える間もなく、一発目でひっくり返された。背中から落ちて一回転——スタミナがまた一段階減った。
二発目、三発目と続けて体に当たり、HPが五百以上も削れた。
【痛すぎるだろ?!】
急いで起き上がり、烁殻虫をひっくり返そうとする。でも重すぎる。力を振り絿ってどうにか起こすと、息が切れた——スタミナはもう半分しか残っていない。
二匹の護馬甲はどちらも動かない。スキルを使い終わった後、そいつらは地面に杭でも打たれたように動かず、重厚な金属の擦れる音を立てている。錆びた腿甲からは数枚の鉄片が剥がれ落ち、下の赤褐色の錆層が露わになっている。
【鈍重にも鈍重なりの良さがある……一通り技を出したらしばらく休まないといけない。】
藍ゲージをチラリと見る——まだ満タンだ。さっきまで烁殻虫の機動力とスタミナで凌いでいて、魔法は使ってなかった。でも今は烁殻虫が怪我をしている。もうあまり動かせない。
【作戦を変えないと。】
バッグから織魔絨を一つ取り出し、握り潰す。冷たい綿のようなものが鼻の奥に入り込み、藍ゲージがピクッと動く——満タンになった。
【シエルがたくさん置いてってくれて助かった。】
烁殻虫は足を震わせながらどうにか立ち上がる。俺はひらりと乗り、その首をポンポンと叩く。
「あと少しだけ頑張れ。」
そいつは鼻を鳴らした。「できるだけな」と言っているようだ。
二匹の護馬甲が息を整え、体勢を立て直す。今度は賢くなっている——一匹が前で陽動し、もう一匹が後ろで機会を狙っている。
左のやつが一歩踏み出した。右に避けると、右のやつがすぐに前に出てきて前蹄を上げる。烁殻虫が後ろに跳んで何とかかわす。スタミナがまた一段階減った。
【このままじゃダメだ。スタミナが持たない。】
そいつらの錆痕をじっと見つめる。剥がれ落ちた鉄片から脆い錆層が露わになっている——そこが突破口だ。
一匹の護馬甲がまた突っ込んできた。今度は烁殻虫を避けさせず、そいつが目の前に来るのを待って、横に身をかわしながら同時にその側腹に向かって一番短い技を叫んだ。
「打!」
ぼんやりとした拳が錆びた鎧をかすめ、小さな錆屑を叩き出す。HPはほんの少しだけ減った。藍はほとんど減ってない。
【やっぱり名前が短いほど威力は低い……でも速くて藍を消費しないのはいい。】
もう一匹の護馬甲が仲間がやられるのを見て、横から体当たりしてきた。同じ手を使う——烁殻虫をそいつの前脚の下に潜り込ませ、腹の下を滑り抜ける。
「打!」
もう一発、反対側の錆層に叩き込む。
二匹の護馬甲は怒り狂った。交代で攻撃するのをやめ、同時に突っ込んできた——左右からで逃げ場を塞ぐ。
【もう避けない。】
烁殻虫を止まらせ、深呼吸する。藍はまだ大半残っている。スタミナはあと三分の一。二匹の頸甲はどちらももう緩んでいる——さっきの二発は無駄じゃなかった。
「究極超絶無敵打——二連撃!」
淡い青い二つの拳が俺の脇から飛び出し、左右に分かれて、正確にそいつらの頸甲に叩き込まれた。
「バキッ——」
左の頸甲にひびが入った。右のは一枚欠けた。藍が一気に減った。
二匹の護馬甲は声なく頭を上げて嘶き、鉄蹄をばたつかせて、互いにぶつかった。硬直は前より長い——激しい動きで錆びた関節が固まってしまったのだ。
この隙に、もう一つ織魔絨を取り出して握り潰す。藍が満タンに戻る。
烁殻虫から飛び降りて、そいつを端に下がらせる。俺は左のやつの側面に回り込む。
「烈打!」二文字。一発をひび割れに叩き込む。藍が微かに震える。
「超烈打!」三文字。もう一発。ひびが広がる。藍がまた少し減った。
「究極烈打!」四文字。ひびが頸甲全体を貫く。藍がはっきりと減った。
「究極超絶烈打!」六文字。頸甲が吹き飛ぶ。藍はほんの少ししか残っていない。
錆層の下には、もうすっかり朽ちた鉄芯が見えている。
二歩後退し、最後の織魔絨を取り出して握り潰す。藍が満タンに戻る。
二匹の護馬甲はまだもがいている。一匹は急所が露わになり、もう一匹も今にも落ちそうだ。
深呼吸する。
「せっかくいい気分だったのにふざけて道を塞いで俺の乗り物を傷つけやがったから連続で数十発殴って憂さ晴らしさせてもらう!」
三秒。一息で言い切った。周囲にいくつもの拳が浮かび上がり、空中で構えた。藍が一瞬で消えた。
護馬甲は怖がって後ずさる。蹄を地面にこすりつけ、互いのケツをぶつけ合う。動物は火を恐れる。馬の遺物であっても。
拳が叩き込まれる。
一発目、左のやつの胸甲が凹む。二発目、右のやつの前腿甲が砕ける。三発目、四発目……連続で当たったところから錆屑が飛び散る。一振りごとにスタミナゲージが一緒に震える——藍が空になると、拳を振るうのにもスタミナを消費する。
最後の一発、左のやつの露わになった頸芯に叩き込む。
HPがゼロになる。そいつは声なく頭を上げ、轟然と倒れた。
右のやつは向きを変えて逃げようとしたが、錆びた関節が足を前に出せない。追いかけて、最後のスタミナで短い一文字を叫んだ——
「打!」
拳がそいつの後脚の錆層に当たる。よろめき、地面に膝をつき、二度と立ち上がれなかった。
藍が空になった。スタミナも空になった。
疲れてその場に寝転がった。ちっぽけなぬいぐるみの体は空っぽになったみたいだ。
その時になって、烁殻虫の体にまたひび割れが現れていることに気づいた。しかも今回はかなり酷い——地響きの波で古い傷がもっと広がってしまったのだ。そいつは地面に横たわり、脚が微かに痙攣していて、どうしても立ち上がれない。
【システム通知:乗り物が瀕死です。直ちに回収します。】
炎の塊が二つの手を形作り、そっと烁殻虫をすくい上げ、合わせて、そして消えていった。
【お前まで行ってしまったのか。】
二匹の護馬甲の残骸が静かにすぐそこに横たわり、錆粉が空気中にゆっくりと舞い落ちている。
意識がぼやける前に、ますます濃くなる錆びた匂いを感じた。
普通の鉄錆じゃない。溺れた後に鼻の中に残るような生臭さだ。
【……ここになんで人がいるんだ?】
【戦い終わったばかりの場所に、誰が来るんだよ……】
目の前が暗くなり始める。
疲れたんじゃない。これは——




