第5章 織魔絨
「おかえり、リリィ。ところで、あなたの剣は?」
戻ってきたら、朔にすぐ見つかってしまった。
「ここ、腐がひどくて、大剣がなくなった。」
「まさか特殊武器まで腐るとはね……でも、あなた、彼女に会ったみたいね?」
「彼女? ああ、『大師』っていう変な人に会って、ちょっと魔法を教えてもらった。朔はどうして知ってるの?」
「あなたの目が教えてくれたわ。その魔法、『打』っていうのよね?」
「う、うん。」
【俺の目? 字が書いてあるわけでもないのに。こんなボタンみたいな目で、朔はどうやって見分けたんだ?】
でも今はそれを考えている場合じゃない。シエルの売り場に目を向ける——彼女はまだ戻っていない。
【ちょうどいい、コーラにだけ先に聞いてみよう。】
口を開きかけたとき、朔が微かに口を開きかけて、何か言いたそうにして、また飲み込んだ。
「朔、ちょっと待ってて。」
「何しに?」
「コーラにちょっと聞きたいことがある。」
コーラのところへ歩いていく。
「コーラ、あんたが作ったあの短剣、覚えてるか?」
「どうした。」
「いったいどういう説明をシエルにしたんだ? あいつ、友達に『俺が彼女を好きだ』って言ったらしいんだけど!」
言い終わると同時に、頭の上から埃が何粒か落ちてきた。
気にせずに続ける。
「でもあの短剣はあんたが彼女に打ってやろうと思ったものだろ。なんで俺のせいにするんだ?」
「あいつに借りを作らせたくなかった。それだけだ。」
【じゃあ俺に押し付けるのはいいのかよ!】
「じゃああんたが彼女に説明してくれないか? 俺は彼女のこと好きじゃない——少なくともそういう意味では。」
「難しい。あいつに何度も聞かれたけど、ずっとそう言ってきた。」
【はいはい、もう完全に言い訳できない状況だな。】
コーラが説明したくないなら、無理強いするのもよくない。ひねくれた性格設定、たぶん制作陣がわざとやったんだろう。どうやらNPCのサブクエストは全部やらないと、この誤解はずっと解けそうにない。
その時、まだ埃が落ちていることに気づいた。しかもさっきより多くなっている。
顔を上げて見た——何も見えなかった。
振り向いて、朔を見た。
彼女はまだ石座のそばに立っていて、顔にはあの相変わらず優しい笑みを浮かべている。でも彼女の肩には、細かい黒い埃がついていた。普通の埃じゃない。どちらかというと……何かが焦げた後に舞い落ちる灰のようなものだ。
「朔……どうしたんだ?」
走り寄る。
「大丈夫よ。」
彼女は俯いて肩の灰を見て、そっと払った。
「この世界のルールがそうなってるの。私が守護者でも、腐を引き受けなきゃいけないのよ。そうしないと教会が安定しないから。」
腐を引き受ける? でも前に砕の力の時は、そこまで酷くなかったぞ……
【気づかなかっただけか?】
違う。前の教会は元々ボロボロの廃墟だった。朔が守っていなければそもそも居られなかった。
彼女がそんな風に優しく笑っているのを見て、心が締め付けられた。
早く出発しないと。
「朔、行ってくる。」
「うん。」
一歩踏み出して、また立ち止まった。何か言いたいけど、何を言えばいいのかわからない。
まあいいや。
——
教会を出ると、金色の蛍が初めてこんなに急いで飛んだ。もう追いつきそうにない——蛍が速すぎるのか、それとも烁殻虫がここに慣れていないのか。
『打』を覚えてからは、確かにあの鎧たちは怖くなくなった。ただ喋るのがすごく疲れる。でもほとんどの鎧は避けて通っている。何せ藍の残量は限られているから。
さっき「大師」がいた場所に戻ると、彼女の姿はなく、灯っていない篝火だけが残っていた。火を灯すと、蛍はさらに先へ急かすように飛んでいった。
あまり遠くへ行かないうちに、二匹の護馬甲が見えた。彼らは行ったり来たり走り回って、輪を作っている。
その輪の中に見覚えのある影が——
シエルだ。
「来ないで! これ以上来たら、私……ああ! 逃げ出せない!」
二匹の護馬甲はどんどん囲みを狭めていき、輪が少しずつ縮まっていく。
【こいつらの思うままになるな!】
「究極超絶無敵打——二連撃!」
彼らに向かって「打」のつく技を叫ぶと、淡い青い光を放つ拳が俺の脇から飛び出した。一発が一匹の護馬甲の側腹に当たり、もう一匹の前肩に跳ね返った。
二匹の護馬甲はどちらも声なく頭を上げて嘶き、足を止めて、一斉に俺をじっと見つめた。
HPゲージが現れた。
【エリートモンスター:護馬甲——HPがちょっとだけ減った】
【エリートモンスター:護馬甲——こっちもちょっとだけ減った】
【こんなに長い名前なのにこれだけしかダメージ出ないのか?……違う、皮が厚いんじゃなくて、あの錆びた鎧がダメージを吸収してるんだ。】
名前が長いほど消費も大きい。この二連撃で、藍が半分消えた——藍はHPと同じで、勝手に回復しないんだ。
「ちびぬいぐるみちゃん、ついに助けに来てくれたんだ♡」
シエルがうっとりした顔で俺を見ている。
「あいつらが反応する前に、早く逃げるぞ!」
「逃げようとしてるんだよ——」
その時、彼女の腕にまたたくさんの荷物を抱えているのに気づいた。
「そうだ、織魔絨をいくつか置いてあげるね♡」
彼女が地面に投げると、毛むくじゃらな小さな玉がいくつか転がり落ちてきた。
「織魔絨って何だ?」
「使ってみればわかるよ! 握り潰して、吸い込めばいいから♡」
言い終わると、シエルはあっという間に走り去って見えなくなった。
【やっぱりあいつは武器なんていらないんだな……この逃げ足、魔法みたいに速い。】
一つ拾い上げて、握り潰す。
ひんやりとした綿のようなものが鼻の中に漂い込み、藍が一気に増えた。
【こうやって使うのか……】
でも放心している場合じゃない。二匹の護馬甲はもう体勢を整えて、俺に向かって突進してきている。
鉄蹄が地面を叩き、一歩ごとに地面が震える。動きはとても遅いけど、その圧迫感は全然甘くない。




