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転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第1巻 フラグ編

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第1章 ぬいぐるみの新しい生活

 どのくらい寝てたんだろう。


 誰かがそっとつついてくれたおかげで、やっとぼんやりと深い眠りから覚めた。


 縫い目の目をゆっくり開ける——


【ん? なんで……】


 まだ朔の手のひらの上だった。


 彼女の指がそっと俺を包み込んでいて、ぽかぽかする。


「楽になりましたか? リリィ。」


 頭の上から降ってくる声が、優しすぎる。


「うん、だいぶ楽になった。」


「余計な糸はもう全部ほどきましたから、これで動けるはずですよ。試してみますか?」


 そう言いながら、指先はなかなか離れない。


 その指が背中に沿ってゆっくりと滑り落ちていく。


 のんびりと、何かを確かめるみたいに。


【……気のせい? ちょっと撫でられすぎじゃないか?】


 でも彼女の表情はごく自然で、口元には淡い笑みが浮かんでいる。


「ありがとう。試してみる。」


 手のひらから地面に飛び降りて、二、三步走る。


 何度かジャンプしてみる——完璧だ!


 さっきまでの余計な糸は確かに取れていて、手足は新品みたいに動く。


 俺が元気に跳ね回るのを見て、朔はもっと嬉しそうに笑った。


 もちろん、朔はずっと笑っている。


 昨日、この教会で目覚めてからずっと、彼女はこの優しいままだ。


【守護者様って本当に……最初から最後まで優しすぎる。もう完全に落ちたな。】


「守護者様。」


 教会の扉が突然開かれた。


 入ってきた人物は軽く頭を下げて、肩にかけた黒いマントを風に揺らしている。


 鍛冶屋のコーラだ!


 この世界の「体型が一番美しいNPC」ランキング第一位。


【この上腕三頭筋、この力こぶ、この腹筋……画面で見るモデルよりずっと精緻じゃねえか!】


【触ってみてえ……ダメダメ、目がくぎ付けだ。】


「おかえりなさい、コーラ。」


 朔の声が背後から聞こえる。


 振り返ると——彼女はまだ同じ場所に立っていた。


 でも目はしっかり俺を見ていた。


【多分、逃げ出さないか見張ってるんだな。】


 でもそういえば、確か鍛冶屋のコーラって、最初のマップのエリートを倒した後に救出しないと現れなかったはずだよな。


 なんで今ここにいるんだ?


【まさか……1.0バージョンで全部変わったのか?!】


【ボスの攻撃パターンも変わったりしないよな? やめてくれよ、せっかく覚えたのに!】


「守護者様、選ばれし者に鍛えた武器をお渡しするように仰せつかりました。その方はどちらに?」


「目の前にいますよ、コーラ。」


「目の前?」


 その時、大柄なコーラがようやく下を向いて俺を見た。


「この方ですか?」


 でもすぐに顔を上げて朔を見る。


 明らかに俺を本気にしていない。


「このぬいぐるみですよ、コーラ。」


 朔の口調は相変わらず穏やかだ。


 でも気づけば、いつの間にか彼女は俺の隣に来ていた。


 その手がそっと俺の頭の上に置かれる。


「ぬ、ぬいぐるみですか? それは……」


「ああっ! どいてどいて! 晶砕獣ショウサイジュウに噛み殺される!」


 また別の影が荷物を抱えて飛び込んできた。


 コーラが慌てて道を空ける。


 その影は背中で扉をバタンと閉めた。


「はぁ……危なかった♡」


 この細い影……


 放浪商人のシエルか?!


【お前、第二マップのすごく落ちやすい場所まで進まないと出会えないんじゃなかったのか?】


【終わった終わった、本当にゼロからやり直しか。】


【丸暗記した攻略が全部パーだ!】


「守護者様、コーラ、またお会いできて嬉しいです♡」


「おかえりなさい、シエル。」


【シエルにもこの待遇があるのか?】


【守護者様はいったい何人の奴に「おかえり」って言ってるんだ?】


 でもよく考えたらそうだ。


 朔は守護者で、教会は元々NPCたちの拠点なんだから、彼女たちは元々ここにいるべきなんだ。


 テストサーバーで「救出したら現れる」っていう設定は、たぶん単に作りかけだっただけ。


 今の1.0バージョンで、ようやく全てが本来の姿に戻ったんだ。


 そして朔は、俺やセレスのような真の「選ばれし者」には、きっと他の特別なセリフがあるはずだ。


 昨日みたいに。


「え? かわいい♡ ここにいる小さな子は誰?」


 シエルは抱えていた荷物をベルトの小さな木箱に詰め込むと、地面にいる俺を見つけた。


 しゃがみ込んで、手を伸ばして俺の顔を揉もうとする。


「顔を揉むな。」


「うん~しゃべった♡ ますますかわいい♡」


 言われたら余計にシエルは激しくなった。


「おやめなさい、シエル。」


 朔の声が突然割って入る。


 彼女は一歩前に出て、俺の前に立ちはだかった。


「この方は選ばれし者ですよ。あなたの行為は……少し度が過ぎていますわ。」


 口調は相変わらず優しい。


 でも朔がシエルを見る目つきがちょっと違う気がする。


 シエルは気にした様子もなく、にこにこしながら朔を避けてまた俺の前に来る。


「選ばれし者? この小さなぬいぐるみが?」


「あら、それならちょうどいいものがあるの♡」


 木箱から色んな商品を取り出して、俺の前に広げる。


【ちょっと待て待て、俺は一銭も持ってないんだぞ!】


【何で買えってんだ!】


 俺の困った様子を察したのか、シエルは首をかしげた。


「お金がないの忘れてた♡」


「じゃあサービスで縫合剤をあげるね♡」


「引き裂かれたらすぐに使わないと、動きに影響が出るから♡」


 言い終わると同時に——


【システム通知:縫合剤がバッグに追加されました。】


【バッグ? いつの間にバッグなんて持ってたっけ?】


「おいで、ちびっ子。」


 後ろからコーラの声がした。


【ちびっ子? もうあだ名がついたのか?】


「これは破晶嶺ハショウレイ冰白玉ヒョウハクギョクの破片で作ったんだ。大事に使え。」


 彼女の手には水晶の大剣が握られている。


 刀身は透き通り、淡い青い光を放っている。


「は、はい……ありがとう……」


 受け取ろうとしたその時、朔の声が横からした。


「私が持ちますわ。彼女には重すぎるかもしれません。」


 手を差し出し、コーラに剣を渡すよう促す。


「大丈夫だよ、朔。自分でやってみる。」


 朔は一瞬迷った後、コーラにうなずく。


 コーラが手を離す。


 大剣が宙に浮いたまま、俺の前に懸かる。


【コーラ姐さん、手を離さないで!】


【やばい、潰される!】


「何を怖がってるんだ……ちびっ子。」


【え? 平気?】


「なかなか扱いやすい……」


「扱いやすいならそれでいい。礼はいらない。」


 待てよ。


 この「扱いやすい」って、俺が言ったんじゃない。


 でもこの声……


 セレスだ!


 起きたのか、セレス!


 心の中で何度も呼んでみたけど、返事はなかった。


 見下ろすと、自分のちっぽけな体が、いつの間にか水晶の大剣をしっかりと握っていた。


 ただのぬいぐるみの手なのに。


 歩けるようになったばかりなのに。


 なぜかこの剣の重さがちょうどいい。


 まるで、誰かが代わりに持っていてくれているみたいだ。


「すごいですね。」


 朔の声が背後から聞こえる。


 振り向くと、彼女は俺を見ていた。


 顔には相変わらず優しい笑顔。


「リリィ。」


 突然名前を呼ばれた。


「うん?」


「これからお出かけするときは、ちゃんと教えてくださいね。」


 彼女はしゃがみ込んで、手を伸ばした。


 俺の頭の上に跳ねた小さな布を、そっと撫でる。


「心配になりますから。」


 その声はとても軽く、ごく普通のことを言っているだけのように。

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― 新着の感想 ―
ぬいぐるみで転生ですか! しかし武器も使えるようで選ばれたプレイヤーの素質は十分なのか… しかし歩くことより武器を持つ方がしっくり来るのが難点ですね
転生したらぬいぐるみ。 これは新しいアイデアですね。 しかしぬいぐるみでどのように生きていくのか。 先が気になるので、ブクマしておきます!
内省と地の文のギャップが激しく精神疾患を疑う。多分書き方が分からずこうなってしまっているのだと思いますが、心の声は面白いので一人称の地の文も思いっきりそちらに寄せると読みやすくかつ面白くなりそうです。
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