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転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第1巻 フラグ編

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第11章 フラグ、散華

 迷わずまた破晶聖殿ハショウセイデンの前に転送して、持ってた縫合剤でほつれ状態を消した。


 そしたら縫合剤が消えちまった。


【これ、篝火の前じゃ消えないんじゃなかったのか? 教会の篝火だけ特別なのか?】


 急ぎすぎた。ボス戦に焦って、朔の話も最後まで聞かずに飛び出しちまった。


 何より金がない。手応えを覚えてるうちに、もう一回挑戦したかっただけだ。


 でも……これで朔を傷つけちゃったりしないよな?


 ないない。朔はそんなに寛大だ。ちょっと話を聞かなかったくらいで怒るわけがない。


 とにかく、どうやってフラグに勝つかを考えよう。


 もし最初に動かなかったら、フラグは跳びかかってこないんじゃないか?そうすればスタミナも節約できる。


 よし、試してみる。


 大殿に入る。フラグはやっぱり背を向けてた。俺が来てから、彼女はゆっくり節杖を手に取って振り返る。


「またお前か……何が楽しくて来てるんだか。」


【前にはなかったセリフ!】


「言っただろ、救いに来たって。フラグ、俺はやり遂げる。」


「どうでもいい。」


 やっぱり動かずに話してるだけだと、彼女は跳びかかってこない。フラグの行動にも規則があるらしい。


 急いで走って飛び道具を避ける。わざとじゃない。ただ距離を詰めたかっただけ——今のフラグには接近戦の技が少ないから。


 でもまさか、晶刺が俺を追いかけて低空を飛んだせいで、二本そのままフラグの足に刺さるとは。


「……つまらない。」


【ボスのスキルに味方ダメージがあるのか?】


 でもこれ、どうやら仕様みたいだ。刺さった晶刺が砕けて遅延ダメージを与えたけど、その数値は低かった——俺に当たった時のダメージより低ければ、たいしたことない。


 だからフラグにとっては、ただの表面がちょっと剥けたようなものだろう。


 でもなんでこんな仕様が?彼女の性格なら、自分をこんな風に軽んじるのは確かに彼女らしい。


 でも俺は本当にお前の代わりに痛いんだぞ、フラグ。


「なんで攻撃しないんだ?」


 フラグが跳び上がって杖を振り下ろす。


【そうだ、仕様ばかり考えてて攻撃を忘れてた!】


 烁殻虫シャクカクチュウでかわして、ちょうど横を向いたところを一太刀。でも通常攻撃じゃたったの85ダメージ。


「本気じゃないな……どうやらお前もこの戦いを大事に思ってないみたいだ。」


「違う。ただ傷つけたくないだけだ。」


「笑える冗談だな……はっ。」


 フラグが冷たく笑って、水晶節杖スイショウセツジョウを地面に突き刺す。天井からまた水晶が落ち始めた。


 今回は気をつけながら前に進む。落ちる水晶をかわしつつ、大剣を振り上げる時間を稼ぐ。


 もしかしたら、烁殻虫シャクカクチュウで体当たりしたほうがいいかもしれない。後ろに回って後ろ首を狙う——それならガードされない。これは俺がプレイして掴んだ経験だ。今でも通用する!


 烁殻虫シャクカクチュウは全力でフラグの背中に体当たりした。彼女は倒れこそしなかったが、腰が曲がった。


 その一瞬の隙と、体当たりで烁殻虫が空中に止まっている数秒——


 水晶横薙ぎ!


 脆弱が付いた。しかもまた五倍ダメージ!


【運が良すぎる!さすが俺!】


【現実じゃ運が最悪なのに、ゲームの中じゃ爆発的に運がいい。転生しても同じか!】


 しかも今回は首に当たった。フラグのHPゲージが半分近く減った。後ろ首にも割れ目ができて、浮遊する水晶が出てきた。


「いいじゃないか……ちょっと本気を出すか。」


【第二段階だ。】


 フラグの体が光り始めた。地面から何本かの水晶柱が現れ、中には同じように骨が封じられてる。俺は本能的に後退して柱の陰に隠れた。


 耳をつんざく爆裂音が響いた——目の前の柱が跡形もなく吹き飛んだ。烁殻虫がびくっと震え、耳がおかしくなりそうだ。俺は完全に呆然とした。


 フラグの体は何千もの破片に砕け散り、無数の水晶がまだ彼女の血肉とつながっていた。HPゲージがいくつもの短いゲージに変わった。


【なんだこれ?こんなにたくさんHPゲージがあるなんてバグか?全部削れっていうのか?】


 迷ってるうちに、水晶たちが少しずつ集まり始めた——彼女はまだ死んでいなかった。


 急いでスタミナ回復を待ち、大剣で欠片を削る。でも欠片はあまりに多くて時間がかかりすぎた。彼女は自分の形を再び集めて、まだまともな水晶柱から新しい水晶節杖を引き抜いた——前のは自爆で砕けてた。


 フラグの残りHPは三分の一を切っていた。前よりさらに砕け散っていて、もう彼女だと見分けるのがやっとだ。これが俺の実力だけじゃなく、彼女の自爆が自分も大きく傷つけるからだ。


「……砕けてもいい。」


 彼女はそう言いながら、頭上に晶刺の雨を召喚した。さっきの天井から落ちる水晶と似てるけど、もっと小さく、速く、細かい。でも地面に光沢のサインがあることに気づいた——ずっと上を見てなくてもいい。


 晶刺の雨を降らせ終えた後、彼女は突然ぼんやりし始めた。目は虚ろで、何かを考えているようでもあり、何も考えていないようでもあった。


【違う……放心じゃない。迷ってるのか?】


 地面の光沢を目で追いながら、彼女の背後に回る。同じ手でまた一太刀入れた。


 脆弱が重なる——十倍ダメージ!いや、今回は八倍だけど、それでも十分だ。


 フラグのHPゲージがついにゼロになった。彼女は片膝をつき、水晶節杖が手から滑り落ちて、カラリと澄んだ音を立てた。


【はぁ……やっと勝てた。】


【違う——三つ目の欠片はまだ見つかってないのに、何喜んでるんだ。】


 待っていたのは「処刑」だった。迷う。まずはこの辺りの欠片を探したい。フラグは殺したくない。


「早く終わらせろ……」


 こんなに迷ってる俺を見て、もう戦えないフラグが軽く言った。


「言っただろ、救いに来たって。お前を殺す選択はしない。」


「救うなんて……意味ない……」


「お前がどう思おうと、俺にとってはお前を救うことが意味だ。それがここに来た理由だ。」


 フラグは黙った。うつむいて、表情は見えない。


 長い時間が経った——いや、数秒かもしれない——彼女は小さく笑った。


「……はっ。」


 そして突然、俺の背中から大剣を抜き取った。反応する間もなく、彼女は剣先を自分の首に向けてた。


「フラグ?!」


 思い切り突き刺した。傷口から蜘蛛の巣のようにひび割れが広がる。彼女の体中の「人間」の血が噴き出した——もうこれ以上砕けないほど砕けてるのに、まだ血が流れてる。


 彼女は俺を見て、唇が動いたが、声は出なかった。


 そして体が消え始めた。爆発でも砕けるのでもない——ようやく何かを手放したように、少しずつ散っていった。


 処刑が終わった。大剣は勝手に背中に戻った。


 俺はその場に立ち尽くし、一面に広がるきらめく破片を見ていた。烁殻虫シャクカクチュウがそっと足に擦り寄ってきた。慰めてるみたいだ。


【……そうか、朔が言ってた。「彼女は何でもやりかねない」って。】


【技がどうこうじゃなくて——彼女は迷わず自分を傷つけるってことだったんだ。】


【自爆も、自害も……自分が砕けることなんて気にしてない。】


【だって彼女の心の中じゃ、自分はとっくに砕けるべきものだったから。】


 そして俺は一番欲しくないものを手に入れた——


【名無しの遺燼イジン】。


 名前すらない。ただ冷たい呼称だけがあった。


「……行くぞ。」


 振り返らずに背を向けた。


 背後には、ただ一面の水晶の破片と、名前のない遺燼だけが残された。

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