第2章 双界
教会の扉を押し開けると、状態は以前より良くなっていたが、この世界では実際のところ大した意味はなかった。
外は一面の闇だった。右側に増えた鏡面だけが光っている。制作陣はやはり鏡の迷宮を踏襲したようだ。
右を向くと、鏡面にぬいぐるみの俺が映った。他の方向の鏡面も次々と光り、闇の中からそれぞれの位置を現す。あらゆる方向を向いた俺が現れ、背景はもう闇ではなく、見えるのに触れない鏡の数々だった。
【まっすぐ進んで、完全に逆さまになった自分を見つけたら、足元の鏡を割れば出られる。テスト版の知識がようやく役に立った。】
すぐにその鏡面を見つけ、手斧を取って思い切り足元を叩き割った。鏡が砕け、足元が抜ける。
落下は一瞬だった。しかし鏡の砕ける音の他に、別のものも聞こえた。
「己を知り、そしてまた私に会いに来い。」
その口調には数え切れないほどの傲慢さがあった。「また会いに来い」と言っているが、「やっと会う資格ができた」と聞こえる。
【ミラナはやはり第一版の高傲さを引き継いでいる? でもこんなに早く彼女の声を聞くとは、少し意外だ。】
落ちた後は、旧バージョンのルール通り、鏡の中で大波に歪んだ自分を追いかけていけば、鏡の盾を壊すアイテムが見つかると思っていた。
しかし完全に体勢を整えると、景色はまったく予想と違った。
ここは——都市だ。高層ビル、車の往来、行き交う人々。俺は制服を着て、社員証まで提げている。
【……現実に戻った? そんなはずない。ゲームはまだ半分も進んでない。】
ピピッ——ピピッ——
スマホが鳴っている。無意識に取り出して見る。
【やばい、もうこんな時間、遅刻する!】
画面を消す。暗くなったスマホの画面に映ったのは、俺の顔ではなかった。
セレスだ。
そっとスマホを揺らす。彼女の周りも揺れる。彼女がいる場所はゲームのとある街のようだ。灰色の壁、石畳、遠くには尖った時計塔。
【本当に現実に戻ったわけじゃない。ミラナの鏡返の力が作り出した虚影だ。】
手を上げ、下ろす。数歩前へ進む。スマホの画面のセレスも手を上げ、下ろし、前へ進む。
【俺の一挙一動が、あの世界のセレスに影響を与える。】
スマホに通知がポップアップする:「任務を果たせ——遅刻するな(ギルドへ行き小遣いを稼げ)。」
すぐに理解した。自分の世界で自分の任務を果たし、同時にセレスにも彼女の任務を果たさせなければならない。
【ミラナの世界は期待を裏切らないな。数値も残っている。】
なら簡単だ。現実で夜更かしして体力が落ちている俺より、今の体力なら満員電車も朝飯前だ。
遅刻まであと二十分。間に合う。今すぐ地下鉄の駅へ行けば。
駅に向かって走る。この体は現実世界と同じで、走ると靴底がコンクリートを踏む反発が感じられる。小さなぬいぐるみに慣れてしまった後では、少し違和感がある。
信号待ちの時、肩に何かがぶつかった。
「すみません、ぶつかりました。」
【誰? 周りに人はいないはず。】
下を向いてスマホを見る。セレスも動いている。俺が止まった時、彼女はちょうど誰かの後ろに立っていた。その人が振り返って行こうとして、うっかり彼女にぶつかった。
セレスの世界のあらゆる感覚を感じ取れる。多くの人が王や騎士、怪物、刃、魔法について話しているのが聞こえる。そして現実世界では、俺の周りには沈黙しかない。
待て——HPゲージが突然大きく減った。ただ軽くぶつかられただけなのに。
「挙措が他人に疑念を抱かせる。二つの世界の間で迷うことが、お前の最良の帰属だ。」
ミラナだ。彼女しかこんな高慢な口調は使わない。
【挙措が疑わしい? つまり、両方の世界で正常な振る舞いをしなければならないということか? だが単核处理器のような俺の頭でどうやって。】
でも、セレスが他人の後ろに立つのは確かに変だ。しかも相手が謝ったのに、「大丈夫」とも言わないのは、さらに礼儀に欠ける。
【どうやら、行動する前にちゃんと考えないといけないようだ。】




