第7章 飴と敷居
この世界の空はとても暗い。そのせいで、かえって月と星がひときわ明るく見える。
【現実の俺は、いつからこんなに落ち着いて星を眺めなくなったんだろう? 都会の灯りはいつもついていて、星なんてとっくに埋もれている。顔を上げても、何も見えない。】
ゲームに転生して、ある意味での「過去」に戻り、しかも睡眠を必要としないぬいぐるみになった——この静かな夜をゆっくり楽しめるのは、思わぬ収穫だ。
しかし空を長く見つめているうちに、かえって違和感に気づいた。
【あの星、動いてないな? 時間が短いからか、それとも……そもそも動かないのか?】
【月は最初からあんなに丸いのか? それともこの世界がもともとそういうもので、俺の常識で理解しちゃいけないのか。】
【暗いうちに情報を探りに行くか? 挑戦の内容を前もって知れば、ココアをもっと助けられるし、女王にも早く会える。】
【でも普通の人はそんなこと知らないよな? 唯一知っていそうなのはあの高官だけど、家がどこかわからない……ああ、昨日ついていけばよかった。】
【ん? そんなに長く考えてたか? なんで外が明るくなってるんだ?】
本当に瞬き一つの間に。この世界の時間の流れがこういうものなら、あまりに理不尽だ。でも輪廻世界に理不尽を求めても仕方ない。
「リリィ、おはよう。」
「おはようココア。早く準備してくれ。」
「うんうん。」
ココアはベッドから飛び起き、動きやすい服に着替えた。
【挑戦にスカートは不便ってわかってるのか、賢い子だ。】
「行こう、リリィ。ママが起きる前に出ないと。」
「ああ、ついていく。」
ココアは慎重に階段を降り、裏口からこっそり抜け出した。俺は窓から飛んでついていく。どうせ短い足だし、彼女の肩に乗れるなら自分で飛びたくない。
すぐに城の前に着いた。もうたくさんの子供たちが待っている。
【どういうことだ? あの高官が全ての子供を知っているとしても、こんなに多いはずない。昨日の噴水のそばにはこんなにいなかった。】
「本当に面白いと思う?」
「もちろん! 女王様が用意する挑戦がつまらないわけないでしょ。」
「でも昨日、噴水のそばで申し込まなかったんだけど、入れるかな?」
「入れるに決まってる! 女王様は私たちを拒んだりしないよ。」
【耳が良くなかったら、何を言ってるか聞き取れなかったな。この王都の子供たち、好奇心と遊び心が半端じゃない。】
「リリィ、やっぱり戻ろう。」
ココアが突然、入りたくないと言い出した。門もまだ開いていないのに。
「どうして? 悪い予感でもするのか?」
ココアの直感はよく当たる。でも俺は入らなければならない——それに彼女が重要人物だと確信している。彼女が入らなければ、この先何も繋がらない気がする。
「わからない。でもなんとなく入りたくない。」
一瞬固まった。
【……これはまずい。彼女が鍵だ。入らなければ先に進めない。でも子供を無理強いもできない。】
「予感って、よく当たるのか?」
「うん。前にパパが事故に遭うって予感した時、本当に……」
彼女は言い終わらなかった。
しばらく黙った。
「なら戻っていいよ。」 言った。「俺一人で入る。」
「……リリィはなんでそんなに綺麗な水が欲しいの?」
「友達がそれを必要としてるんだ。それに俺は女王に会わなきゃいけない。大事な用事がある。」
「友達、気分が悪いの?」
「そうでもないけど……なんでそんなこと聞くんだ?」
「ママがその酒を作るのはいつも無料なんだ。だってそれを飲んだお客さんは、感情が崩れたり、不運が続いたり、悪いことが重なったりするから。味はすごくいいし、本当に効いてるのか気のせいなのかわからないけど、飲んだ人はみんなだんだん良くなっていくんだ。」
「お母さんが言ったのか?」
「自分で見てわかったこと。」
「よく気づくな。」 一瞬間を置く。「友達は誕生日を祝うためにそれを使いたいんだ。」
「誕生日を祝う……それなら確かに綺麗な水が必要だね……」
ココアの関心はやはり違う。女王に会う理由は聞かなかった——たぶん子供にとって、女王はいつも自分たちの味方をしてくれる大スターで、会いたいと思うのは当然なのだろう。
ココアがまだ考えているうちに、城門がゆっくりと下りてきた。
子供たちが一斉に中へ駆け込む。門の中は真っ暗なのに、誰も怖がらない。
しかしすぐに、走っていた子供たちの何人かが引き返してきた。中の挑戦がつまらなくて戻ったのかと思ったが、その表情は困惑の色が濃い——自分から出てきたようには見えない。
噴水のそばで申し込んだ顔なじみの子供たちは、入ったきり出てこない。
やはり、一部の子供は申し込んだ子供についてきただけだった。城は明らかに彼らのために開いているわけではなく、最も友好的な方法で追い出している。
【ココアの言う通りだ。この城にこんな能力があるなら、確かに怪物みたいなものだ。】
「ココア、先に戻ってくれ。俺一人で入る。」
自分も申し込んでいないから、門に拒否される可能性が高いのはわかっている。でも俺はぬいぐるみで、人間じゃない。もしかしたら隙を突いて入れるかもしれない。
翼耳を羽ばたかせて飛び込もうとした時、ココアが空中で俺を抱きしめた。
「手伝うって言ったら、最後まで手伝う。私が抱えて入るよ、リリィ。死んだふりして。城に名前のない侵入者だと思われて追い出されないように。」
「……わかった。ありがとう、ココア。」
彼女は強く抱きしめ、胸が俺の背中に密着する。すぐに死んだふりをして、微動だにしない。
真っ暗な闇の後、俺たちはがらんとした大殿堂に立っていた。
大殿堂の奥には左右二つの扉があり、一つは白い光を、もう一つは金色の光を放っている。
大殿堂の中では犬の群れが走り回っていた——普通の大きさで、体に毛糸が巻きつき、その中に陶器の破片が包まれ、舌を出してあちこち駆けている。入り口の左手には木の棒が並んでいた。
すでに何人かの子供たちが棒を持ち、その毛糸の犬を追いかけて叩いている。毛糸の犬は攻撃してこず、ただ速く逃げるだけだ。叩かれて止まった犬もいて、子供たちは地面にしゃがんで夢中で何かを拾っている。よく見ると、毛糸の犬の中には飴玉がぎっしり詰まっていた。
【これってパーティーで目隠しして叩く飴のおもちゃじゃないか。大殿堂全体がその遊び場になってる。】
「ココア、遊んでみないか?」
このゲームは確かに面白い。ココアも気に入るだろう。
「遊ばない。綺麗な水を探すのを手伝うんだから。あの二つの扉を見に行こう。」
「でも、みんな遊んでるじゃないか——」
そこで気づいた。棒を持った子供たちの目には、毛糸の犬と飴しか映っていない。ココアがある毛糸の犬の頭をまたいでも、それを追う子供は止まらず、まっすぐぶつかってきても避けない。
飴を手にした子供たちは、口に詰め込みながらまだ拾い続けている。
突然わかった。
これが最初の挑戦だ。そして遊ぶことだけに夢中になっている子供たちは、この関門で女王に会う資格をすでに失っている。




