第5章 挑戦
手のひらの中の虫の形をした道具を握りしめ、しばらく立ってから、バッグにしまった。
【あの女がどんな気持ちで俺にここまで執着しているのか、まだよくわからないけど……もしかして彼女もセレスを知っていて、俺をセレスだと思っているとか? いや、そんなはずない。彼女は俺がリリィだってちゃんと知っている。】
城はもうすぐそこだ。城門をくぐって奥へ進む。内城の街並みは外よりずっと整っていて、平らな石畳が敷かれ、両側の家屋もきちんと手入れされている。ただ、奥へ進むほど人が少なくなり、誰も住んでいないのではないかと思うほど静かだった。
飛んで状況を確かめようかと考えていると、目の前に溝が横たわっていた。黄緑色の水面が日光の下で粘っこい光沢を放っている。泡は立っていないが、色は沼地とまったく同じだ。
内城に掘られた堀。城と住民を隔てるためのもので、敵を外に阻むためのものではない。しばらく水面を見つめた——飛び込めば間違いなく死ぬ。
さらに数歩進むと、正門はやはり予想通り内側から下ろされていて、外からは入れない。防御系の魔法もないし、ましてや沼地の毒を遮断するものなんてない。
どうやって中に入ろうかと困っていると、遠くから足音と子供たちの笑い声が聞こえてきた。急いで道端に隠れ、低い木の陰にしゃがむ。
「早く行こう! 兄ちゃんが女王が重大な発表をするって言ってた。遅れたら聞けなくなる!」
「もう走ってるよ!」
「どんな知らせだと思う? また新しいゲームとか?」
「俺はまた俺たちに関する新しい法案だといいな!」
「そうそう、女王は遊ぶのが好きで、俺たちも好きだし。」
数人の子供が俺の前を走り抜け、走りながらぺちゃくちゃと話し合っている。
【……女王が発表? 臣民に遊ばせるだけってのも賢明な判断とは言えないけど、まあ聞きに行くしかない。】
いつもの手を使い、子供たちについて人の集まる場所へ入り込む。噴水の周りにはすでに大勢の人が集まっていて、大人は外側、子供たちは隙間から前列へと潜り込んでいく。一人の役人が噴水の縁に立ち、腹を突き出して咳払いをした。
「皆さんにあまり良くない知らせを持ってきました。まず心の準備をお願いします。」
【……心の準備が必要な知らせってことは、確かに深刻なのかもしれない。】
「女王は、皆がずっと遊んでばかりではまとまりに欠けるとお考えになりました。」 彼は台下を見回した。「そこで女王は決めました——皆で一緒に城に来て挑戦を成し遂げるのです。勝者には女王にお会いする機会と、豊かな褒美が与えられます!」
言い終わらないうちに、人々の間でどっと沸いた。
「女王はまたゲームを始めるのか……」
「前回の挑戦は本当に疲れたし難しかった……足がまだ痛い。もう行かない。」
【これが悪い知らせ? 何か大変なことかと思った。】
「行ける人は今すぐ私のところに来て申し込んでください。」 役人が登記簿を叩く。「行きたくない人も観客席で観戦しなければなりません。」
「何? 観客席もあるのか?」
「ええ。あの者たちが参加者以外を攻撃しないよう、我々が保証します。」
「参加したい! 参加する!」 前列の子供たちが真っ先に駆け寄った。
「女王に会えるなんて、誰が行きたくないって言うんだ!」
役人は止めず、ただうつむいて名前を書き留めていく。大人たちは難しそうな顔をしているが、子供たちは次々と前に押し寄せる。
【大人が疲れるし難しいと言う挑戦に、子供が参加するのを止めない? それとも子供だからこそ、こういうものに余計に燃えるのか?】
「私も参加する、行かせて。」
声に聞き覚えがある。振り返ると、なんとココアだった。急いで彼女の肩に飛び乗り、声を潜めて耳元に近づく。
「お母さんは行かせてくれないんじゃなかったのか? どうやってこっそり抜け出したんだ?」
「あんたみたいな小さなぬいぐるみじゃ入れないでしょ? 絶対に助けがいるはずだよね?」
「それはそうだけど……危ないって聞いてるだろ。」
「じゃあなんであの子たちは参加するの?」 彼女は逆に聞き返した。「私も行ってみる。」
【……彼女の方がよっぽど意志が固い。なら一緒に行こう。少なくとも見守れる。】
「見たことないな、お嬢ちゃん。前に来て名前を書いてくれ、字は読めるか?」
「読めるよ、自分で書ける。」
ココアは筆を受け取り、身をかがめて紙に名前を書いた。俺は彼女の肩に伏せて死んだふりをし、できるだけ普通の這うおもちゃに見えるようにした。しかし紙に書かれた文字は読めなかった。「ココア」の二文字ではなく、別の名前のように見えた。
役人は登記簿をしまい、手を叩いた。「申し込みはこれまで。皆さんお帰りください。明朝、城の入り口に集合です。」
人々が散り始め、子供たちはまだ興奮してぺちゃくちゃ話している。俺は彼女の肩に伏せたまま動かず、明日のことを考えていた。
少なくとも堂々と入れられる。壁をこっそり乗り越える方法を考える必要もないし、あの膠質で叩き落とされることもない。でもココアが書いたあの名前——なんだか気になったままだ。




