第4章 墜ちたリィちゃん
王都の上空まで飛ぶと、街は明かりで溢れ、煙が立ち上っていて、確かに賑やかだった。ただ、ココアが言っていた音楽の音だけは聞こえなかった。静かすぎる。不気味なほど静かだった。
もう少し低く飛ぼうかと考えていると、何かべとべとしたものが飛んできた。慌てて避けると、さらに多くのべとべとしたものが四方八方から投げ込まれてきた。雨のようにびっしりと。
それでもやっぱり一团の膠質に空中から叩き落とされた。落下しながらようやく見えた——城壁の上には一列の投擲兵が並んでいて、息を合わせたように器械をしまっている。何度も練習してきたかのように。
「未確認飛行物体、排除完了!」
その声はわざと聞かせているようで、続いて周りの連中が一斉に復唱した。
「よし、城に近づける者はいない!」
女の声だった。顔は見えなかったが、背中から地面に叩きつけられ、あの膠質が手足にまとわりついて、ぴったりと固まってしまった。どんなに引きはがそうとしてもびくともしない。
「……ふふふ、本当に偶然ね、リィちゃん。」
振り返らなくても誰だかわかった。
【……またお前か。どうしていつもこんなに偶然なんだよ。】
「ここの防衛線、あんたでも突破できなかったのか?」
「こんな防衛があることを知らなかっただけだ。」 まだもがき続けている。「どうして俺がここに来るってわかったんだ?」
「知らなかったよ。」 彼女はしゃがみ込んで、首をかしげながら俺を見た。「たまたまここで待っていただけだ。」
「……もがいてるんだ。横で見てるだけか?」
「自分で出られる?」 彼女は笑った。「手伝ってほしい?」
「もうお前のために何かをするつもりはない。」 彼女を睨む。「馴れ合うな。」
「それはひどい言い方だな。」 彼女は首を傾げた。「あの女がちょっと笑っただけで、あんたはあんなに信じてるのに。私はこんなにたくさんしてきたのに、『もう手伝わない』の一言で突き放そうってのか。」
「朔の悪口を言うな。」
「おや、武器も変わったじゃないか。」 彼女は腰の刺剣を一瞥した。「ヴィロシに会ったのか?」
「そうだ。」 まだ手首を動かしている。「彼女からたくさんの話を聞いた。なぜお前はいつも朔の悪口を言うんだ?」
「実に嫉妬深いな。」 彼女はそっとため息をついた。「お前は私に何度会った? ヴィロシみたいな頭のおかしいやつが、一度会っただけで言ったことを全部信じるのか——それが私が言ったことだと思ってるのか?」
「お前もそんなに正常じゃないだろ?」
「それが私の一貫したスタイルだ。」 彼女は間を置いた。「でも私は正気だ。さもなければ何度も何度もお前の前に現れたりしない。」
もう一度引っ張ってみたが、膠質は微動だにしなかった。
「じゃあお前は用事を続けてろ。助けは必要ない。」
「本当か?」 彼女は後ろに顎をしゃくった。「ちょっと後ろを見てみな?」
振り返ると、城壁の足元には死体が積まれていた——さまざまな鳥たちだ。羽がまばらなもの、完全なもの、腐ったもの、すべて同じ膠質に包まれていて、骨だけになったものもある。
「これは一体何だ?」 また振り返る。「なんでこんなに固いんだ?」
「この世界の主が作り出したものじゃないか?」 彼女の口調には本物の羨望が混じっていた。「すごいな。あんなに強くなれたらな。」
スタミナゲージがまだ減り続けている。これ以上引き延ばせない。スタミナが空になれば、死にもせず動けず、永遠にここに留まるしかなくなる。
深く息を吸って、最後に彼女を見た。
「……お前の勝ちだ。」
「ふふふ……そう言うと思ってた。」
彼女は手を伸ばして、その膠質に触れた。あの塊は支えを失ったように体から剥がれ落ち、乾いた欠片になって散った。
手足を引き抜いて体を起こした。
「ますます可愛くなったな、リィちゃん。」 彼女は手を叩いた。「久しぶりだな、会いたかったよ。」
「気持ち悪い。」 半歩後退する。「お前とは親しくない。」
「わかってる。」 彼女はうつむいて笑った。「もっと頑張らないとな。全部の輝きを見せて、お前に関心を持ってもらわないと。」
「もういい。」 遮る。「また何か届け物か? 言っただろ、何に使うのか教えない限り、もう手伝わないと。」
「そうだな、リィちゃんももう私の意図を読めるようになったんだな——ますます以心伝心になってきた。」
「それは疑問形じゃない。」
「ただ彼女たちをもっと彼女たちらしくしているだけだ。」 彼女は指先に虫の形をした道具を挟んだ。「ニクスみたいに、彼女は私のものが好きで、正気に戻ったんだろ?」
「じゃあヴィロシは?」
「彼女も正気だよ。ただ方向性がちょっと違っただけかもしれないけどな。」
「嘘は言ってないな?」
「いつお前に嘘をついたことがある、リィちゃん?」 彼女の口調が珍しく少し柔らかくなった。「私はお前のことが大好きだ。無害だと言ったら無害なんだ。」
【……確かに虫の形の道具を持っている英雄たちを傷つけたことは一度もない。でも朔への敵意は明らかだ。】
しばらく黙った。
「……わかった。」
「ふふふ……本当か?」
「でも騙したら——」 間を置く。「お前を嫌いになる。」
「それは困るな!」 今度は本気で慌てたようだ。「約束する、言ったことは全部本当だ。」
彼女は道具を俺の手に渡した。
「ありがとう、リィちゃん。」 彼女は半歩後退した。「また会えることを願っている。お前が通る場所で待っているから。」
そして彼女は笑いながら空間の裂け目を開き、消えた。
その場に立ち尽くし、手の中の虫の形をした道具を見下ろす。
【……俺がここに落ちることまで知っていた。最初から待っていたんだ。】
道具を仕舞った。今回はもう一度彼女を信じることにした。少なくとも今のところ、彼女が悪者だという証拠は何もない——それにさっき朔の話をした時の彼女の表情は、敵意というより、むしろ……やきもちのようにも見えた。




