第2章 藍火蛍酒場(アイカホタルサカバ)
スタミナゲージがちょうど底をついたので、急いで枝を掴んで体を支え、翼をたたんだ。
【周りは全部あの膠の塊ばかり……何をすればいいんだ? シエルが欲しがってたあの水の手がかりは全然ない。とりあえず建物がありそうな方へ向かってみるしかない。】
また一本、外に突き出た枯れ枝を見つけて飛び移る。こうやって飛んでは止まりを繰り返せば、スタミナを節約できるし、周囲を観察する余裕もできる——朔が「触れたら終わり」と言っていただけに、今はスタミナが何より大事だ。
ところが、着地した先に一羽の鳥が止まっていた。羽はまばらで、体は痩せ細り、足は枯れ木に爪を食い込ませるようにして、最後の力を振り絞ってそこに貼りついているようだった。
「飛べ! 飛べ!」
鳥が喋ること自体は珍しくないけど、この鳥の声は震えていて、まるで助けを求めているようだった。よく見ると、足元の枯れ木がゆっくりと沈み始めていて、沼地の表面が少しずつ緩み始めていた。まるで獲物が罠にかかるのを待っていたかのように。
「人の話がわかるのか? お前も飛べ!」
「泡、まばら、死神が来た! 死神が来た!」
何を言っているのかさっぱりわからなかったが、足元の枝はもう傾き始めていた。鳥は沈みかけていて、羽がまばらすぎて飛べない——俺は翼耳を羽ばたかせて突っ込み、鳥を掬い上げて振り返らずに上へ飛んだ。
「飛べ! 飛べ!」
鳥は暴れることなく、かえって必死にそのほとんどハゲた翼をバタバタさせて、俺に合わせるように動いた。
高く飛び上がってから振り返ると——あの動き出した沼地は追ってきていなかった。枯れ木を飲み込んだ後は静まり返り、何もなかったかのようだった。あれは自分の範囲内でしか動けない。生きて離れられればそれでいい。
【……巨大なスライムかと思ったけど、ただ膠質化してるだけみたいだな。】
考えていると、遠くから銃声が響いた。びっくりして手を緩めると——鳥がそのまま落ちていった。急いで追いかけようとしたが、すでに地面に落ちていた——枯れ草に覆われた硬い地面だ。俺はもう安全な場所まで飛んでいた。
二人の狩人が遠くから銃を担いで歩いてきて、腰をかがめて草をかき分けた。撃った方が先にしゃがみ込み、銃身で鳥の死骸をつついて、眉をひそめながら二度ほど転がした。
「こいつ、沼地に落ちて死にきれなかったんじゃないか? 羽はほとんど抜けてるし、皮は黄緑色で痩せ細ってる。」
もう一人が近づいて見た。「そうだな。弾がもったいない。こんなの、野獣にやっても食わねえよ。売り物にもならん。」
「それならもっとよく見てから撃てよ。こんなの仕留めたって、何の足しにもならん。」
「はいはい、今日も空振りか。」 撃った方が立ち上がり、銃を肩に担いだ。「酒場で一杯やってから帰ろう。」
「いいぜ、お前の奢りだな。」
「俺が? 今日一羽も獲れてねえのに、金なんてあるわけないだろ。」 撃った方が両手を広げた。「もう一回貸してくれよ、次は必ず返す。」
「“次は”って、何度目だよ……」
二人は硬い地面に沿って歩きながら戻っていった。少し離れてから、撃った方が振り返って地面の鳥を一瞥し、ぼそりと呟いた。
「おかしいな……さっき羽をバタバタさせてるのが見えたのに、死んでるってどういうことだ?」
俺は枯れ木に伏せて、その言葉をはっきりと聞いていた。
【……あいつが見てたのは俺か。俺の耳を鳥の羽と間違えたんだな。】
もう飛び続けるのはやめた。布偶が空中に浮かんでいるのは目立ちすぎる。奴らが遠くに行くまで動かない。
翼を羽ばたかせて後をつける。高度を低く保ち、枯れ木の影に沿って滑るように飛ぶ。
沼地の端がどんどん遠くなり、足元の地面は次第に固い土に変わっていった。枯れ木は減り、背の低い灌木や雑草が増えてくる。
彼らが曲がり角を曲がると、俺は道端の歪な枯れ木に止まった。
遠くに一軒の木造家屋が見えた——硬い地面と沼地の境目に建っていて、屋根には傾いた煙突が立っていて、細い煙が立ち上っている。
軒先には手書きの木札が下がっていて、文字は歪んでいるがしっかり読める。
藍火蛍酒場
【……この名前、わざとメインクエストがわかるように付けたんだろ。火紅色の蛍も中で暗示してたしな。】
高度を下げて、地面すれすれに滑るようにして、一人の狩人の腰袋に向かって飛んだ。袋は膨らんでいて、端にわずかな隙間が開いている。
潜り込むと、中には一匹の布偶が入っていて、頭にリボンが結ばれ、その下に一枚の紙が挟まれていた。「親愛なる妹へ——誕生日プレゼント」
【……妹のぬいぐるみ、ちょっと借りるぞ。後で返すから。】
素早く布偶のスカートとリボンを剥ぎ取って身につけ、自分の服はバッグにしまった。その布偶自体も一応取っておく——見つけた以上、重要じゃないとは言い切れない。
腰袋の外から、木戸を押し開ける音が聞こえた。
「おかみさん、いつものやつ、二杯な。」
腰袋の端を少しめくって、隙間から外を覗く——酒場はそんなに広くない。木製のテーブルが数脚、暖炉がしっかりと燃えている。
カウンターの上には古いランプが掛かっていて、灯りは青いガラス越しに燃えていて、まるで静かな青い炎のように見えた。
【……なるほど。藍火蛍って名前の由来はこれか。】
道は間違っていなかった。でもずっと腰袋の中に隠れているわけにもいかない——この男に、俺を外に出してもらう方法を考えなきゃ。




