22話「双子」
正直、キツく感じていた。朝陽と海音のことは。
悪いことをした。掟に逆らった。二人を、めちゃくちゃにした。
いくら朝陽に自分の姿が見られたとはいえ、話しかけるべきじゃなかった。余命のことも、契約のことも。
海音が望んでいたことは、二人で一緒に生きること。
普通に生活して、遊んで、学校に行って、他愛のないことを話して。いつでもお互いが隣にいてくれる最高の兄弟。
相手がいない未来なんて、考えられなかった。
死神の特性上、人の心が読める。だからわかっていたはず。けど、二人の気持ちを知っておきながらいらないことをした。
自分でも言い聞かせた。自分が悪い、何もしなければよかった、関わることなかった。自分への罪として何度も何度も。
元人間だから人の心は持っていると思っていた。けど、死神になってから少しずつ消えていっていたことを今自覚した。
本当に人の心を持っていたとするならば、関わらないことが一番だった。
つまり、自分にとってはただの暇つぶし。
暇つぶしで、人間の生死を変えた。そんなこと絶対にあってはならないことだ。
少しだけ持っていた自分の中の善良な心が、変な方向に暴走した末路。
自分にはもう、人としての心は残っていなかった。
生きたいと望んでいる者と、相手の為なら自分の命はどうなってもいいと思っている者。その利害の一致のみでしか考えていなかった。
傷心中でなおかつ罰を受けた海音にはきっと誰の言葉も届かない。
海音のこれからを支える人がいないと、朝陽が代わりに死んだ意味がなくなる。
だから、優に託した。
寿命をもらうのではなく、”能力”を代償としたのにはちゃんと意味がある。
この先の未来、海音と優は出会い惹かれあう。”同じ力”を持つ者同士として。
その時までアラタはもう一人の被害者と見守り、償い続けるしかない。
「全部俺が悪い。海音が罪悪感を抱く必要はない」
光を宿さない瞳にそう告げる。
アラタの声は海音には届かない。前までの死期が近い状態だったらギリギリ見えていたかもしれないが、すでに何十年生きることが決まっている、そして本人がそのことを自覚しているから他の人より見えにくくなっているといっても過言じゃない。
あと少しで夏休みが終わる。
海音はちゃんと学校に行けるだろうか。




