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死神さん  作者: もか
第2章「死神と生贄のはなし」
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17話「被害者」

「アラタ、ちょっといいか?」

「何?」

冥界。死神や成仏できない幽霊たちがいる場所だ。

「…………どうするんだ、今年は」

「もちろん見逃すよ。ずっとそうしてきたんだから」

「お前はいくらなんでもここにいすぎだ。そろそろ交代したって……」

「いいじゃん別に。掟に反しているわけじゃないし」

そう返すも、ショウはあまりいい顔をしない。

「じゃ、俺は行くから」

…あの世とこの世の狭間。それが、今から向かう場所だ。

毎年ある取引をしに、行かなければならない。

人の心を縛り付ける、"あの村"との。


片瀬優。今年の生贄者の名前だ。

その子を現世に戻してあげて、取引を済ませ、今戻ってきた。

いつも取引の後に渡される資料。生贄になった子の詳細。どの子も特にパッとした経歴はない。まだ高校生だし、目を引くようなものがある方がすごいのだが。

それに、この子達は縛られて生きているので、余計に平凡すぎる内容になるのだ。

「…帰ってきてたのか」

ショウが横から資料を覗き込みながら言う。

「ああ。………」

「どうした?」

「え、何が?」

「いつもだったら、『何もなかったよ』って言ってどっか行くのに。何かあったのか、この片瀬優と」

「………」

優の写真を見ると胸が締め付けられる。

この子も被害者で、アラタもまた被害者である。

今までの子達は、ひどくアラタに怯え情緒が崩壊していく。そういう場だから仕方ないのだが、優にはあまりそれがなかった。

もちろん、急に不安が押し寄せたり、急に大丈夫だと慢心したりと、見ているだけでおかしくなっていることは容易に分かった。だとしても、優はこの儀式に核心をついた。今までなかったことだ。

しかも、アラタの心を動かし、約束まで取り付けた。前例が無さすぎる。

そんな優にさえ、村に執着心があった。

生贄にされた人物は、村を出なければいけない。これも理由がわからない。一番有力な説は、新たな村人を増やすため。生贄になった子供がよその者と夫婦になり、村に戻って子供が生まれる。その子供も、パートナーも村に執着心が湧く。半分洗脳みたいなものだ。

一応、村を出るまで見守るのも役目。優が村との別れを惜しみ、友人達と楽しそうに、寂しそうに話す姿は胸が痛んだ。

村に執着心を持つには、理由はどうだっていい。村そのもの、家族、恋人、友人。

村を離れたくないという理由があれば、その思いが強くなる。それが、執着心へと変わる。自然と身につくから、余計怖さを感じる。

その村に、執着しなかった。

それが、"志木新"の物語だ。


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