第7話 帝国上層会議
「うむ!そろったか!」
最後の参加者オール・ノウンが揃い、皇帝が声を上げる。
「少し遅いのではないですか?」
「うるせーよ。屍術師。」
「私は屍術師ではなく宰相です。間違えないでもらいたいですね。」
「…ふん。」
宰相、マッド・ミニスタに対してオール・ノウンはトゲトゲしく答えた。
「まあまあ!落ち着くがいい2人とも!皇帝陛下の御前であるぞ!」
将軍、ウォー・ビーストが叫ぶ。
そう。ここは王城の会議室…ではなく、さらに地下にある秘匿された会議室なのである。
ここにいるのはたったの5人。
皇帝、ウェザー・ストーム 能力「天候操作」
そして皇帝が最も信頼する4人…「四天王」である
宰相、マッド・ミニスタ 能力「統率」
将軍、ウォー・ビースト 能力「獣神化」
隠密部隊長、オール・ノウン 能力「神眼」
宮廷魔術師、カタルシス・ブルーム 能力「活性」
帝国の権力者たちでありながら最高戦力でもある5人のみが参加を許される帝国上層会議。謎に秘められたその会議を他の者たちは密かにこう呼んでいる。
―「悪魔との密会」と。
「さて、今回みなを呼びつけたのはほかでもない。ノウンが不穏な未来を「見た」そうだ。」
場がざわつき始める。彼、オール・ノウンの神眼は未来すらも見通すと呼ばれる。彼の予言が外れたことは今まで一度たりともないのである。
「みなに説明してやってくれ。」
「ではおそれながら。僕が見たのはおよそ3ヶ月後の未来でした。謎の組織の者たちが蜂起し、帝国へ戦争を仕掛けていました。我々は抵抗していましたが彼らは強力な能力を使っており劣勢でした。腕と足を切り落とされたにも関わらず一瞬で再生した能力者も。」
会議室の雰囲気が暗くなる。
「そんな化物たちと3ヶ月後に戦わなくてはいけないのか…」
「だはは!化物という意味では我々も大概だがな!」
「ビースト。あなたの楽観に心が軽くなることがあるとは思ってもいませんでしたよ。」
ブルームが少し微笑みながら言う。
皇帝が重々しく口を開いた。
「うむ。みな不安になる気持ちはわかる。だが、逆に考えよ。普通なら奇襲を受けていたところを堂々と迎え撃てると考えるのだ。幸いにもまだ襲撃には3ヶ月の猶予がある。今から秘密裏に準備を整えよ。」
「「「「ははっ!」」」」
4人の声がそろう。
「ただし、民たちを不安にするわけにはいかん。あくまで我々が対処し、民たちは事前に避難させよ。冒険者ギルドには…一応支援要請を出しておくとするか。危険な任務に彼らが進んで出てくるとは思わんが。彼らにも強力な者たちがいる。いれば心強かろう。」
皇帝は優しい性格だったが、国を守るためならば非道にもなる。なぜならそれが自分の使命だと、国民が自分に期待していることだと分かっているからである。
「全てはあなたの御心のままに。」
それを誰よりも知る宰相はそう応えた。
「うむ。分かったならばよい!みなそれぞれ準備を整えよ!だが敵に悟られては無意味と化す。よってこのことに関しては他言無用とする。軍の者たちや自分の信頼する者にのみ話すように。」
「了解いたしました。」
「任されよ!」
「御意。」
「ふふ、腕が鳴りますね。」
それぞれがしっかり反応を返したのを見て、皇帝は満足そうにうなずき宣言した。
「ではこれにて会議を終了する!」
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「はあ、やれやれ。あの宰相といるのはどうも気が滅入る。」
会議室から出て、自分用に作られた離宮へと向かう最中にノウンはつぶやいた。
(あいつがやっていることは人のしていい所業ではない。あれを人は狂気と呼ぶのだ。)
なにせ奴は「死体を操り」兵士とするのだから。
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「おい、「陽炎」。いるか?」
離宮に着くと彼は椅子に座りボソリとつぶやいた。
すると、
「任務中ではないのです。シャドウと呼んでいただきたいものですわね。」
「ああ、悪い。」
「悪いとは思っていなさそうですわね…。はぁ。で?どんなご要件ですの?」
「影の中」からスルリと這い出てきた女、ミラージュ・シャドウは当たり前のように問うた。それに当たり前のように応えるノウン。これがここでの普通である。
「3ヶ月に戦争が起こる。」
「また突然に…。一応聞きますがなぜ?」
「分からない。だが、おそらく帝国内に不穏分子が混じっている、と僕は見ている。」
「なるほど。つまり私にそれを探れ。と。」
「話が早くて助かるよ。君以上に諜報に向いた能力者もそうそういないだろうからね。」
「まあ、構いませんけど…。「猟犬」はどこに?彼も私とは別方向で情報収集に向いていますけど。」
ここまで機密情報をポンポン喋っていて良いのか?と問われればNOなのだが、防音結界が張られているので問題はないだろうとノウンは思っている。彼の皇帝への信頼は厚いのだ。
「「猟犬」なら帝国の辺境で小説を書いてる真っ最中だよ。良いミステリーが書けそうだという手紙が届いた。」
「またですか…。彼の能力なので仕方ないとは思いますが、もう少し強く言ったほうが良いのでは?今回は「緊急事態」だ。と。」
「問題ないだろう。最悪の場合は君に迎えに行ってもらうけどね。居場所は把握しているから。」
「隊長は相変わらず彼に甘いですよね。私への態度とは大違いです。」
「仕方がないだろう?彼の能力は有望だ。時と場合によっては最強候補だよ。」
なんせ彼の能力空間では限定的だが「能力を封じる」ことが可能なのだ。弱いはずがない。
「じゃあ、頼んだよ。」
「お任せを。」
またスルリと影に潜っていった彼女を見ていたが、飽きたように天井に目を向ける。
ふと思い浮かべたのは今日すれ違ったあの少年。
神眼を持つ自分ですら見えなかった彼の二つ名。
二つ名が見えなくても全くもって支障はない。だからこそ気になった。
「情報を集めてみるか…」
サダメはまだ知らない。関わりたくない帝国の権力者。その中でも一番厄介な男に既に目をつけられていることを…
ミラージュ・シャドウ
影を操る能力者です。コードネーム「陽炎」。
「猟犬」の方はまだ登場しませんが、ヒントを言うならば小説家です。そして能力も…。




