↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特異個体 ~転生先は別サーバー~ 死んだらNPCだった私たちは、異世界でプレーヤーを狩ることになりました  作者: NOTAI
第二章 ――近未来視の魔女――

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/28

第7話 初めての魔物

 茂みが揺れている。

 りそなの右手は、すでに剣の柄を握っていた。


「……何がいるの?」



 --ガサッ。


 茂みから何かが飛び出した。

 反射的に一歩下がる。


 現れたのは、小型犬ほどの生き物だった。

 灰色の毛。

 長い耳。

 見た目はウサギに近い。

 ただし、額の中央から鋭い角が一本伸びている。


「……ウサギ?」


「ホーンラビット。ウサギ系の魔物やね」


 ホーンラビットが、りそなを見た。

 低く頭を下げる。

 角の先端が、こちらを向いた。


「……あれ、完全に私を狙ってない?」


 ホーンラビットが地面を蹴った。

 速い。

 だが--見える。


「っ!」


 りそなは身体を横へずらした。

 ホーンラビットが脇を駆け抜ける。

 数メートル先で止まり、振り返った。


「……避けられた」


「そらそうや。素早さも加護で上がっとるしな」


 剣を抜き、両手で柄を握る。

 自然に足が前後へ開いた。

 竹刀とは違う。

 重さも違う。

 重心も違う。


 それでも--


 構える。

 相手を見る。

 間合いを測る。

 そこは同じだ。


「剣道経験、ちゃんと役に立っとるやろ?」


「少しはね」


 ホーンラビットが、もう一度頭を下げた。

 来る。

 剣先を向ける。

 ホーンラビットが地面を蹴る。

 一直線。

 分かりやすい。


「……っ!」


 横へかわす。

 同時に剣を振り下ろした。

 外した。


「うそ!」


 ホーンラビットが方向を変える。

 また来る。

 りそなは息を整えた。

 焦るな。

 相手を見る。

 動き出す瞬間を見る。

 間合いを見る。


 そして--


「来い」


 ホーンラビットが地面を蹴った。

 今度はぎりぎりまで動かない。


 近づく。


 三メートル。

 二メートル。

 一メートル。


「今!」


 身体をかわす。

 すれ違いざまに、剣を振った。

 手に、重い感触が伝わった。


「--っ!」


 ホーンラビットが地面を転がった。

 草の上を滑り--止まった。

 動かない。


 赤いものが、草の間へ広がっていく。

 りそなは剣を見る。

 血。

 手に残っている。

 刃が肉へ食い込んだ感触が。


 剣についた血を草で拭い、鞘へ戻す。


「魔物って、こんなのがたくさんいるの?」


「種類はかなり多いで」


「強いのも?」


「もちろん」


「この辺には?」


「ここは大森林の浅層や。比較的弱い魔物が多い」


「浅層?」


「森は大まかに浅層、中層、深層って呼ばれとる。

 木々の茂り方見れば、おおまかに分かるで」


「中層は?」


「今のあんた一人なら、行かん方がええ」


「深層は?」


「瞬殺やね」


 リュミエラが笑った。


「浅層でよく見るんは、今のホーンラビット。

 他にはゴブリン、スライム、フォレストウルフなんかやな」


「スライムいるんだ」


「おるよ」


「ゴブリンは?」


「一匹なら新人冒険者でもなんとかなることが多い。ただし群れは別や」


「フォレストウルフ」


「一匹見たら、他にもおると思った方がええ。

 あと、魔物の生息域はきっちり決まっとるわけやない。

 浅層やから絶対安全、なんてこともないで」


「全部覚えなきゃダメ?」


「今はそのくらいでええ。

 街に着いたら冒険者ギルドで詳しく教えてもらえる」


「冒険者ギルド!」


 思わず声が弾んだ。


「私も冒険者になれる?」


「なれる」


「身分証明書とか持ってないけど」


「登録できるから心配せんでええ。

 登録すれば身分証にもなるし、仕事も紹介してもらえる」


「おお……」


 異世界。

 剣。

 魔物。

 冒険者ギルド。

 ここまで揃うと、本当に物語の中へ入り込んだような気分になる。


「そういや、さっき魔法も使えるって言ってたよね?」


「言うたな」


「何が使えるの?」


「今使えるんは生活魔法や。

 火ぃつけたり、水出したり、汚れ落としたりやな」


「……地味」


「便利やって」


「攻撃魔法は?」


「今は使えへん」


「ファイアーボールとか撃ちたい」


「剣道経験あるんやから、まず剣使えばええやん」


「魔法はロマンなの!」


「知らんがな」


 リュミエラが呆れたように笑った。


「生活魔法は、この世界じゃ珍しいもんやない。

 だいたい八割くらいの人が何かしら使える」


「そんなに?」


「せやけど、攻撃魔法や特殊な魔法を使える人は二割くらいやね」


「じゃあ魔法使いはそこそこ珍しい?」


「本格的なんはな」


 りそなは自分の手を見る。


「魔力操作は高いんだよね?」


「うちの加護込みやけどな」


 ふと思い出す。


「そうだ。隠蔽と改変」


「街に着く前に、一回使っとこか」


「どうやるの?」


「難しく考えんでええ。ステータスを開いて、隠したいもんを意識してみ」


 ステータスを開いて真っ先に目に入ったのは--


【ユニークスキル】 マインドリーディングLv.3


「これね」


「それやな」


 文字へ意識を向ける。


「隠蔽」


 マインドリーディングの文字が薄くなり--消えた。


「おお」


「簡単やろ?」


「ほんとに消えた」


「実際のスキルが消えたわけやないで。他人から見えんようになっただけや」


「じゃあ改変は?」


「今度は、見せたい内容を意識してみ」


「うーん……」


 少し考える。

 すると表示が変わった。


【ユニークスキル】 なし


「できた」


「隠蔽は、自分自身も隠せるの?」


「できるで。

 隠蔽と改変が見えたら、

 何か隠しとるって自分から言うようなもんやからな」


 【スキル】から隠蔽Lv.2と改変Lv.2を消した。


「そんな感じや」


「能力値も?」


「変えられるで……さて、そろそろ行こか」


「グレヴァン?」


「そう。ここから南へ半日くらいや。しばらく南へ進めば街道に出る。

 そこから西へ行けばグレヴァンや」


「南に行って、西ね」


「そう、太陽見て進み」


「原始的……」


「グレヴァンに着いたら、まず冒険者ギルドへ行くとええ」


「了解」


「それと、もう一つ」


「何?」


「街にはリュミナ聖教の教会がある」


「あなたの宗教?」


「そうや。うちと話したくなったら、教会で祈り」


「え?」


「祭壇の前でうちに呼びかけたらええ。

 いつでも、とはいかんけど、できるだけ応えるから」


 りそなは少し安心した。


「困ったら何でも聞いていい?」


「何でも答えるとは言うてへんで。自分で考えるんも人生や」


「また女神っぽいこと言ってる」


「女神やって……

 あと、お祈りせんと話せへんからな。

 頭ん中で『助けてー!』って叫ばれても聞こえへんで」


「お金は?」


「腰の鞄」


「え?」


 鞄を開く。

 中には数枚の硬貨が入っていた。


「これがリル?」


「そう。この辺で使われとる通貨や」


「いくら入ってるの?」


「当面の食事と宿代くらい」


「もっと入れてよ」


「働き」


 りそなは鞄を閉じた。


「あなたは街まで一緒に来ないの?」


「神が現世へ直接介入するんは制限されとる。管理局でも聞いたやろ?」


「じゃあ今は?」


「転生直後の説明と、最低限の支援。その範囲や」


「チュートリアル?」


「まあ、そんな感じ」


 リュミエラの身体が、淡く光り始めた。


「……もう行くの?」


「そろそろな。

 そんな顔せんでも、また教会で話せるって」


「心読んだ?」


「顔に書いてある」


「……そう」


「ここから先は、あんた自身の人生や。好きに生きたらええ」


「プレーヤーを排除しながら?」


「それも含めてやね」


 光が強くなる。


「ほな、白石りそなさん」


 リュミエラが微笑んだ。


「二度目の人生、楽しんでき」


「……ありがとう。またね」


「うん。またな」


 リュミエラの姿が消えた。


 森に静けさが戻る。


 風。

 木々。

 鳥の声。


 そして--


 りそな一人。


「……」


 南を見る。

 グレヴァンまで半日。

 腰には剣。

 少しのお金。

 生活魔法。

 剣術Lv.2。

 隠蔽と改変。


 そして、誰にも知られてはいけないマインドリーディング。


「よし」


 りそなは剣の柄を握り直した。


「行きますか」


 目指すはグレヴァン。

 まずは冒険者ギルドだ。


 りそなは一人、大森林を歩き始めた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

当作品は、毎週 水曜日、金曜日、日曜日に更新予定です。 

★や感想などで応援いただけると執筆の励みになります!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。