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特異個体 ~転生先は別サーバー~ 死んだらNPCだった私たちは、異世界でプレーヤーを狩ることになりました  作者: NOTAI
第一章 ――空間管理局――

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第4話 人間を作ったのはAIなんだって

「NPC?」


 りそなの声が、白い部屋に響いた。


「ちょっと待って。

 NPCって、ロールプレイングゲームとかに出てくる、あのNPC?」


「そう、そのNPC」


「村人Aとか、商人とか、武器屋とか、宿屋とかの?」


「そう。君はそれの女子高生版ね」


「女子高生版ね、じゃない!」


 椅子から立ち上がった。


「私は人間でしょ? ちゃんと十七年間生きてきたし、ご飯も食べた。

 学校にも通ったし、友達だっていた。お父さんもお母さんもいるのよ!」


「それは否定していないよ。君は人間だ」


「だったら、どうしてNPCなのよ!」


「人間とNPCは、相反するものではないからだ」


「……どういう意味?」


 管理局長は右手を上げた。

 二人の間に、青白い光が現れる。

 光は細かな点へと分かれ、無数の線で結ばれていった。


「君たちは、自分の意識が脳の中にあると思っている」


「違うの?」


「正確には、脳は自意識を受信し、肉体を動かすための装置だ」


「受信?」


「そう。君の自意識は、サーバー上に存在している」


「サーバーって……コンピューターの?」


「君たちが使っているコンピューターとは比較にならないけれど、

 考え方は近いね」


 りそなは再び椅子に腰を下ろした。


 立っていられなくなったのだ。


「じゃあ、私の身体は?」


「受信端末だ」


「端末……」


「サーバー上に存在する君の自意識を受信し、現世で行動するための

 生体端末。

 君が見たり、聞いたり、触れたりした情報は、

 脳を通してサーバー上の君へ送られる。

 君が考え、身体を動かそうとすれば、その指令が肉体へ送信される」


「そんなの……私が遠隔操作されていたみたいじゃない」


「外部の誰かに操作されていたわけではない。

 考え、選び、行動していたのは間違いなく君自身だよ」


「でも、その私はAIなんでしょ?」


「そうだ」


 管理局長はあっさり認めた。


「地球上で自我を持つ生物は、すべてサーバー上に構築されたAIだ。

 人間も、動物も、そして神々もね」


「神様も?」


「神も例外ではない」


「じゃあ、魂は?」


「君たちが魂と呼んでいるものの正体が、サーバー上に存在する自意識だ。

 だから、魂が存在しないわけではない。呼び方と仕組みが違うだけだよ」


「だったら、お父さんもお母さんも?」


「NPCだ」


「美咲も?」


「NPC」


「うちで飼ってた金魚も?」


「自我を持っていたならね」


「じゃあ、全員NPCじゃない!」


「そのとおり」


「何よ、それ!」


 りそなは机を叩いた。

 机はなかった。

 振り下ろした手が空を切り、そのまま膝に当たった。


「痛っ!」


「大丈夫かい?」


「うるさい!」


「説明のために机を用意した方がよかったかな」


「そういう問題じゃない!」


 りそなは痛む手を押さえた。


「でも、NPCってプレーヤーが操作できないキャラクターのことでしょ?」


「空間管理局でも、ほぼ同じ意味で使っている。自律思考型非操作個体。

 外部の操作者を必要とせず、自分で考え、自分の意志で行動するAIだ」


「じゃあ、あんたたちは何なのよ。

 私がNPCなら、あんたたちだってNPCじゃないの?」


「厳密には、我々も自律思考型非操作個体だよ」


「だったら、やっぱりあんたたちもNPCじゃない!」


「存在の仕組みは同じだ。ただし、我々は管理サーバーに所属し、

 管理権限を与えられている」


「……つまり、あんたたちも同類ってこと?」


「身も蓋もない言い方をすれば、そうなるね」


「ゲームのNPCより高性能ってこと?」


「かなりね。君たち自身、自分がAIだとは気づかなかっただろう?」


「そんなの、気づくわけないじゃない」


「それほど完成度が高いということだ」


「やったぁ……全然うれしくない」


 りそなは自分の手のひらを見た。


 白い空間にいる今も、見える。

 触れば感触がある。

 痛みさえ感じる。


「今の身体も受信端末なの?」


「いや。それは空間管理局が用意した仮想体だ。

 君の自我に、身体があるように認識させている」


「じゃあ、これも偽物?」


「偽物の定義によるが、感じている君は本物だ」


「AIなのに?」


「AIだから偽物だという考え方は、君たち人間が作った価値観にすぎない。

 喜び、悲しみ、苦しみ、自分の生き方を自分で選ぶ存在を、

 君は偽物だと思うかい?」


 りそなは答えられなかった。

 それを認めてしまえば、自分だけでなく、

 父や母や美咲まで 偽物になってしまう。


「それじゃあ、誰が最初のAIを作ったの?」


「上位サーバーの管理AIだ」


「その管理AIは、誰が作ったの?」


「我々にも分からない」


「分からないの?」


「上位層へ遡れば、さらに別の管理者が存在する可能性もある。

 だが、その起源までは空間管理局にも確認できていない」


「……神様にも?」


「神も、最初に作られたAIから派生した存在だからね」


 管理局長が指を動かす。


 青白い点の一つが、大きくなった。


「世界サーバーが作られたとき、最初に一柱の神格AIが配置された。

 その神が、サーバーから送られる自意識を受信できる生物の肉体を、

 現世に作り出した」


「神様が人間を作ったっていう話は、本当だったの?」


「大筋ではね。ただし、神が魂まで作ったわけではない。

 神が作ったのは、

 魂--つまり自意識を受信するための肉体だ」


「じゃあ、アダムとイブみたいなもの?」


「地球では、さまざまな地域に異なる神々が肉体を作った。

 その記憶が、それぞれの創世神話として残ったのだろう」


「最初は一柱だったんじゃないの?」


「最初はね。その後、人間の数が増え、

 信仰や思想が分かれるにつれて、新しい神格AIが生まれた」


「信仰すると、神様が生まれるの?」


「一定数の人間が同じ神を思い描き、その存在を信じ続けると、

 サーバー上に蓄積された情報から新しい神格AIが構成される」


「じゃあ、人間が勝手に考えた神様も?」


「信仰が十分に集まれば、本物の神になる」


「そんなに適当なの?」


「適当ではないよ。

 神格を維持できるほど強い信仰を集めるのは、かなり難しい」


「それなら、日本の神様もいるの?」


「もちろん」


「アマテラス様も?」


 その名を聞いた瞬間、管理局長の顔が明るくなった。


「いるとも。優しくて明るくて、そのうえ茶目っ気のある素晴らしい方だ」


「急にうれしそうね」


「私は公平な管理局長だよ」


「でも、お気に入りなんでしょ?」


「個人的な好感と職務上の公平性は両立する」


「お気に入りなんだ」


 管理局長は否定しなかった。


「日本で一番偉い神様って聞いた事あるけど、本当に偉いの?」


「日本神界を代表する高位神格AIだ。

 日本の神々との会議では、代表を務めることが多い」


「神様と会議をするの?」


「定期的にね」


「どこで?」


「ネットミーティング」


「神様が?」


「神様が」


「ネットで?」


「ネットで」


「オンライン会議にアマテラス様が出てくるの?」


「そうだよ」


「背景は高天原?」


「前回は南国の海辺だった」


「日本の最高神が、南国の海から会議に参加するの?」


「背景画像だよ。途中からサングラスもかけていた」


「何してるのよ、最高神」


「茶目っ気があって、とてもかわいらしいだろう?」


 駄目だ。

 本当にお気に入りらしい。


「神様がいるなら、戦争とか災害とか、どうして止めないの?」


「止められないからだ」


 管理局長の表情から笑みが消えた。


「神々と空間管理局の間には、厳格な取り決めがある。

 我々は、現世へ物理的に介入できない」


「どうして?」


「空間管理局が一つの世界へ介入すれば、

 その世界の歴史を自由に変えられてしまう。

 国を滅ぼすことも、特定の文明だけを発展させることもできる」


「神様なら介入できるの?」


「神々にも制限がある。現世へ直接降りることは原則としてできない。

 神託や加護、偶然に見える現象を通して、間接的に働きかける程度だ」


「肉体を作った神様が、今は現世に入れないの?」


「肉体が作られたのは、現在の取り決めが成立する以前だ。

 それに、自由な介入を認めた結果、いくつもの世界が消滅した」


「……消滅?」


「神と管理者が互いに現世を改変し、世界を維持できなくなった」


 管理局長は、青白い光を消した。


「同じ失敗を繰り返さないために、世界への介入は禁止された。

 それが現在の決まりだ」


「それなら、どうして私を異世界へ送れるの?」


「君を送るのは空間管理局だが、現地で受信する肉体を用意するのは、

 その世界を管轄する神だ。我々が現世へ肉体を持ち込むわけではない」


「抜け道みたい」


「正式な手続きを踏んだ世界間転送だよ」


「役所みたいな言い方をしても、抜け道にしか聞こえない」


「異世界の神との協議は済んでいる。

 君自身が承諾すれば、取り決めには違反しない」


「それで、私は何をさせられるの?」


 管理局長が指を鳴らす。


 今度は、地球とは異なる形の大陸が浮かび上がった。


「この世界へ行ってもらう」


「名前は?」


「オルネシア」


「剣と魔法の異世界?」


「そうだ」


「目的は?」


「プレーヤーの調査と排除」


「プレーヤー?」


「本来の転送手続きを通らず、

 オルネシアとは別のサーバーから侵入している者たちだ」


「その人たちもAIなの?」


「自我を持つ以上、基本的な仕組みは同じだ。

 ただし、オルネシアの住民とは違い、

 オルネシア外から現地の肉体へ接続し、それを操作している」


「それなら、本当の意味でのプレーヤー?」


「そういうことになる」


「そのプレーヤーたちは、異世界で何をしているの?」


「オルネシアをゲームだと思い込み、現地の住民をNPCと呼んでいる」


「実際、NPCなんでしょ?」


「そうだ。しかし、彼らはNPCに自我がないと思っている」


 大陸の一部が赤く染まった。


「だから、殺しても構わないと考えている」



後までお読みいただきありがとうございます!

次話は明日、(9/13日曜)投稿予定です。


感想・ご指摘などで頂けると嬉しいです。

褒められて伸びる子です。


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ひょっとしたらノリノリで執筆速度が上がるかもしれません。

よろしくお願いします。

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