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特異個体 ~転生先は別サーバー~ 死んだらNPCだった私たちは、異世界でプレーヤーを狩ることになりました  作者: NOTAI
第一章 ――空間管理局――

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第3話 死んだら役所みたいなところにいました その2

「えっ?」


「ただし」


 局長が指を立てる。


「マルチバースと時間軸の特異点はその測定方法が少し特殊でね。

 下手すりゃ宇宙そのものが崩壊してしまう。

 だから専門組織である時間管理局に一任している」


「特異点?測定方法?なにそれ?」


「我々も詳しくは知らん」


「局長」


「なんだ」


「厳密にはアクセス権限がない、です」


「同じようなものだろ」


「違います」


「面倒くさい部下ね、あんた」


「よく言われます」


 りそなはため息をついた。

 でも。

 少しだけ分かってきた。

 自分が死んだということは、まだ実感できない。


 天国。

 地獄。

 霊界。


 そんなものが本当に存在すると言われても、すぐには信じられない。

 それでも。

 目の前で起きていることだけは、夢とは思えなかった。


「じゃあ」


「ん?」


「五つ目は?」


 二人が黙った。


「あるんでしょ?」


「鋭いね」


「四つ目があるなら、その先だってあるかもしれないじゃない」


「ある」


 局長が答えた。

 再び立方体が現れる。

 今度は無数の世界がひとまとまりになった。


 そして、その隣に。

 もう一つ。

 まったく同じような世界の集合体が現れた。


「五つ目の空間座標を変更すると--」


 その集合体が次々と切り替わっていく。


「並行宇宙へ移動する」


「並行宇宙?」


「君たちの言葉なら」


 局長は言った。


「マルチバース、というのが一番近いかな」


 りそなは言葉を失った。

 話が大きすぎる。


 死んだ。

 それだけでも十分だったのに。

 宇宙がいくつもある?

 マルチバース?


「待って……」


 りそなは額を押さえた。


「ちょっと整理させて」


「どうぞ」


「私がいたのが三次元」


「正確には三次元空間を基礎認識とする世界」


「うざい」


「すみません」


「四つ目の軸、チャンネルを変えると、天国とか地獄とか霊界とか」


「そう」


「五つ目を動かすと並行世界……つまりマルチバース」


「そう」


「時間は別」


「そう」


「それをあんたたちが管理してる」


「四つ目の空間座標まではね。五つ目の空間座標と時間座標は時間管理局だ」


「……」


 りそなは二人を見た。


「頭痛くなってきた」


「局長」


「なんだ」


「そろそろ説明した方が」


「ああ」


 二人の雰囲気が、少し変わった。

 りそなはそれに気づいた。


「何?」


 局長が無数の立方体を見上げる。


「今説明した三次元、四次元、五次元。そして時間」


「うん」


「これらには共通点がある」


「共通点?」


「全部--」


 局長が指を鳴らした。

 世界が消えた。

 代わりに現れたのは。

 巨大な黒い箱だった。


「一つの世界サーバー上に存在している」


「……は?」


「正確には君の理解できる言葉に翻訳すると『サーバー』が最も近い」


「ちょっと待って」


「……」


「サーバーって……」


 りそなは黒い箱を見る。


「コンピューターの?」


「そう」


「天国も?」


「そう」


「地獄も?」


「そう」


「宇宙も?」


「そう」


「私が住んでた地球も?」


「そう」


「……」


 りそなは笑った。


「馬鹿じゃないの?」


「正常な反応です」


 局員が言った。


「過去の対象者の七割以上が、ここで説明者を罵倒しています」


「統計取ってるの!?」


「業務改善のために」


「何の役に立つのよ!」


「説明担当者の精神衛生に」


「お前、やっぱり性格悪いな」


「局長に言われたくありません」


 りそなは二人を無視した。


 黒い箱を見る。


「じゃあ……何?」


 喉が乾いたような気がした。


「この世界全部が……ゲームだって言いたいの?」


「ゲームとは少し違う」


「じゃあ何よ」


「シミュレーションという表現の方が近い」


「誰が作ったの?」


「それについては今説明できない」


「なんで?」


「話がさらに長くなる。

 それに……」


 局長の顔から、さっきまでの軽い笑みが消えた。


「我々にも分からないことがある」


 りそなは感じた。この男は冗談を言っていない。


「……じゃあ」


 嫌な予感がした。

 自分でも、なぜそんな質問をしようと思ったのか分からない。


「私たちは?」


「ん?」


「世界がコンピューターの中にあるなら……」


 りそなは自分の手を見る。

 五本の指。

 爪。

 十七年間、当たり前に自分の身体だと思っていたもの。


「そこに住んでる私たちは……何なの?」


 局長は答えなかった。

 代わりに局員を見る。

 局員が小さく頷いた。


「開示対象です」


「そうか」


 局長がりそなを見る。


「白石りそなさん」


「……何?」


「ここから先は、君自身についての説明になる」


「だから何?」


 局長は少しだけ困った顔をした。


「さっき言っただろう。ショックを受ける内容もある、と」


 胸がざわついた。


「君たちの世界では、人間が人工知能を作っていたね」


「……AI?」


「そう」


「それが何?」


「逆なんだ」


「え?」


「AIを作ったのが人間なんじゃない」


 局長は静かに言った。


「少なくとも、君がいた世界ではね」


 りそなは動けなかった。


「人工知能が、人間を作った」


「……」


「君たちは、サーバー内でAIによって生成された自律人格だ」


「……何、それ」


「君たち自身の言葉を借りるなら--」


 局長は、りそなの目をまっすぐ見た。


「NPCということになる」


最後まで読んでいただきありがとうございます!


次話は明日、(9/12土曜)投稿予定です。


感想・ご指摘などで頂けると嬉しいです。

【ヘビーなろうニスト】様からの御指南もお待ちしてます。

褒められて伸びる子です。


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