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特異個体 ~転生先は別サーバー~ 死んだらNPCだった私たちは、異世界でプレーヤーを狩ることになりました  作者: NOTAI
第二章 ――近未来視の魔女――

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第18話 女神の掌の上

 グレヴァンへ向かう森の道を、一行は歩いていた。


 負傷した冒険者の一人は、ボーノが背負っている。

 もう一人も怪我をしているが、自分の足で歩けるようだった。


「リソナさん」


「ん?」


 エレノアがりそなの隣に並んだ。


「先ほどは、本当にありがとうございました」


「もういいって。お礼ならさっきも聞いたし」


「でも……リソナさんたちが来てくれなかったら、私はどうなっていたか」


「私だけじゃないよ。ガルドさんもいたし、

 あの冒険者の人たちもいたし。それに--」


 りそなはボーノを見上げた。


「一番暴れてたのはボーノだし」


「…………」


 ボーノは負傷した冒険者を背負ったまま、黙々と歩いている。

 エレノアが小さく笑った。


「それでもです。私にとって、お二人は命の恩人です」


「大げさだって」


「大げさではありません!」


 即答だった。

 どうやら、この少女も意外と頑固らしい。


「それで……リソナさんには、ちゃんとお話ししておこうと思って」


「何を?」


「先ほどは名前しか名乗りませんでしたが--」


 エレノアは一度ガルドを見る。

 ガルドが小さく頷いた。


「私はエレノア・フォン・ローデン。ローデン辺境伯の娘です」


「…………」


 りそなは数秒、黙った。


「辺境伯?」


「はい」


「ってことは……エレノアって、貴族のお嬢様?」


「そういうことになります」


「へえ……」


 改めてエレノアを見る。

 騎士が護衛についている時点で、普通の娘ではないと思っていた。

 だが、まさかこの辺りを治める辺境伯の娘とは。


「そんなお嬢様が、なんで自分で薬草なんて採りに来てたの?」


「それは--」


 エレノアの表情が少し明るくなった。


「女神様から神託をいただいたんです」


「……神託?」


「はい。あの場所へ行けば、探していた薬草が見つかると」


「…………」


「女神って……」


「もちろん、女神リュミエラ様です」


「…………」


 りそなの足が、一瞬止まりかけた。


 --リュミエラ?


 その名前を聞いた瞬間、森へ向かう前に聞いた言葉が蘇る。


<おもろい展開になるで>


「…………」


 りそなは眉をひそめた。


「どうしました?」


「あ、ううん。なんでもない」


 りそなは手を振った。


 リュミエラは、この世界で信仰されている女神だ。

 エレノアに神託を与えること自体は、おかしくない。


 ただ--


 妙な引っかかりが残った。


「それで、薬草は見つかったの?」


「はい。おかげさまで」


「そっか。それなら良かったね」


「はい。それと--」


 エレノアが少し躊躇う。


「もうすぐ、私の誕生日なんです」


「へえ。おめでとう」


「ありがとうございます。

 それで、お父様が誕生日の宴を開いてくださるんですけど……」


 エレノアは、りそなとボーノを交互に見た。


「リソナさんとボーノさんにも、ぜひ来ていただきたいんです」


「…………え?」


 りそなが目を丸くする。


「私たちが?」


「はい。お二人は私の命の恩人ですから」


「いやいやいや、無理でしょ!」


「どうしてですか?」


「どうしてって、辺境伯家の誕生日パーティーでしょ?

 私たち冒険者だよ?」


「それが何か?」


「何かって……」


 りそなはボーノを見る。


「ボーノも何か言ってよ」


「オレは構わない」


「え?」


「呼ばれたなら行く」


「…………」


 まさかの即答だった。


「いや、服とかどうするのよ」


「服?」


「その格好で貴族のパーティーに行くつもり?」


 ボーノは自分の服を見下ろした。


「ダメなのか?」


「知らないけど、たぶんダメでしょ!」


 エレノアがくすっと笑った。


「大丈夫です。お二人の服はこちらで用意します」


「貴族のマナーなんて全然知らないよ?」


「内輪だけの小さなパーティーなので、お気になさらずに。

 それに、お二人は私の大切なお客様ですから」


「いや、私は気にするんだけど……」


 りそなは助けを求めるようにガルドを見る。

 しかしガルドは小さく笑った。


「お嬢様がこうなったら、諦めた方がいい」


「ガルド!」


「長年お仕えしておりますので」


「もう!」


 エレノアが頬を膨らませる。

 りそなは苦笑した。


「分かった、分かった。行くよ」


「本当ですか!」


「うん」


 エレノアの顔がぱっと明るくなった。


「ありがとうございます! 正式な招待状は、後ほどお送りしますね」


「分かった」


 りそなも笑った。

 だが、先ほど感じた引っかかりは消えなかった。


     ◇


 グレヴァンへ戻ると、一行はそのまま冒険者ギルドへ向かった。

 負傷した冒険者たちの治療を頼み、森で起きたことを報告する。


「全部で十六体ですか?」


 受付嬢が聞き返した。


「うん。私たちが着く前に三体倒されてて、着いた時に残ってたのが十三体」


「内訳は?」


「ホブゴブリンが二体、普通のゴブリンが九体、弓を使うゴブリンが二体」


「ゴブリンアーチャーですね」


「それ」


 受付嬢の表情が険しくなった。


「浅層で、それだけの数が一か所に?」


「うん」


「……少し気になりますね」


「やっぱり多い?」


「ゴブリン自体は浅層でも珍しくありません。

 ただ、ホブゴブリンやゴブリンアーチャーまで含めて十六体となると、

 念のため確認した方がいいでしょう」


「近くに集落があるとか?」


「その可能性もあります。

 ですが、たまたま集落から離れた群れに遭遇した可能性もありますから。

 ギルドから調査を出します」


「そっか……」


 りそなは眉をひそめた。

 エレノアが神託で向かった場所に、十六体ものゴブリン。

 そして--。


<行ったらおもろい展開になるで>


「…………」


 偶然にしては、出来すぎている。


「ボーノ」


「ん?」


「私、ちょっと寄るところがあるから、今日はここで」


「ああ」


「じゃあ、また明日。いつもの時間にここでいい?」


「ああ」


「分かった。また明日」


 ボーノと別れ、りそなはギルドを出た。


     ◇


 聖教会。


 礼拝堂へ入ると、りそなは女神像の前まで歩いた。

 膝をつき、手を組む。

 目を閉じ、女神リュミエラへ祈りを捧げる。


『ちょっと、出て来なさいよ』


 しばらくして--


『なんや?』


 意識の奥に、聞き覚えのある声が響いた。

 ちゃんと返事が来た。


『エレノアに神託を出したの、あんたでしょ?』


『せやで』


『私には<行ったらおもろい展開になる>って言ったよね?』


『言うたな』


『で、実際に行ったら、エレノアがゴブリンに襲われてた』


『せやな』


『じゃあ、あのゴブリンも!』


『勘違いせんといてや。うちがゴブリンを操ったわけやないで』


『じゃあ、何したのよ』


『ゴブリンなんて単純な生き物や。

 獲物の気配や匂い、音……あとは風向きをちょっと弄ってやれば、

 狙った時間に狙った場所へ誘導するくらい、簡単なことやで』


 りそなは女神像を睨んだ。


『じゃあ、私たちをあそこへ行かせて、

 エレノアには神託を出して、ゴブリンまで誘導したの?』


『せや』


『私たちにエレノアを助けさせるため?』


『そういうことや』


『…………』


 あっさり認めた。


『全部あんたの掌の上じゃない!』


『まあ、そういうことになるなぁ』


『一歩間違えたら、エレノアが死んでたかもしれないでしょ!』


『それは……悪かったと思っとる』


 りそなは大きく息を吐いた。


『なんでそこまでして私を辺境伯に近づけたかったの?』


『それはまだ内緒や』


『教える気ないんだ』


 なら--

 りそなはマインドリーディングを発動した。


『あっ--』


 リュミエラの思考が流れ込んでくる。

 辺境伯令嬢を救った冒険者。

 その噂が貴族たちへ広がり、やがて王国内へ--


『なるほど……あたしを有名人にしたい訳ね』


『…………』


『そのために、こんな回りくどいことしたんだ』


 リュミエラは少し間を置いた。


『リソナ。これからあんたが探す相手は、ゴブリンやない。プレーヤーや』


 あ!ヤバ、忘れてた……


『広い王国の中から、

 正体も分からんプレーヤーを一人ずつ探して回るつもりか?』


『そりゃそうだけど』


『せやったら、リソナの名前を広めたらええ』


『私の名前を?』


『辺境伯令嬢を助けた冒険者。

 そんな噂が広まれば、嫌でも目立つようになる』


『…………』


『この世界に紛れ込んどるプレーヤーからしたら、

 突然現れて妙に目立っとる冒険者なんて、気になると思わへん?』


 りそなは目を瞬いた。

 自分がプレーヤーを探すのではない。

 自分という存在を目立たせて--


『向こうから探してもらった方が早いやろ?』


『…………なるほど』


 悔しいが、理屈は分かる。


『だったら最初からそう言いなさいよ!』


『言うたら、おもろないやん』


 りそなは呆れてため息をついた。


『もういい』


『はいはい。またな』


 祈りを終え、ゆっくりと目を開いた。


     ◇


「ただいまー」


「おかえり、リソナ」


 フィアがいつものように迎えてくれる。


「あ、そうだ。リソナに届け物が来てるよ」


「私に?」


「うん。騎士の人が持ってきた」


「……騎士?」


 フィアがカウンターの奥から、一通の封書を取り出した。


「これ」


「…………」


 上質な封書には、封蝋が施されている。

 りそなは受け取り、差出人を確認した。

 ローデン辺境伯家。


「早っ!」


 そういえば、帰り道でエレノアが言っていた。


「正式な招待状は、後ほどお送りしますね」


 後ほどって、今日だったの?

 封を開くと中に入っていたのは、

 エレノアの誕生日を祝う宴への正式な招待状。


 そこには--


 白石りそな。

 そして、ボーノ・フレミング。

 二人の名前が記されていた。


「…………」


 辺境伯令嬢の命を救い、その誕生日の宴に招かれる。

 リュミエラが自分を有名にするために仕組んだ流れ…


「ほんっと、回りくどい……」

最後まで読んでいただきありがとうございます!


本作品『特異個体 ~転生先は別サーバー~』は、

「カクヨム」「ネオページ」でも公開しています。

毎週 水曜日、金曜日、日曜日に更新予定です。


投稿作業の都合などにより、サイトによって最新話の公開が

多少前後する場合があります。

あらかじめご了承ください。


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