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特異個体 ~転生先は別サーバー~ 死んだらNPCだった私たちは、異世界でプレーヤーを狩ることになりました  作者: NOTAI
第二章 ――近未来視の魔女――

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第17話 乱戦

 りそなは草むらへ飛び込んだ。


 そのまま身を低くして駆ける。

 アーチャーの正面には出ない。

 茂みを盾に、大きく斜め後方へ回り込む。


 --マインドリーディング。


 意識を二体のゴブリンアーチャーにシンクロさせる。


 一体は--ボーノ。

 もう一体は--こっちを警戒してる。


 まだ見えてない。

 向こうからも、こちらは見えていない。


 木々の隙間を縫うように走る。

 枝が頬をかすめる。

 草を蹴る音が耳元で弾ける。


 --気づいた。


 二体目の意識が、りそなを捉えた。


 弓を構える。

 まだ見えない。

 りそなは走る。

 見えない。

 さらに距離を詰める。

 見えない。

 茂みが切れる。


 見えた!


 狙いは--頭!

 弦が鳴った。

 りそなは走る勢いを殺さないまま、上体を半身にする。


 ヒュッ--!


 矢が頬のすぐ横を抜けた。

 次の瞬間には、もう間合いの内側。


「っ!」


 踏み込む。


 袈裟斬り--!

 剣が肩口から胸を斜めに走り抜ける。

 ゴブリンアーチャーが崩れ落ちた。


 --もう一体!


 振り返らない。

 マインドリーディングで追う。

 ボーノを狙ってる!

 もう一体のアーチャーは、こちらには気づいていない。


 弓を引き絞る。

 狙いはボーノ。

 放つ--!

 その瞬間。


 アーチャーの意識が、ようやく背後から迫るりそなを捉えた。


 驚愕。

 恐怖。

 振り向こうとする。


「遅い!」


 横一閃--!


 銀色の軌跡が走った。

 ゴブリンアーチャーの首が宙を舞う。

 身体だけが、弓を握ったままゆっくりと倒れた。


「……ボーノ!」


 りそなはすぐに顔を上げた。

 放たれた矢の先。


 矢がボーノの肩をかすめた。


「ぐっ!」


 巨体がわずかによろめく。

 その隙を、ホブゴブリンは見逃さなかった。


「グオオオッ!」


 こん棒を振り上げ、一気に突進する。

 ボーノも剣を構えた。


 激突--!


 鈍い音が響く。

 今度はボーノが押された。


「くっ……!」


 一歩。

 二歩。

 巨体が後ろへ下がる。


 ホブゴブリンがさらに力を込めた。

 その瞬間--ボーノが横へ身をかわす。

 勢い余ったこん棒が振り下ろされた。

 ボーノは大剣をこん棒へ叩きつけ、そのまま地面へ押さえ込む。


「グギッ!?」


 ホブゴブリンが引き抜こうとする。


 ガシッ!

 ボーノの足が、こん棒を踏みつけた。

 抜けない。

 ホブゴブリンが一瞬、動きを止める。


 次の瞬間--


「おおおおおおっ!」


 雄叫びとともに、ボーノの拳が唸った。


 ドゴッ!


 拳がホブゴブリンの顔面にめり込む。


 巨体が浮いた。


「えっ?」


 ホブゴブリンが吹っ飛ぶ。


「うそ……」


 りそなの目が点になった。

 二メートルを超える巨体が地面を転がり、土煙を上げて止まる。


 ホブゴブリンは起き上がらない。

 手足をヒクヒクと痙攣させている。


 ボーノは無言で歩み寄った。

 そして剣を両手で握る。


 ドスッ--


 ホブゴブリンの胸へ突き立てた。

 痙攣が止まる。

 ボーノは剣を引き抜くと、周囲を見回した。

 負傷した仲間を背後に庇いながら、

 七体のゴブリンを相手にしている冒険者。

 ボーノが駆け出す。


 りそなもすぐに戦場を見渡す。

 ボーノは、あっちへ行く。

 なら--


 視線を反対へ振る。

 騎士風の男は、まだホブゴブリンと戦っている。

 そして、少し離れたところでは--

 短剣を手にした少女へ、二体のゴブリンが迫っていた。


 りそなは剣を握り直し、地面を蹴った。


     ◇


 私を守りながら、ガルドが戦っている。

 エレノアは短剣を握りしめた。


 どうする?

 加勢する?

 --無理。


 私が入っても、足を引っ張るだけ。

 目の前では、ガルドがホブゴブリンのこん棒を剣で受け止めている。

 自分さえいなければ--


「お嬢さん、後ろだ!」


 突然、声が飛んだ。


「えっ!?」


 振り返る。


 ゴブリン!


 短剣を握った一体が、すぐそこまで迫っていた。

 さらにその後ろから、もう一体。


「ギィッ!」


 一体目が飛びかかる。


「舐めるなっ!」


 エレノアも短剣を構えた。


 キンッ!

 刃と刃がぶつかる。


 押し込んでくるゴブリンの短剣を、エレノアは自分の短剣で受け止めた。

 そのまま押し返す。


「くっ……!」


 その光景を見ながら、りそなは走る。

 --マインドリーディング。

 意識を少女へシンクロさせた。


 (~ 教わった通りに……! ~)

 (~ 受けて、 ~)

 (~ 流して、突く-- ~)


 (戦闘訓練は受けてる。)


 そして今の感情。

 焦ってる。

 だけど戦意は失っていない。


「それなら私は--」


 りそなは進路を変えた。

 エレノアへ向かっていた二体目のゴブリンが、ようやくこちらに気づく。


「ギッ!?」


 遅い。

 踏み込む。

 一閃。

 剣がゴブリンの身体を斜めに斬り裂いた。


 ほぼ同時だった。


「はあっ!」


 エレノアが相手の短剣を弾く。

 一歩踏み込み--

 短剣をゴブリンの胸へ突き立てた。


 ゴブリンの身体から力が抜ける。

 エレノアが短剣を引き抜くと、ゴブリンはその場に崩れ落ちた。


 --やっぱり。

 この子、戦える。

 りそなはすぐに周囲へ目を向けた。

 すぐ近くでは、騎士風の男がまだホブゴブリンと戦っている。


 何度もこちらを気にしている。


(この子を守りながら戦ってたの?)


「騎士さん、こっちは大丈夫!」


 りそなが声を張る。

 男が一瞬だけこちらを見る。


 倒れた二体のゴブリン。

 短剣を構えるエレノア。

 そして、その横に立つりそな。


「加勢、感謝する!」


 ガルドの目つきが変わった。

 もう、背後を気にする必要はない。

 ホブゴブリンがこん棒を振り下ろす。


 ガルドは半歩かわした。

 剣が走る。


 一太刀。


「グッ!」


 返す刃でもう一太刀。


「ギャアッ!」


 ホブゴブリンの身体に、二本の傷が走った。

 速い。

 さっきまでとはまるで違う。

 ホブゴブリンがたまらず後ずさる。


 ガルドは逃さない。

 さらに一歩。

 怯んだホブゴブリンの懐へ飛び込む。


「はあっ!」


 剣が胸を貫いた。


「グ……ガ……」


 こん棒が手から落ちる。

 ガルドが剣を引き抜くと、ホブゴブリンの巨体が地面へ倒れた。


 ボーノが駆けつけたとき、冒険者はまだ立っていた。


「はあっ!」


 剣が閃く。

 ゴブリンの胸が斬り裂かれ、その場に崩れ落ちた。


 三体目。

 七体いたゴブリンは、残り四体。


「はぁ……はぁ……」


 冒険者の息は荒い。

 それでも退かない。

 背後には、傷を負って動けない仲間がいる。

 ゴブリンたちは左右に広がり、じりじりと距離を詰めていた。

 一体が飛び出す。

 それに合わせるように、もう一体。


「くそっ!」


 冒険者が剣を構えた。

 だが--


「おおおっ!」


 横から巨体が飛び込んできた。

 剣が唸る。


 一閃--!


 二体のゴブリンが、ほぼ同時に斬り伏せられた。


「なっ……!」


 冒険者が目を見開く。

 ボーノは止まらない。


「ギィッ!」


 残った一体が短剣を突き出す。

 ボーノは半歩踏み込んだ。

 剣を振り下ろす。


「ギャッ!」


 ゴブリンが地面に叩き伏せられる。


 ほぼ同時--


「はあっ!」


 冒険者の剣が、最後の一体を斬り裂いた。

 ゴブリンが倒れる。


「はぁ……はぁ……」


 冒険者は肩で息をしながら、周囲を見回した。

 もう動いているゴブリンはいない。

 ようやく剣を下ろす。


「……ボーノか。助かった」


 ボーノが振り返った。


「オレのこと、知ってるのか?」


「有名人だからな」


「……そうか」


 ボーノは倒れているもう一人のそばに膝をついた。


「大丈夫か?」


「ああ……死にはしない」


 そう答えたものの、顔色は悪い。

 ボーノは傷の様子を確認すると、立ち上がった。

 そこへ、りそなたちが駆け寄ってくる。


「ボーノ!」


 りそなは周囲に転がるゴブリンの死体を見て、足を止めた。


「……もう終わったの?」


「ああ」


「早っ……」


 先ほど助けた少女と、騎士風の男もやってくる。

 男は剣を収めると、りそなとボーノに向き直った。


「危ないところを助けていただき、感謝する」


 深く頭を下げる。


「私はガルド。こちらのエレノア様の護衛を務めている」


 少女--エレノアも一歩前へ出た。


「エレノアです。助けていただいて、本当にありがとうございました」


「あ、私はリソナです。こっちは--」


「ボーノだ」


 ボーノは短く答えた。

 ガルドが周囲を見回す。

 地面には、ゴブリンとホブゴブリンの死体がいくつも転がっている。


 ボーノも辺りを見渡し、つぶやいた。


「……ここを離れた方がいい」


「え?」


「ホブが二体もいた」


 ボーノの表情が険しい。


「この近くに、ゴブリンの集落がある可能性が高い」


 ガルドがうなずく。


「同感だ。ここに長居する理由はない」


 ボーノは負傷した冒険者を背負い、立ち上がった。


 --狂戦士、ねぇ。


 さっきはホブゴブリンを拳で殴り飛ばして。

 今は、怪我人を背負っている。

 フィアから聞いた話を思い出す。


 森の奥から、風が吹く。

 木々の葉がざわざわと揺れた。


「行こう」


 ボーノの言葉に、全員が歩き出す。

 ゴブリンたちの死体をその場に残し、

 一行はグレヴァンへの帰路についた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


本作品『特異個体 ~転生先は別サーバー~』は、

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毎週 水曜日、金曜日、日曜日に更新予定です。


投稿作業の都合などにより、サイトによって最新話の公開が

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