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特異個体 ~転生先は別サーバー~ 死んだらNPCだった私たちは、異世界でプレーヤーを狩ることになりました  作者: NOTAI
第二章 ――近未来視の魔女――

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第13話 パーティー結成

 冒険者ギルドに戻った頃には、すっかり日が傾いていた。

 扉を開けると、昼間よりも多くの冒険者たちで賑わっている。


 依頼を終えて戻ってきた者たちなのだろう。

 受付には何人かの列ができていた。


「じゃあ、俺はこれで」


 ボーノが短く言った。


「あ、うん。ありがとう」


「……何が?」


「帰り、一緒に来てくれたから」


「別に」


 それだけ言うと、ボーノは軽く手を上げて離れていった。

 りそなも受付の列に並ぶ。

 やがて順番が回ってきた。


「あ、リソナさん。お帰りなさい」


「ただいまです。依頼、終わりました」


 りそなは採取してきたアリネ草を受付台の上に置いた。

 エリナが一束ずつ、状態を確かめながら数えていく。


「……二十二、二十三、二十四。はい、すべて問題ありません」


「やった」


「規定の十束で依頼達成です。

 報酬は二百五十リル。残りの十四束は、一束二十リルで買い取ります」


 エリナは手元の帳簿に数字を書き込んだ。


「買取分が二百八十リルなので、合計五百三十リルですね」


 硬貨の入った小袋が、受付台の上に置かれる。


「こちらが今回の報酬です。お疲れさまでした」


「五百三十リル……」


 りそなは小袋を手に取った。

 思っていたよりも重い。

 初めての依頼。

 そして冒険者になって初めて自分の力で稼いだ報酬だ。

 自然と口元が緩んだ。


「そんなに嬉しそうにしてもらえると、こちらも--」


 エリナが言葉を止めた。


「……リソナさん?」


「はい?」


「その腕、どうしたんですか?」


「え?」


 見ると、服の袖が裂け、その下に乾いた血が付いていた。

 フォレストウルフに襲われたときのものだ。


「怪我してるじゃないですか!」


「いや、もう大丈夫ですよ。たいした傷じゃないし」


「大丈夫じゃありません。こちらへ腕を出してください」


「え? でも--」


「早く」


「はい……」


 反射的に腕を差し出す。

 エリナは傷口の上に手をかざした。


「《ライトヒール》」


 淡い光が、りそなの腕を包み込んだ。

 じんわりとした温かさが肌に染み込み、傷の痛みが引いていく。

 光が消えたときには、赤く残っていた傷も綺麗に塞がっていた。


「おお……」


 りそなは腕を動かしてみた。

 痛くない。


「回復魔法……」


「初歩的なものです。浅い傷なら治せます。それより、ほかに怪我は?」


「背中も、少し……」


「少しじゃありません。後ろを向いてください」


 今度は背中に手をかざされる。


「《ライトヒール》」


 再び淡い光に包まれ、背中に残っていた痛みも消えていった。


「すごい。完全に治った」


「服までは直せませんけどね」


「あの……代金は?」


「この程度の応急治療なら、依頼帰りの冒険者には無料です。

 それで、何があったんです?」


「フォレストウルフに襲われて」


「フォレストウルフ!?」


 今度は周囲にいた何人かまで、こちらを振り返った。


「ちょ、声大きいって」


「リソナさん、昨日登録したばかりですよね?」


「そうだけど」


「それで一人で大森林に入って、フォレストウルフと戦ったんですか?」


「まあ……」


 正確には一頭ではない。

 だが、それを言ったらさらに面倒なことになりそうなので黙っておく。

 エリナは額に手を当てた。


「だから言ったじゃないですか。新人が一人で森に入るのは危険だって」


「……言われたっけ?」


「言いました!」


 怒られた。

 りそなは小さく肩をすくめる。


「でも、ちゃんと倒したから」


「倒した?」


「うん」


 エリナの動きが止まった。


「フォレストウルフを?」


「そう」


「……魔石は?」


「魔石?」


「魔物の体内から採取できる魔石です」


 嫌な予感がした。


「持ってきてませんけど」


「素材は?」


「素材?」


「毛皮とか、牙とか」


「…………」


 りそなの顔から表情が消えた。


「もしかして」


「はい」


「売れる?」


「売れますよ」


「…………いくら?」


 エリナから説明を聞く。


 フォレストウルフだけではない。


 昨日倒したホーンラビットも、魔石をはじめ、

 いくつかの部位がギルドで買い取り対象になるという。

 りそなはしばらく無言だった。


「…………」


「リソナさん?」


「全部……置いてきた」


「え?」


「ホーンラビットも、スライムも、フォレストウルフも……」


「ああ……」


 エリナが気の毒そうな顔をした。

 その顔が、余計に腹立たしい。


「知らなかった……」


「最初は仕方ないですよ」


「お金……」


「え?」


「私のお金が森に……」


「まだリソナさんのお金ではありませんけど」


「同じようなもんでしょ!」


 思わず受付台に突っ伏した。

 昨日と今日、二匹のホーンラビットを倒した。

 今日はさらにスライムとフォレストウルフまで倒し、服も破かれた。


 それなのに。

 売れるものを全部、森に捨ててきた。


「もったいない……」


 知らなかったとはいえ、悔しい。


「だからですね」


 エリナが呆れたように笑った。


「パーティーを組んだ方がいいんですよ」


「パーティー?」


「はい。一人なら戦闘も採取も解体も運搬も、

 全部自分でやらないといけません。

 でも仲間がいれば分担できます。

 それに、何かあったとき助けてもらえますから」


「うーん……」


 りそなは腕を組んだ。

 ゲームなら分かる。

 戦士がいて、魔法使いがいて、僧侶がいて。

 それぞれの役割を分担する。

 でも、ここはゲームではない。

 少なくとも、りそなにとっては。


「誰かとずっと一緒っていうのもなぁ……」


「別に、いきなり正式なパーティーを組まなくてもいいんですよ。

 何度か一緒に依頼を受けて、相性を見てからでも」


「なるほど」


「それに--」


 エリナが、りそなの後ろを見る。


「あの人なら、ちょうどいいんじゃないですか?」


「え?」


 振り返る。

 少し離れたところに、ボーノがいた。

 依頼掲示板を眺めている。


「あの人?」


「さっき一緒に帰ってきましたよね?」


「まあ」


「知り合いなんでしょう?」


「さっき会ったばっかり」


「……さっき?」


「うん」


 エリナが何とも言えない顔をした。


「でも、森から一緒に戻ってきたんですよね?」


「そうだけど」


「だったら、一度一緒に依頼を受けてみたらどうです?」


 りそなはボーノを見る。


 無口。

 無愛想。

 何を考えているのか、普通なら分かりにくい男だ。


 --普通なら。


「……まあ、悪い人じゃなさそうだし」


 りそなは受付を離れた。


「ボーノ」


 声をかける。

 ボーノが振り返った。


「……何だ?」


「ちょっといい?」


「ああ」


「パーティーって組んでる?」


「いや」


 短い。

 相変わらず短い。


「じゃあさ」


 りそなは少し考えてから言った。


「私と組んでみない?」


「…………」


 ボーノが黙った。


「いや、ずっとって意味じゃなくて。

 何回か一緒に依頼やってみて、合わなかったらやめればいいし」


「……俺でいいのか?」


「うん」


「そうか」


 また黙る。


「…………」


「…………」


「…………それで?」


「何が?」


「返事」


「ああ」


 ボーノは小さく頷いた。


「いいぞ」


「分かりにくい!」


 りそなは思わず突っ込んだ。

 こうして。

 異世界に来てまだ間もない白石りそなに、最初の仲間ができた。


     ◇


「じゃあ、明日の朝、ここで」


「ああ」


 ボーノと別れ、りそなはギルドを出た。


 外はもう夕暮れだった。

 街を行き交う人々の向こうに、赤く染まった空が見える。

 りそなは宿へ向かって歩き出した。

 冒険者になった。

 初めて依頼を達成した。

 そして、仲間ができた。


「……パーティーか」


 悪くない。

 そう思った直後。

 森に置き去りにしてきたホーンラビットとフォレストウルフが

 頭に浮かんだ。


「…………ぐぬぬぬっ」


 やっぱり悔しい。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


本作品『特異個体 ~転生先は別サーバー~』は、

「カクヨム」「ネオページ」でも公開しています。

毎週 水曜日、金曜日、日曜日に更新予定です。


投稿作業の都合などにより、サイトによって最新話の公開が

多少前後する場合があります。

あらかじめご了承ください。


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