第二十二話:デジャヴ〈前編〉 〜中学生トラブル編〜
一通りのヒアリングと調査が完了した。
現状、井口の両親がヤクザだという確証は得られなかった。父が強面で母が厳格。どこにでもいそうな「荒っぽい家庭」という話ばかりで、特筆すべき点は見当たらない。
井口本人は、不良のような格好こそしているが、万引きや傷害といった具体的な犯罪行為は誰も聞いたことがないという。
いつもつるんでいるのは、真口、外口の二人。
(やたらと「口」が多いな…)
そんなことより気になるのが、デポルか否かだ。
デポルだった場合に、俺は感情を抑えられるのか。そもそも吉田さん関連ということで、既に俺は感情的になっている。
現状、田口への要求は、今週末の金曜日までに吉田さんを連れてこいというものだ。
連れて行かなければ、不良たちを招集してボコボコにすると脅されているらしい。ガキすぎて呆れてしまうが、本人にとっては死活問題なのだろう。
田口へのヒアリングと、周囲への聞き込みに時間をかけすぎてしまった。
実質、動けるのは今日と明日のみ。
この平成という時代、いじめや暴力に対する風当たりはまだ驚くほど弱い。中学の運動部では「シゴキ」という名の暴力が横行し、教師もそれを黙認している。
(……最悪のところ、暴力も加減すれば『あり』か)
放課後の教室。廊下側の自席に座り、そんな慢心を抱いた、その時だった。
後頭部に、すさまじい衝撃が走った。
視界が火花を散らし、体が勝手に左側へ崩れる。
(……金属バットか?はあ、、、また油断した。)
父の拳に先制されたあの夜のように、デポルに襲われナイフを突き刺されたあの日のように。
どれだけ年齢を重ねても、肝心なところで詰めが甘い。
「生まれ変わっても、何も変わらないんだなあ……」
そんな自虐的なログが脳内を流れたのを最後に、俺は薄れゆく意識の中で、必死に左胸のポケットへと手を突っ込んだ。




