第十七.五話:間話_女神たちの気まぐれ
俺は小心者だった。何をやるにも身体が縮こまる。幼い頃に植え付けられた暴力、罵詈雑言が俺の前向きな心や挑戦を阻害する。けれどそれもようやく終わった。乗り越えられた気がする。
ずっと虐待されたから俺はうまくいかないんだ。みんなに嫌われるんだと、引きずっていたから、怖くて辛くて、嫌なことがあれば何度もフラッシュバックして。それが嫌で無理やり明るい性格になろうと、前向きにしようとしたが、ただただ虚しくその通りにはできなかった。
しかし今回の一件で、前世で越えねばならなかった壁を一つ越えた気がする。
他人から見れば「たかだか親子喧嘩でしょ」と、「話し合えばどうにかなったんじゃないの」と言われるかもしれない。
けれども俺にとっては、これしか、拳しかなかったのだと思う。
本当に辛かった親父の呪縛から、前世を含めると三十数年ぶりに解き放たれた。
そんな思いを馳せながら、ボロボロでドロドロになった身体のまま、天井を見上げる。
自然と涙が流れ、そのまま深い眠りについた。
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「マジ泣ける」
「親子だからと言ってみんながみんな仲良いわけじゃないしね」
「そうそう、けど馬鹿な人間って、家族だから話し合えばわかる!みたいなやついるよね??」
「いるいるー!じゃあお前、熱々のお湯をぶっかけられて全身火傷負わせてきた親とニコニコ仲良くやれんのかよ!って話だよねー」
キャッキャッ!!
…天界では、大いに盛り上がっている。
いつしか私の周りには、複数人の女神たちで溢れていた。
私が久世にやり直しをさせてから、天界からずっと様子を見ていた。
結構退屈だな、前に戻しすぎたかな、と考えていると、他の女神たちがやってきたのだ。
「ひまー、なにしてんの?」
「えっ!?誰か生き返らせたの?」
「どこに送ったの?どこも平和じゃない?」
ひっきりなしに質問が飛んでくる。経緯を話し、暇つぶしに見ているだけだと伝えたら、ギャラリーが増えた。
『おい、お前ら。こいつは俺がやり直しさせてんだから勝手なことすんじゃねーぞ!』
「おっ!でました!アステリア様のキレ芸!」
「いぇーい!!もっとキレてー!」
私は完全に舐められている。マジでムカつく。
…しかし、久世の親子喧嘩を見て、少しうるっときてしまった。親子喧嘩というより、久世の心境か。
ただ単に、ムカつく!殺す!というような奴なら私の目には留まっていなかったと思う。
自分が受けてきた仕打ち、それを他人にもそうなってほしくないという、根底にあるこいつの「優しさ」から全ては始まったのだろう。
やはり私の目に狂いはなかった。
こいつの「優しさ」や「愚直さ」がどう影響していくのか非常に楽しみだ。
私は干渉せずに、静観していこう。
「ねぇ久世くん可哀想じゃない?骨折、治しちゃおーよ」
「いいねぇ!ついでに脳みそ少しいじって天才型にして、司法試験もサクッと通してあげよーよ!?」
「賛成!!!!」
「!?」
(今なんて!?)
「じゃあ、、、せーの!えい!」
(久世の骨折を治してしまった…)
『おい!静観するの!余計なことするなよ!俺が見つけてきたんだから!好き勝手したいならお前たちで見つけてこいよ!』
「えーでも骨折痛そうだったし…」
『あのな!人間界で骨折って大怪我なの!完治まで、一〜二ヶ月かかるのが当たり前なの!それが翌日に綺麗さっぱり治ってましたって、どんなドッキリだよ!』
私のキレ芸…ではなく、私のど正論を無視して、更に脳みそを天才型に書き換えようとした女神の首に右腕を通し、意識が飛ぶまで締め続けた。




