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第十五話:あの使い捨てカメラ 〜小学生必死編〜

さて、読者の皆様は「写せる使い捨てカメラ」をご存知だろうか。 現代のようにスマホやデジカメが普及する前、あるイカした会社が一九九〇年代に全盛を極めさせた「レンズ付きフィルム」である。撮り終えた本体をカメラ屋へ持ち込み、数百円の「現像代」を払ってフィルムを薬品で焼いてもらい、さらに一枚数十円の「プリント代」を払ってようやく紙の写真が手に入る。そんな時代の画期的アイテムだ。 ちなみに、一九九七年当時の相場だと、現像代が約六百円、プリント代が一枚三十円ほど。子供の小遣いでは、二十七枚撮りフルを現像するのは到底無理で、厳選した数枚をプリントするのが精一杯というシビアな代物だった。



放課後の教室。西日が長く差し込み、埃が光の粒となって舞っている。そんな青春の一ページを切り取りたかったわけではない。いつでも敵の急所を握れるよう、こいつを隠し持っていた初日に「その事件」は起きた。教室が見える離れた位置で待機していると、一木が一人で現れた。周りを警戒しながら、誰もいない教室に入っていく。俺はすかさず、ドア付近まで近寄り、「例の使い捨てカメラ」を構える。


(くっ…こんな時ダンボールがあればな。誰にも見つからないのに!)


某かくれんぼゲームを思い出していると、視界の端で、一木が吉田さんの机からリコーダーを抜き取った。


(あー、まさかとは思ったが…)


吉田さんに様々なヒアリングをしていると、机の中の配置が変わっているような気がすると、気になることを話してくれていた。俺は、「リコーダー舐め」かも、と瞬時に閃いた。前世ではそういった内容が、面白おかしく◯ちゃんねる掲示板に書き込まれたりすることもあり、そういうことをする輩がいるというのは事前情報として持っていた。


その後の光景に、俺の胃底からどす黒い吐き気がせり上がる。奴はそれを、獲物をなめる獣のような卑屈な顔で「愛撫」していた。少し遠くて見えずらいが、首元が赤く染まっているように見える。スクープだ!と思う反面、心底気分が悪かった。好きな子に意地悪をするレベルならまだ許容できる。しかし、リコーダーを舐め回されているのを知らずに音楽の授業を迎える吉田さんのことを思うと不憫でならない。そんなことを思いながら、精一杯気配を殺してシャッターを切る。


「カシャッ!!」


(あっ、試しておけばよかった。こんな馬鹿でかい音が鳴るとは。そりゃ父に何度も鈍臭いと言われるね…)


静まり返った廊下に、プラスチックの作動音が心臓が跳ねるほど大きく響く。一木がビクッと肩を揺らし、辺りを見回す。俺は音を立てず、開けたドアもそのままに、ゆっくりと、しかし迅速に、その場を後にした。


翌日、俺は祖母に「漢字ドリルを買いたい」と嘘をつき、千円のお小遣いをもらった。 その足でカメラ屋へ走り、祈るような心地で現像を依頼した。


(頼む……。一瞬の隙をついたあの一枚、しっかり写っていてくれ……!)


数時間後、有金をはたいて手に入れたのは、現像代とプリント十枚分。現像屋のおばさんは出来上がった写真を見て、何か恐ろしいものを見るような顔をしていたが、俺は無表情で支払いを済ませ、証拠品を回収した。

さて、どのように進めようか。まずはゴールを決めるところだな。大怪我させても逆恨みが面倒だ。ならば、精神を徹底的に破壊し、服従させる。だが一木は高い確率で、デポルの可能性を秘めている。心配なのは俺が感情的になり、暴力を振るわないことだ。


(よし、証拠品は集まった。あとは準備だな)


急いで帰路につき、明日の計画を立てる。

どのようにすれば、吉田さんや俺に仕返しがこないか、面倒ごとにならないか。

昔からあまり考えるのは得意ではないが、必死に頭を使っていると、あっという間に夜はふけていた。

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