かわいいⅡ
テント内の机には地図が敷かれている。この森の地図だろう。
地図を見ていると、近くにニコラス様が寄ってきた。
「あの、先ほどはすみませんでした」
眉を下げて謝ってきたが、一瞬なんのことだろうと思ってしまった。けれども、すぐに思い出した。
「いえ、その、大丈夫です」
「ですが、来ていただいたのに…アルは私のことを心配してあんな失礼な態度を取ってしまったんです」
「はい」
「なので、その…」
「?」
なんなんだろう。多分私に謝りたいことは本当だけど、それとは別に何かある。
…この子はルイを当て馬にする子だけど、それは今じゃない。それに私の生徒になる子でもあるし…
「ニコラス様」
「は、はい!」
肩に力が入っているな、こりゃ。
「実を言うと私、ギルドの養成所の教員なんです」
「そうなんですか!」
お、食いつきがいい。
「はい、そうなんです。今年からでまだ新人でもないんですけどね」
「すごい…やはり、ジルさん、あ、先生って言ったほうがいいですか?」
「いや、まだ先生じゃないし、ここ養成所でもないからジルでいいですよ」
「ふふふ、ありがとうございます、ジルさん」
笑顔が自然になってきた。ちょっと力が抜けてきたかな?
「それでですね、ニコラス様は私の生徒に近い将来なられるというわけです」
「そうですね、よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくお願いします。で、教師と生徒という関係には信頼関係が必要ですよね!」
「そうですね!」
「つまり!私が言いたいのは一つ!ニコラウス様、何か言いたいことがありますよね?」
「…はい」
「それを言ってください。信頼関係を築くにはまず話し合わないといけません。察するなんてできない人だっています。冒険者に限らず、何事も本音で話さないと伝わりません。話しても伝わらないことだってあるんです。話さなければなおのこと伝わりません」
ニコラス様は困った顔をしている。そりゃいきなりこんなこと言われればそんな顔もしたくなるよねーわかります…でも必要だから言わせてもらいます。
「ニコラス様は優しい方です。私、馬車の中でも、先ほど騎士のことで謝られたことでもわかりました。多分いいづらいことなのだと思いますが、遠慮なく言ってくださいね。私これでも同僚とか、上司から厳しく当たられてもへこたれないのが取り柄なんですよ」
まぁ、物は言いよう。へこたれることもあるけど、すぐに立ち直っているから。ニコラウス様が安心するように、話してみたが…
「あの、失礼なことだとは思っているのです。ですか、ジルさんにお願いするしかなくて…」
「大丈夫ですよ」
「先ほどの件で、ジルさんの精霊が怒っていらっしゃるんです」
「…」
「馬車に乗ったときも、私が勝手にハンカチを使ったので怒ってしまいました。ですが、ジルさんが一声かければそれも収まりました。このまま怒ったままだと、何か起きてしまうのではと心配で…」
そ、そりゃ言いづらいわ!!!!
これ、あれだもんね、私には見えないけど、私の近くに精霊さんいるもんね!!!
いやーしかし、ニコラス様、よく言ってくれた。私のことを信頼してくれて、ありがとう!!
「精霊さん、私気にしていないので、精霊さんも気にしないで下さいね」
まじで、まじで。
「…ニコラス様、どうでしょうか…」
「大丈夫です!精霊が落ち着きました」
「ふぅ…」
視えないって大変だわ…
「そういえば、ニコラス様は精霊が視えるんですね」
「はい!魔眼なんです。魔力あるものを認識できるのです」
…そんな設定あった?まぁ所々曖昧な前世の記憶だし、覚えていないだけかな。
「魔眼…珍しいですね。余計なお世話かもしれませんけど、聞かれたことに素直に答えてはいけませんよ」
こんなにいい子で、素直とか、先生心配になる…
「ふふ、大丈夫ですよ。ジルさんのこと信頼してるから話したんです。アルには話したこと内緒ですよ?」
口元に人差し指を当てて、目を細めていたずらをするように笑って言った。
…ルイ、かわいすぎでは?
いや!ルイに似た髪と瞳をしているから!ルイの小さいころに似ているから!!だから、可愛いと思ってしまうだけ、ルイではない!!!ニコラウス様だからね!!!!私の脳味噌勘違いしちゃだめだからね!!!!!ルイ、お姉ちゃん、ルイのこと見た目だけで好きになってないよ!ルイは優しいけれど、ちょっと頑固なところがあって、それは11歳の時、私が狩りに行こうとしとしたときに「僕も行く」って言ってきかなかったよね、危ないからダメだよって言ったり、母さんが腕を引っ張ってもやだやだって泣いて村の皆を困らせたことがあったね!結局私が面倒を見るってつられ泣きしつつ一緒に森に行ったね、一緒に森に入ったらスンって泣き止んでお姉ちゃん、ルイは子役の天才かと思ったよ!小悪魔的なところがあるってことだね!!萌え!!!やっぱりルイがかわいい!!!はーーーー天使と思わせて小悪魔とか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は何を考えているんだ…依頼中だぞ…………
一人悶絶しかけている様子を見てなのか、ニコラス様が笑ったような気がした。




