謎の依頼
「うわー眠い…」
授業内容を考えていたら、いつの間にか夜明けになっていた。少しでも寝ようと思って寝たけど、やはり眠い…
3日前の、王都に来た晩にとてつもないショックを受けたが、もはや気にしてもしょうがない。でも思うことはある。ルイは私なんかよりもずっとしっかりとしているし、賢い。養成所でなくても、私と同じように功績を上げて冒険者になろうと考えなかったのだろうか?それとも、養成所に行く必要性を考えていたのだろうか?謎だなーと思う。けれど、冒険者になりたいというルイの夢には変わりない。ルイの夢を応援したい。やはり、気にしてもしょうがないんだ。
そう思いつつ、しょぼしょぼする目をこすっていると、ミントのような清涼感のある優しい風が吹いてきた。
精霊さんがやってくれているのだろう。なにかしら困っていると、手助けしてくれるし、本当にいい人…精霊だなー
「ふふふ、ありがとうね」
そう伝えると、より強い風が吹いてきた。…いや、そこまでされると、目が痛い…
春まで何も予定はないけれども、こなせそうな依頼があれば受けていこうと決めていた。休みだからといってダラダラしてるとせっかくの休みを家で過ごして、夕方になって虚無を感じる羽目になる…。前世の記憶がそういっている…
といっても、村ではそんなぐーだらな生活をしてこなかったから、そんな生活をしていた前世の私はもったいないことをしていたんだなーって思う。どうせならどっかに行ったりすればいいのに。前世では動物や水生の生き物を管理した園があった。記憶を辿れば、楽しそうで私が行ってみたいと思う場所もある。そういえば、酒場で異世界の話がでたことがあったな…なんだったけ?忘れたー
そんなことを考え剣帯を付けると、あっという間に支度が終わった。革鎧は昨年買い換えたけど、この剣帯もずいぶんと使って長いから、新しいのが欲しいなーと思いつつ、階段を下りてロビーへ向かう。
ロビーへ降りると、いい報酬の依頼は残っておらず、薬草や遠方の依頼などが掲示板に残っている。その中から厄介そうな魔物の討伐依頼はないか探す。今日はなんだか思いっきり身体を動かしたい気分なのである。けれども、そういった依頼も残っていない。
「やっぱり、早めに張っといたほうがよかったかなぁ」
でも、眠かったんだもん。昨日も日中は依頼を受けて、夜に授業内容を考えてた。だから早く起きて掲示板が張り替わるのを待つのはできなかった…
どうしよう、今日は薬草採取の依頼でもしようか…と悩んでいると、カウンターから声がかかった。
「おい、ジル!ギルマスが呼んでるぞ!」
「え?はーい!今行きます!」
え?ボス?なんだろう、なんかしたっけ?
呼び出しにあまりいい思い出がないため、行きたくない。でも行かないとボスから痛い鉄拳を食らう羽目になる。なんか朝からついてない気がする…
ボスの部屋まで行くと、パトリックもいた。パトリックから依頼の用紙を渡される。依頼内容を確認すると、やんごとなき身分のかたのわがま…遠出に付き合えという内容だ。
「依頼ですか?」
「お前達に頼みたい。」
「…これは、貴族の坊ちゃんの面倒を見ろということですかね?」
「そうだな」
「…騎士の仕事では?」
仕事がら、その領地の領主…貴族と仕事をすることはある。けれどもこの依頼は、護衛だ。商人や金持ちの護衛依頼は冒険者にも依頼はあるけれども、身分のある者の護衛はその貴族お抱えの騎士がするものだ。それをギルドに依頼するなんて、どう考えても疑問しか浮かばない。
私の疑問は当たり前のことで、一緒に依頼を聞いていたパトリックも疑問を感じているように思う。…いや、いつものしかめっ面か。
「精霊を意のままに従えているお前に精霊憑きのパトリックがいれば、不祥事にも対処できるだろう。」
実力を見込まれての指名依頼は嬉しいけれども…本来の疑問に答えてはくれていない。何か隠す必要があるのだろうか。まぁ、なるようになるかなー
「貴族への対応っていうか、私礼儀とかてんでわからないんですけど大丈夫ですか?」
普通の平民だし、ですます調でしか話せないよ。
「遠出には専従騎士も無論就く。何かあればお前たちから話しかけずにその騎士に話を通せ。」
それは想定内であり、期待なんかしてないと言わんばかりに言われた。
「受けてくれるか?」
でも、ボスっていつもこんな感じだよね。素っ気ないし厳しく話しかけてくるけど、私たちが働きやすく依頼主と話し合ってくれてる。最後にはちゃんと受けるか聞いてくれるし。やっぱりいい人だなー。
依頼主は気になるし、冒険者を選んだわけもわかんないけど、私たちの実力を信頼して選んでくれたのだ。断ることはしない。
「その依頼、受けます。」
あ、でもパトリックがいるじゃん。…チェンジできないかなー…




