5/31
第五話 遅れてきた男
国境視察の日、多々見友政は半刻遅れて現れた。
「途中走ったし」
「走れば遅刻が消えると思ってんの?」
かなりの距離を走ってきたはずなのに、友政はほとんど息を乱していない。
「間に合ったやろ」
「間に合ってないから言ってるんだけど」
友政は若いながら、軍務ではすでに頭角を現していた。
長い行軍にも強く、いざという時の判断も早い。
ただし、刻限には弱い。
道中、澪の歩みが遅くなると、友政は何も言わず荷物を取り上げた。
「ありがとう」
「遅いから」
「余計な一言なんだよなあ」
「結果、楽になるやろ?」
「結果結果って、そればっかだね」
「結果が一番大事やろ」
その言葉を、澪はこの先、何度も聞くことになる。




