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第四話 三月の静けさ
盟約は三月を迎えた。
国境に新しい砦はなく、大軍も集まらない。小競り合いも、一度も起きていなかった。
「暇ですね」
「喜べ」
城主は呆れたように澪を見る。
以前なら国境に張りついていた兵も、今は田畑へ戻っている。止まっていた街道には商人の姿が戻り、荷車が行き交うようになった。
澪にとっては、それで十分だった。
「最近、そなたを“和議の娘”と呼ぶ者がおる」
「嫌です。ダサい」
「そこか?」
城主はため息をついた。
まだ誰も、この三月の静けさが、後に『藤本初盟』と呼ばれることになるとは知らなかった。




