↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『約束を守っていただけなのに、なぜか天下が近づいてきました。』〜和議の娘と、遅刻魔の韋駄天〜  作者: 藤乃澪
第二章 和を結ぶ者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/31

第十一話 雑談は情報です

澪が友政へ託したのは、敵方の南部を預かる家臣への書状だった。


その男は、敵方当主の長男と折り合いが悪い。


けれど澪が求めたのは、寝返りではなかった。


「寝返ってほしいわけじゃないの」


「ほな、何を頼むん?」


「中立でいてほしい」


友政が眉をひそめる。


「それだけ?」


「それだけ」


澪は地図の南側を指した。


「この人が預かってる兵は二百。二百が動かなければ、八百が六百になる」


「まだ倍やで」


「次がある」


澪はさらに別の場所へ指を滑らせた。


そこは、以前の和議で何度か立ち寄った村だった。


敵軍が進軍するなら、兵糧を集める場所になる。


「この村にも頼む。越境してきた兵には米を出さないでって」


「……お前、どんだけ喋ってんの?」


「え?」


「誰と誰が仲悪いとか、どこの村が兵糧出すとか。普通そんなん覚えとる?」


澪は少し考えてから笑った。


「雑談って大事だよ」


「雑談?」


「正式な話し合いより、本音が出るから」


酒の席で漏れた愚痴。


帰り際の何気ない一言。


家族の話。


土地の話。


その時は何の役にも立たないように見えた話が、今になって全部つながっていた。


友政は呆れたように息を吐く。


「怖いな、お前」


「失礼だな」


澪は書状を差し出した。


「これ、日が落ちるまでにお願い」


友政が受け取る。


「今から?」


「今から」


「……走れば間に合う」


澪がぴたりと止まった。


「その考え方をやめろって言ってるの」


「間に合えばええやろ」


「よくない!」


しばらく睨み合ったあと、澪は干し飯を包んで友政へ押しつけた。


「途中で倒れないでよ」


「誰に言うとんねん」


友政は笑って、それを懐へ入れた。


そして次の瞬間には、もう走り出していた。


八百対三百。


その差を埋めるために必要だったのは、新しい策ではない。


澪がこれまで人と話し、覚え、積み重ねてきたものだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。