新しい仕事
冒険者ギルドでウェイトレスを始めて数週間。
私はようやく、朝と夜の忙しさに慣れてきた。
今日も店内には、人間、エルフ、獣人、半獣人、ドワーフなど、様々な種族の冒険者たちが集まっている。
「オーダー入りまーす! ウサギの香草焼き1つ、骨付き肉2本、ミートスープ1つ、ベジタリアンパスタ1つ、それからエール4本でーす!」
夜の営業中、私は空いたテーブルを片づけながら、受けた注文を厨房へ伝えていた。
「カナちゃん、それ下げたらこの料理を20番と47番にお願い!」
「分かりました!」
食器を下げると、すぐに新しい料理が乗った皿を受け取り、指定されたテーブルへ向かう。
「お待たせしました。ご注文のチキンステーキです」
「カナちゃん、今日も可愛いねぇ。よかったら俺と一杯どうだ?ヒック!」
「ごめんなさい、今は仕事中ですから♡」
酔った中年冒険者が軽くナンパしてくる。
この時間帯はこういう人が多い。
最初の頃は恥ずかしくて何も言えなかったけど、今は軽くあしらうコツも覚えた。
「そんな冷たいこと言わずにさぁ~、ちょっとくらい――」
「ちょっと困りますよ、お客さん。……ふんっ!」
「ぐはっ!?」
肩に手を伸ばしてきたので、私はその手を払いのけ、軽く右ストレートを入れる。
酔っ払いは椅子ごと後ろへ倒れ込んだ。
グレンさんから
「しつこい酔っ払いは殴っていい」
と教わっている。
「おお~……!」
周囲から感嘆の声が上がる。
「カナちゃん強くなったなぁ」
「最初の頃の恥ずかしがっていた姿が懐かしいぜ」
「ちょっとエロい事言うだけですぐに顔を真っ赤にして俯いていたからな」
「お前試しに言ってみろよ!」
「はあっ!?そんな事言ったら絶対ぶん殴られるじゃねえかっ!!」
「でも、あの胸と尻は触ってみてえなぁ……」
「何だ、お前小さい胸が好きなのか?なら頼んでみろよ。骨くらいは拾ってやるぜ?」
「いいぜザクス!それにどうせ死ぬのならカナちゃんをひん剥いてだな、ベッドの上でこう……」
「私をひん剥いて……どうするのかしら?ん……?」
私は座ったまま変に腰をカクカクと振っている酔っ払った若い男性冒険者の後ろで仁王立ちをする。
「いや……、それはだな……。死ぬ時はカナちゃんの胸の中がいいなぁって……。あは、あははは……!」
「そう……、なら望みを叶えてあげる……っ!」
引き攣った笑みを浮かべる酔っ払いの冒険者の首をチョークスリーパーで締め上げる。
すると、その冒険者の頭が私の胸へと押し当てられる。
「どう……っ!?念願の私の胸は……!」
「死ぬ……!死ぬ……っ!で……でも……カナちゃんの胸の中でなら……!」
「ふん……!」
ある程度首を締め上げた所でチョークスリーパーを外すと、この酔っぱらいは倒れ込んで気を失っていた。
「お前が余計なこと言うからだろ……。しかし、あの娘、本当に強いな」
「あれなら冒険者でも通用するんじゃねえか?」
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「よう、カナちゃん。だいぶ慣れてきたみたいだな」
酔っ払いを撃退したあと、料理を取りに行こうとすると、グレンさんが声をかけてきた。
「あ、はい。おかげさまで……」
「カナちゃん、良かったら次は厨房の仕事もやってみないか? 人手が足りなくてな」
「はい、構いませんよ」
「おお、助かるよ!」
グレンさんに案内されて厨房へ入ると、数人のスタッフが必死に料理を作っていた。
ホールも大変だが、ここはさらに戦場のようだ。
「とりあえず、カナちゃんはこっちを頼む」
指さされた先には――山のように積まれた汚れた皿。
「そろそろ皿もジョッキも足りなくなる。急いで洗って拭いてくれ。洗い残しのないようにな」
そう言い残し、グレンさんは厨房を出ていった。
(こ……この山を……? いいじゃない! やってやろうじゃない……っ!)
こうして私は、ホールからキッチンへと戦場を移し、皿洗いに挑むことになった。
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