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カナ、痴漢にあう!

 ホールで働き始めて数日後の夜。

 私は酒が入ってご機嫌な四人組の男性冒険者たちのテーブルへ、エールを運んでいた。


「お待たせしました、エール4つです!」


「おう、カナちゃんありがとうな!今日も可愛いじゃねえか。ほら、こっち来て一緒に飲もうぜ!」


「い、いえ……仕事中なので……」


 可愛いと言われて思わず顔が赤くなる。

 離れようとしたその瞬間――


「いいから来いって!」


「きゃっ!?」


 私は腕を掴まれ、強引に隣へ引き寄せられた。

 その勢いでバランスを崩し、椅子に座らされてしまう。


「な、何するんですか……!」


 立ち上がろうとするが、腕をがっちり掴まれて動けない。


「今日の冒険が上手くいったんだよ。ちょっとくらい付き合ってくれてもいいだろ?」


「やめてください……っ!」


 私は必死に腕を振りほどこうとするが、酔った冒険者の力は強い。


「おい、俺にも話させろよ。カナちゃん、こっち向いてよ」


「ちょっと、離してください……!」


 別の冒険者が肩を掴み、無理やりこちらへ向かせようとする。

 さらにもう一人が私の行く手を塞ぐように立ちふさがった。


「おいおい、そんな怖い顔すんなよ。ちょっと話すだけだって」


「そ、そうだよ。減るもんじゃねえだろ?」


 男性冒険者たちは私の体を触ろうと手を伸ばしてくる。


「や、やだ……離して……!」


 逃げようにも、三人がかりで囲まれていて身動きが取れない。

 残りの一人はニヤニヤしながらその様子を眺めていた。


 大声を出せば助けが来るかもしれない。

 でも――


 怖い。

 声が出ない。

 もし叫んだら、もっと乱暴されるかもしれない。


 胸がぎゅっと締め付けられ、涙が滲む。


「おい、その辺にしておけ。その娘嫌がってるだろ?」


「はぁ?なんだよ――ぐっ!?」


 突然、私の目の前で男の悲鳴が上がった。


「……?」


 恐る恐る顔を上げると、銀髪の男性が片足を上げた姿勢で立っていた。

 どうやら、私を掴んでいた男を横へ蹴り飛ばしたらしい。


「お前たちいいかげんにしておけ。ここはそういう店じゃない」


 銀髪の男性は両手をポケットに入れたまま、不敵な笑みを浮かべていた。


「カナちゃん、大丈夫っ!?」


「ファナさん……!ファナさん……っ!!うう……っ、ひっく……!」


 ファナさんが駆けつけ、私の腕を掴んでいた男たちの力が緩む。

 その隙に私は逃げ出し、ファナさんにしがみついて泣き崩れた。


 怖かった……!ほんとに怖かった……っ!!


「カナちゃん、ごめんね。気づくの遅れちゃって……!」


「おい!ザクス、何しやがる!」


「何しやがる、じゃねえよ。嫌がってる女の子に絡むな。飲みたいなら勝手に飲め。絡みたいならスケベ通りにでも行け」


「ちっ……冗談だろうがよ」


 そこへ――


「冗談で済むかよ」


 低い声が響いた。


 振り返ると、グレンさんが指をボキボキ鳴らしながら立っていた。


「カナちゃんを泣かせたな……覚悟しろ」


「ひっ……!」


「や、やめ――」


「貴様らぁぁぁぁーーっ!!」


「「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」」


 次の瞬間、四人の冒険者はグレンさんにボコボコにされ、ギルドから叩き出された。


---


「グレンさん……っ!うああぁぁぁぁぁ……!怖かった……!怖かったです……っ!!」


 私はグレンさんにしがみつき、堰を切ったように泣き続けた。


「カナちゃん、もう大丈夫だ。怖い思いをさせてすまなかったな」


「うぅ……ひっく……!」


「だがな、カナちゃん。冒険者になるということは、こういう危険も付きまとう。ここでは俺たちが守れるが、外ではそうはいかん。自分の身は自分で守らないといけない」


「……はい……」


「まずは練習だ。変に絡んでくる奴がいたら遠慮はいらん。全力でぶん殴れ。責任は俺が取る」


「……はいっ!」


 私は涙を拭い、力強くうなずいた。



◆◆◆



翌日


「昨日はよくも私に絡んでくれたな……っ!!」


 懲りずにギルドへ来た冒険者の一人を見つけた私は、

 全力で股間を蹴り上げた。


「ぐぼぉっ!!?」


 男は悶絶して倒れ込む。


 私は何事もなかったかのように振り返り、ホールの仕事へ戻っていった。

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