ガラクタ屋の幽霊
ミリアさんとパーティを組んで数日。
一緒に朝食を取っていると、ファナさんが妙な噂を持ってきた。
「ねえカナちゃん知ってる? 最近ガラクタ屋に幽霊が出るんだって……!」
ファナさんは両手をヒラヒラさせて、いかにも幽霊の真似をしてみせる。
世界が違っても、オバケのジェスチャーは同じらしい。
「幽霊……ですか?」
「そうそう。ガラクタ屋が仕入れた鎧がね、勝手に動いたり、うめき声をあげたりするんだって」
「それなら、除霊かなにかしてもらえばいいんじゃないんですか?」
「まあ、退魔師に頼めば良いんだろうけど、お金が結構かかるからね……。でも、急に鎧が動いたり、うめき声あげたりしたら怖いよね~……!」
「まあ……確かに……」
私はオカルト好きでもないし、正直よそ事の話。
ミリアさんも興味なさそうに黙々と食べていた。
「そういえば、その鎧が“ジェスト”とか言ってたとか……」
「その話、本当……っ!?」
さっきまで無関心だったミリアさんが、突然ファナさんの両腕を掴んだ。
「ひっ……は、はい……噂では……」
ファナさんは目を丸くして固まっている。
「カナちゃん、悪いけど私すぐガラクタ屋に行ってくるわ!」
「あっ、待ってください! 私も行きます!」
私は急いで残りの料理をかき込み、代金を払ってミリアさんを追いかけた。
◆◆◆
ガラクタ屋に着くと、店の外には人だかりができていた。
例の“動く鎧”を見ようと集まっているらしい。
店主は疲れ切った顔で店先に座り込んでいた。
そんな中、ミリアさんは迷いなく店内へ。
私も人混みをかき分けて後を追う。
「あら、カナちゃんも来たの?」
「はぁ……はぁ……はい……。動く鎧ってどんなのか気になって……」
走ってきたので息が上がる。
「動く鎧ってのは、大体リビングアーマーよ」
「リビングアーマー……?」
「鎧に低級霊を憑依させて使役する番兵みたいなもの。並の冒険者よりよっぽど強いわ」
「な、なるほど……」
「多分、冒険者が気づかずにここへ売りに来たんでしょうね」
店内を見渡すと、隅に青い鎧が立っていた。
高さは二メートルほど。
どこかで見た覚えがある。
(前に来たとき、冒険者の人たちが荷車から降ろしてた鎧……?)
そのとき――
「……ジェスト?」
ミリアさんが声をかけた。
鎧がピクリと動く。
(う、動いた……!?)
『その声は……ミリアか……?』
鎧の中から声がした。
(喋った……!?)
「ええ、そうよ。あなた、昔私たちと旅してたジェストなの……?」
『ああ、そうだ。それよりここはどこだ?薄暗くて埃っぽいが……』
「ここはラウルのガラクタ屋。あなたは“ガラクタ”として売られてきたのよ」
『ははは!俺がガラクタ?冗談だろ! 俺はれっきとした人間だぞ!』
「何言ってるの。今のあなた、リビングアーマーと大差ないわよ?」
ミリアさんは姿見を鎧の前に置いた。
『ん……?んん……? うえぇぇぇっ!? 俺、鎧になってる!?』
「呆れた、今気づいたの……?」
『いや、つい最近目が覚めたばかりでな!それより中どうなってる!? ミリア、見てくれ!』
鎧は頭部を外して見せた。
中は空っぽ。
「ふむ……空ね。後ろ首の内側に呪印がある。これが鎧とあなたの魂を結びつけてるんでしょう」
『なんてこった……!トラップにかかったと思ったら、気づいたらリビングアーマーかよ……!』
鎧――いや、ジェストさんは頭を抱え込んだ。
抱えているのは自分の頭だけど。
「あなたが行方不明になってから、もう百年くらい経ってるわよ」
『ひ、百年……!?あの冒険が終わったら宝くじを換金するつもりだったのに……!』
「詳しい話はグレンのところで聞きましょ。ほら、カナちゃん、ジェスト、行くわよ」
『あ、ああ……』
こうして私たちは、ガラクタ屋を後にし、ジェストさんを連れて冒険者ギルドへ向かった。
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