最初の仲間
―ミリア―
気がつけば、私たちは完全に狼の群れに囲まれていた。
ざっと二十匹ほどかしら……?
まあ、私にとっては大した数じゃないけれど。
それより――あの娘はどうかしら。
普通の新人なら、この状況だけで腰を抜かして震えるもの。
けれど、カナちゃんの表情を見て私は思わず目を見張った。
(怯えていない……?)
むしろ、狼たちを真っ直ぐに見据えている。
次の瞬間、カナちゃんは地を蹴り、正面の狼を一撃で斬り伏せた。
続けざまに襲いかかる狼たちを、剣と盾で次々と捌いていく。
しかも盾を“防御だけでなく打撃武器として使う”という発想――新人ではまず見ない戦い方だ。
「ミリアさん!援護お願いします!」
「……っ! 分かったわ!」
カナちゃんの声で我に返る。
見惚れている場合じゃない。
私は魔力弓を構え、カナちゃんの死角から迫る狼を光の矢で射抜き、自分に向かってくる狼も次々と倒していく。
カナちゃんは返り血を浴びても一切怯まず、冷静に、確実に狼を仕留めていった。
そして――
わずかなかすり傷こそあれ、致命傷ひとつ負わずに、二十匹近い狼を全滅させてしまった。
何匹かは逃げたようだけど、追う必要はない。
気づけば、私たちの周囲には狼の死体が積み上がっていた。
「ふぅ……ミリアさん、このくらいでいいでしょうか……?」
カナちゃんは剣についた血を払って鞘に収める。
「……そうね。二十匹以上倒したし、十分よ」
新人とは思えない技量。
ディンくんに一撃を入れたという話も、どうやら本当らしい。
ディンくんの実力は私もよく知っている。
この街でも屈指の実力者で、彼に一撃を入れるのは簡単じゃない。
(この娘……本当に伸びるわね)
「さて、カナちゃん。狼の死体を持って帰って報酬をもらいましょう」
「それなら、私が――」
「いいのよ。カナちゃんは十分頑張ったんだから。『ハング・ストリング』!」
魔法のロープが現れ、狼の死体をまとめて引っ張り上げる。
さらに浮遊魔法を重ねれば、重さなんて関係ない。
私は狼の死体をすべて浮かせ、魔法のロープで引きながらカナちゃんと共にギルドへ戻った。
◆◆◆
「狼を倒してきたわよ」
受付嬢に狼の死体を見せる。
「え……えっと……確かにありますね。では、こちらが報酬金です」
「ありがと。カナちゃん、はいこれ」
報酬金の半分、1万エントをカナちゃんに渡す。
「おや?ミリアちゃん、今日はスケベ通りの店はどうしたんだい?」
駆け出しの冒険者らしき男が声をかけてきた。
「今日から冒険者に戻ったのよ」
「へぇ~。じゃあ、この狼もミリアちゃんが倒したのか?」
「いいえ。これは私とこの娘、二人で倒したのよ!」
私はカナちゃんの腰を軽く叩いて見せる。
「痛っ……! ちょっとミリアさん、強いですよ……!」
さっきまで狼を相手にしていた時とは違い、今は年相応の女の子の顔だ。
「ははは、冗談がうまいな! こんな娘がこんな数の狼を倒せるわけないだろ!」
「そう?じゃあ今からでも狼二十匹のど真ん中にあなたを置いてきてあげましょうか。仲間を殺されたばかりで相当気が立っているでしょうね。……あなたは生きて帰れるかしらね?」
「……狼二十匹……?」
男は青ざめた。
「さて、受付のお嬢さん。私ミリアは今日付けで、このカナちゃんとパーティを組むとグレンに伝えておいて」
「はい! 承知しました!」
こうして――
私が冒険者に復帰して最初に組んだパーティメンバーは、将来が楽しみな新人冒険者となった。
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