ミリア
ミリアさんは私やアルトさんたちには目もくれず、まっすぐ受付へ向かい、ティアさんの前に立った。
「ごめんなさい、グレンはいるかしら?」
「ギルドマスターのグレンさんですか?」
「ええ。ミリアが来たと伝えてもらえる?」
「分かりました。少々お待ちください」
ティアさんが奥へ引っ込み、しばらくするとグレンさんが姿を見せた。
「ミリア、俺に用があると聞いたが?」
「突然悪いわね。実は冒険者に復帰しようと思って。再登録、いいかしら?」
「構わんが……スケ嬢のほうはどうした?」
「店長が急に店を閉めるって言い出してね。そろそろ飽きてきたし、また冒険者でもしようかなって」
「なるほどな。一人でやるつもりか?」
「そうねぇ……どこかおすすめのパーティってある?」
「あると言えばある。ちょうどメンバーを探してるやつが、そこに一人」
そう言って、グレンさんは私を指さした。
「え……私?」
「カナちゃん?グレン、あの子まだ新人でしょ。悪いけど、私は新人のお守りをしたいわけじゃないの」
「まあそう言うな。あの子はつい先日、ディンにしごかれて、ヤツに一撃を入れた子だ」
「へぇ……。なら本物かどうか、試してみたいわね」
「なら、これを二人で受けてみるか。カナちゃん、こっちへ」
呼ばれて近づくと、グレンさんは一枚の依頼書を見せてきた。
「狼の討伐依頼……?」
依頼書にはこう書かれていた。
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狼討伐依頼
依頼主:ラウルの街
報酬金:2万エント
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「ああ。最近、近くの森で狼が増えてる。二十頭ほど間引いてほしいそうだ。どうする?」
「まあ、狼を余裕で倒せるくらいなら最低限ってところかしら。でも、逆に言えば狼程度に苦戦するようなら話にならないわよ?」
「だそうだが、カナちゃん自身はどうだ?」
「大丈夫です。やれます」
「いいわ。それなら受けるわ。その代わり、足を引っ張らないでね。じゃあ夜に西門で会いましょう」
ミリアさんはそう言ってギルドを後にした。
(図書館で会ったときと全然雰囲気違う……)
私はそう思いながら、ギルドを去っていくミリアさんの背中を見つめていた。
◆◆◆
その夜。
私は西門へ向かった。
以前は狼に殺されかけたけど、今の私なら大丈夫なはず。
「あら、もう来てたのね」
振り向くと、白銀のライトアーマーを身にまとい、弓を背負ったミリアさんが立っていた。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
二人で門を抜け、森へ入る。
---
森に入ってしばらくすると、周囲から狼の気配が漂ってきた。
ーアオォォン……!ー
近くで狼の声が響き、それに呼応するようにあちこちから遠吠えが返ってくる。
私は剣を抜き、周囲を警戒する。
ミリアさんも弓を構えるが――弦がない。
よく見ると矢も持っていない。
(どういうつもり……?)
そう思った瞬間、茂みが揺れ、一匹の狼が飛びかかってきた。
「はっ!」
飛びかかりをかわし、斬りつける。
狼は悲鳴を上げて地面に落ち、そのまま動かなくなった。
(次……!)
前方の茂みが揺れ、五、六頭の狼が一斉に襲いかかってくる。
上から、下から、左右から――四方八方だ。
私は左斜後ろへ下がりながら一頭の首を刎ねる。
続けざまに二頭が飛びかかってきたため、一頭を盾で弾き飛ばし、もう一頭を剣で突き刺す。
倒れた狼を振り払い、先ほど弾いた狼にもとどめを刺す。
残りの四頭も、冷静に対処しながら一頭ずつ仕留めていった。
(ディンさんに鍛えてもらったおかげで、体が勝手に動く……!)
ディンさんの剣速に比べたら、狼の動きは遅く感じる。
「はあっ!」
最後の一匹を倒し、周囲を見渡す。
まだ気配はあるが、こちらを警戒しているのか姿を見せない。
「ミリアさん、もう少し奥へ行きましょう」
「いいけど……私の出番、少しは残しておいてほしいわ」
ミリアさんは肩をすくめながらついてくる。
---
森の奥へ進むと、狼が姿を現した。
だが、すぐには襲ってこない。警戒しているようだ。
(行くべきか……? いや、囲まれたら厄介か……)
「『ウインドブレード』!」
真空の刃が走り、目の前の狼を一瞬で切り裂いた。
その直後――
「ミリアさんっ!?」
後ろから四、五頭の狼がミリアさんへ飛びかかる。
「私も舐められたものね!」
ミリアさんが弓を構えると、青い光が弦となって張られ、引いた瞬間、光の矢が生まれた。
「はっ!」
放たれた矢は空中で五本に分裂し、狼たちを一斉に射抜く。
狼たちは弾かれたように倒れ、そのまま動かなくなった。
「驚いた?これは魔力弓よ。使い手の技量次第で矢を自在に操れるの。さ、あと七頭くらいかしら? 頑張りましょ」
(す、すごい……!)
感心していると、周囲から気配が一斉に集まってくる。
次の瞬間――
私たちを取り囲むように、二十頭ほどの狼が姿を現すと、完全に包囲されてしまっていた。
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