ディンとの決着
次の日。
すっかり体調の戻った私は、訓練場所である東側の平原へ向かった。
すでにディンさんが来ていた。
「ディンさん、昨日はすみません。熱を出してしまって……」
「気にするな。今日はもう平気か?」
「はい!」
「よし、まずは素振りだ!」
私とディンさんは、いつものように素振り五千回をこなし、模擬戦に入った。
「行きます!」
「来い!」
走り出し、木剣を構える。
ディンさんの構えから、横薙ぎが来ると読めた。
(昨日考えたフェイント……試してみる!)
「はっ!」
予想通り、ディンさんは横に振り払ってくる。
私は斬りかかるふりをして、スライディングで左側へ滑り込んだ。
剣が頭すれすれを通り過ぎ、私は背後へ回り込む。
「なっ……!?」
「はあっ!」
立ち上がりざま、下から木剣を振り上げる。
しかし――
「残念!」
紙一重で避けられた。
「当たったと思ったのに……!」
「まさかそんな手を使うとはな。面白い」
「次こそ当てます!」
「ああ、来い!」
ディンさんが素早く斬り込んでくる。
私はどうにか受け止めた。
(少しずつ……動きが見えてきた……!)
「ならこれはどうだ!」
「くっ……! うっ……!」
連撃に押されるが、五回に二回は防げるようになっていた。
(癖が分かってきた……! 時々、力を込めた一撃を放つ……その瞬間、ほんの少し隙ができる!)
「どうしたカナ!守ってばかりじゃ勝てないぞ!」
また力のこもった袈裟斬りが来る。
(ここだ……!)
「はあっ!!」
私はその一撃を弾き返し、素早く腹部へ木剣を叩き込んだ。
「ぐっ……!」
ディンさんが膝をつく。
「や……やった……!?」
「すげぇ……本当に当てやがった……っ!?」
アルトさんの驚いた声が聞こえる。
「まさか本当に当てられるとはな……」
「す、すみません! 大丈夫ですか?」
「ん?ああ、このくらい平気だ。それより見事だったぞ」
「ありがとうございます!それで……お願いがあるんです」
「頼み?」
「一度でいいので、ディンさんの“本気”と戦ってみたいんです。どこまで通用するのか知りたくて……!」
「……はぁ。分かったよ」
ディンさんはため息をつきつつ、木剣を構えた。
「お、おいカナちゃん!本気はやめとけって!」
「そうよ!本当に危ないわよ!」
アルトさんとセーラさんが止めるが、私は首を振った。
「お願いします、ディンさん」
「分かった。行くぞ!」
ディンさんが、さっきとは比べ物にならない速さで迫る。
「はあっ!」
木剣が横に薙ぎ払われる。
「きゃっ……!」
受け止めた瞬間、私の木剣は砕け、胸当ても割れ、私は後ろへ吹き飛ばされた。
「おい、大丈夫か!」
ディンさんが駆け寄る。
「いたた……でも、大丈夫です……」
ゆっくり起き上がると――
ディンさんの視線が、なぜか私の胸元に釘付けになっていた。
「……ディンさん?」
「い、いや……その……」
視線を下げると、砕けた胸当てのせいで服が破れ、下着が少し見えてしまっていた。
「きゃああああああっ!!」
「ぐはっ!!」
私は反射的に拳を振り抜き、ディンさんの顔面にクリーンヒットさせてしまった。
◆◆◆
「おいディン……その顔どうした?」
ギルドに戻ると、グレンさんが目を丸くした。
「……カナに殴られた」
グレンさんが私を見る。
私は布で胸元を押さえながら、そっと目をそらした。
「ディン、どうせお前がスケベ心を出してカナちゃんをひん剥こうとしたんだろ……。それなら殴られて当然だ」
「違うって! 事故だって言ってるだろ!」
「ディンさんに……下着を見られました……」
「お前は黙ってろカナぁぁぁ……!」
ディンさんは頭を抱えた。
「ま、事故だろうと何だろうと、女の子の胸を見たんならぶん殴られても文句は言えねえよな……、ディン」
「はいはい……」
「で、訓練はどうだった?」
「腹に一発もらったよ。いい一撃だった」
グレンさんの問にディンさんはお腹を擦りながらにこやかな笑みを浮かべていた。
「ほう、ディンに当てたのか。すごいじゃないかカナちゃん」
「い、いえ……まぐれで……!」
「まぐれでも当てたのは事実だ。……ディン、訓練の評価は?」
「ああ。文句なしに合格だ」
「ディンさん……ありがとうございます!」
今まで訓練に付き合ってくれたディンさんに深く頭を下げる。
「さ、カナちゃん。冒険者カードを出してくれ。ランクをEに上げてやる」
冒険者カードを渡すと、グレンさんはカードに手をかざす。
すると何かの魔法なのだろうか……?冒険者ランクの「F」が「E」へと変わった。
「今日から君はEランクの冒険者だ」
カードを受け取ると、少し重みが増した気がした。
「よし、報告も終わったし……カナ、行くぞ」
「え? どこへ?」
「お前の防具を壊しちまったからな。買ってやるよ」
「ディンさん……ありがとうございます!」
その後、私は新しい旅人の服と鉄の胸当てを買ってもらった。
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