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生還

 一瞬、何が起きたのか分からなかった。

 ただ――息ができる。


「大丈夫っ!?」


「サラ……さん……?」


 聞こえた声は幻聴ではなかった。

 サラさんが駆けつけてくれていた。


 狼たちは突然の乱入者に驚き、私の上から離れていく。

 低い唸り声を上げ、サラさんへと向き直った。


 サラさんは両手のショートソードを構え、流れるような動きで迫る狼たちを次々といなしていく。


「ディン! アルト! セーラ! こっちに居たよ! 早く来て!」


 サラさんの声に応じて、複数の足音が近づいてきた。


「サラ! カナは生きてるか!」


「まだ意識はあるよ!」


「サラ! ディン! 私が閃光魔法で狼たちの目を眩ませるわ!」


「分かった! その隙に俺がカナを抱える! サラは援護だ!」


「了解!」


「サラ! ディンとカナちゃんが離れたら矢で牽制するぞ! 当たるなよ!」


「アルト! 誰に言ってるの!? 私が味方の矢に当たるわけないでしょ!」


「行くわよ! 『閃光弾フラッシュボム』!」


 セーラさんの魔法が炸裂し、強烈な光が辺りを包んだ。

 目が眩むが、痛みはない。ただの目くらましだ。


「よし、行くぞ!」


 光が広がった直後、私は誰かに抱き上げられた。

 ディンさんだ。


「おい……? セーラの魔法で狼たち逃げたな。ディン、また来る前に戻ろうぜ」


「カナちゃんの剣は拾ったよ」


「ディン、カナちゃんは?」


「ああ、酷いケガをしているが意識はある。セーラ、街に着いたら回復頼む」


「ディンさん……ごめんなさい……私……」


「喋るな。傷に触る。まずは戻るぞ」


 私はディンさんに抱えられ、命からがら街へ戻った。



◆◆◆



「バカかお前はっ!!」


「っ!」


 街に戻り、セーラさんの魔法で治療してもらった直後。

 私はディンさんに思い切り叱られ、尻もちをついた。


「さっき言ったばかりだろ! 調子に乗って過信したやつが死ぬって!」


「すみませんでした……」


「一人で狼くらい余裕だと思ったんだろ!」


「……はい」


「何が“はい”だ! お前のせいで何人が動いたと思ってる!」


 胸ぐらを掴まれ、私は何も言い返せなかった。


 ファナさんが私の不在に気づき、

 別の冒険者が「西門に向かうカナを見た」と伝え、“夜の森に行ったのでは”という話になり――グレンさんやディンさんたち、そして多くの冒険者が捜索に出てくれたという。


 街の中を探してくれた人もいたらしい。


 その話を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。


「うう……ひっく……本当に……すみませんでした……」


 恐怖と申し訳なさが一気に込み上げ、涙が溢れた。


「何にしろ……無事で良かった」


「うう……っ、ぐす……! うあぁぁぁぁん……!」


 ディンさんは何も言わず、そっと抱きしめてくれた。


「じゃあ、みんなに知らせるためにフラッシュボム撃つわよ」


「ああ、頼む」


 セーラさんが上空に光を放ち、私は落ち着くまで抱きしめられていた。



◆◆◆



 冒険者ギルドに戻ると、グレンさんをはじめ、捜索に出てくれた冒険者たちが待っていた。


「みなさん……ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ありませんでした……!」


「……カナちゃん、怪我はなかったか?」


 怒鳴られると思っていた。

 罵倒されると思っていた。


 なのに返ってきたのは、優しい声だった。


「え……? あ……怪我はセーラさんに治してもらいました……」


「そうか。無事で良かった」


「あの……皆さん、怒らないんですか……?」


「カナちゃんはもうディンに散々怒られただろ? 頬に跡が残ってる」


「はい……ディンさんにたくさん叱ってもらいました……」


「なら、俺たちはそれ以上言うことはない」


「後輩の心配をするのも先輩の役目さ。だが次は無茶するなよ」


「はい……!」


「カナちゃん、一人でやっていくには限度がある。仲間を探すことも考えてみろ」


 グレンさんが腕を組んで言う。


「なら、俺のパーティに入るか?」


「ディンさんの申し出は嬉しいのですが……自分に合うパーティを探してみたいです」


「理由を聞いてもいいか?」


「はい。皆さんに頼りすぎてしまって……私自身が成長できない気がして」


「なるほどな。分かった。いい仲間が見つかるといいな」


「申し訳ありません……」


「気にするな」


 ――私のパーティ。

 私はどんな人と組むことになるんだろう。


 そんなことを考えながら、夜は更けていった。

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