近くの森
―カナ―
グレンさんと別れた私は、まず依頼書を見て期日を確認した。
どちらも「今日から5日以内」に集めればいいらしい。
冒険者ギルドを出て西へしばらく歩くと、高さ5メートルほどの壁が見えてきた。
その延長線上には門があり、近づくと数人の門番が立っている。
「おっと、そこのお嬢さん。一旦ストップだ」
門番の一人が手を上げて止めてきた。
「見たところ冒険者のようだが、見かけない顔だな。名前と外に出る用件を聞かせてもらえるかな?一応決まりなんでね」
どうやら門を通るときは名前と目的を伝える必要があるらしい。
「えっと、私の名前はカナです。近くの森に薬草とホーンラビットの角を取りに行きたいんです」
私は冒険者カードを見せながら答えた。
「なるほど、新人か。街の外の地図は持ってるか?持ってないならこれをやろう」
門番から街の外の地図をもらった!
「それと、薬草集めなら何か入れるものが必要だ。見たところ鞄も何も持ってないようだが、集めた薬草や角はどうやって持つつもりだ?」
「う……」
確かに、入れるものがないと不便だ。
手で持つにしても限界があるし、両手が塞がるのは危険だ。
「入れ物がないなら雑貨屋で買っていくといい」
「分かりました!」
私は一度、職人通りの雑貨屋へ向かうことにした。
---
雑貨屋に着くと、まずは鞄を見てみた。
大きいもの、小さいもの、安いもの、高いもの……種類が多い。
一番安いのは小さなポーチで1,000エント。
でも、これではほとんど入らない。
一番高いのは50万エントの「魔法のポーチ」。
どんな物でも大量に入るらしいけど、当然買えない。
手頃なのは3,500エントの大きなリュック。
でも、ちょっと迷う。
「他に何かないかな~……」
眉間にしわを寄せながら見ていると、鞄とは別の棚に“籠”を見つけた。
背負式の木のカゴ:800エント
値段も手頃で、物もたくさん入りそうだ。
「これにしよう!」
私は木のカゴを購入し、再び防護壁の門へ向かった。
◆◆◆
門を抜け、無事に街の外へ出た私は、近くの森へとやって来た。
木漏れ日が差し込み、鳥や動物の声が響く。
思ったよりも穏やかな雰囲気だ。
門番には「木のカゴで行くのか」と呆れられたけど、実用性ならこれが一番だと思う。
「そんなことより薬草は……」
グレンさんにもらった見本を見ながら探すと、森のあちこちに生えていた。
私はカゴを下ろし、薬草を摘んでは入れていく。
「ふぅ……結構集まったかな?」
数十分でカゴの四分の一ほどが薬草で埋まった。
「ん~……ちょっと休憩しようかな」
腰を伸ばして立ち上がると――目が合った。
額に小さな角が生えた、緑色のウサギ。
(あれがホーンラビット……?)
角を採るには倒さなければならない。
倒すということは、この剣で……あのウサギを……。
「だめだ……!私にはできない……!」
あんな可愛いウサギを倒すなんて無理だ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ホーンラビットは近づいてきて、薬草をもぐもぐ食べ始めた。
「か、可愛い……っ!」
試しにカゴの薬草を差し出すと、手から食べてくれた。
「食べた!可愛い♡」
気づけば、私の周りには数匹のホーンラビットが集まっていた。
◆◆◆
数十分後
ホーンラビットたちは満足したのか去っていき――
カゴの薬草は全部、彼らの餌になっていた。
「…………」
私は空になったカゴを見つめ、しばらく固まっていた。
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