依頼達成
私は今、途方に暮れていた……。
せっかく集めた薬草は全部ホーンラビットに食べられ、そのホーンラビットたちもどこかへ去ってしまった。
「ど……どうしよう……」
このまま手ぶらで帰ったら、期日が残っているとはいえ何か言われるかもしれない。
幸い、まだ夕暮れまで時間はある。
まずは薬草をもう一度集めることにした。
「ふう……どうにか、さっきくらいは集まったかな」
十数分ほど必死に集め、どうにかカゴの四分の一ほど薬草を確保できた。
あとはホーンラビット……。
こちらの様子を伺っている一匹を見つけ、私は覚悟を決めて剣を抜いた。
(か……可哀想だけど……)
「……はっ!」
振り下ろした剣がホーンラビットを斬りつける。
その瞬間、生き物を斬ったという嫌な手応えが腕に伝わった。
仕留めたかと思ったが、ホーンラビットにはまだ息があった。
苦しそうに背中を庇いながら逃げようとする姿に胸が痛む。
(変に手加減したら、余計に苦しませるだけなんだ……)
「痛かったよね……。私が変に手加減したばかりに……ごめんね」
私は謝りながら、とどめを刺した。
生まれて初めて、動物の命を奪った瞬間だった。
「あとは……角を……」
角を切り取ろうとするが、小さくて剣ではとてもやりにくい。
ナイフがあればいいのに……と後悔しながら、四苦八苦してどうにか切り取った。
ホーンラビットと角をカゴに入れ、その後も数匹倒していった。
◆◆◆
「グレンさん、戻りました!」
どれくらい倒しただろうか。
カゴがホーンラビットでいっぱいになったので、私は冒険者ギルドへ戻ってきた。
街へ戻るときは、開いている門から入り、門番に名前を告げる決まりらしい。
日中は門が開いているが、夜は基本的に閉まると教えてもらった。
「おお、カナちゃん戻ったか……って、そのカゴは何だ?」
門番だけでなく、グレンさんもカゴの中身に呆れ気味だ。
「そんなことより、薬草とホーンラビットの角は集まったか?」
「はい、これでどうですか?」
「確かに薬草と角だ。よくやったな! ほら、報酬だ」
薬草と角を渡すと、グレンさんは優しい笑みを浮かべ、報酬の600エントを手渡してくれた。
「あと、ホーンラビットも持ってきました」
「カナちゃん……悪いが、これはあまり買い取れん。欲しいのは肉であって、ホーンラビットそのものじゃない。今回は特別に買い取るが、次からは頭と毛皮と内臓を除けておいてくれ」
渋い顔で200エントを渡される。
(やっぱり、ある程度は捌いておいたほうがいいんだ……。ナイフ、必要だな……)
「ホーンラビットは旅の食料にもなる。捌き方を覚えておいて損はない。練習ついでだ、カナちゃん、これを捌いてくれ」
ナイフを借り、教わりながら持ち帰ったホーンラビットをすべて捌いていった。
---
「おわった……!」
捌き始めてから数時間後、ようやく全てを捌き終えた。
「ご苦労だったな。ホーンラビットを捌いた礼として、メシを奢ってやるよ」
「えっ!? いいんですかっ!」
「ああ、もちろんだ。その代わりホーンラビットの肉だがな」
やっぱりそうなるのか……。
まあ、あれだけ捌いたんだから当然か。
「ウサギ肉の香草焼きにしてやるから、少し待ってな」
グレンさんはニヤリと笑い、厨房へ向かった。
◆◆◆
「はあ……疲れた……っ!」
食事とお風呂を終え、部屋に戻った私はベッドへ倒れ込んだ。
元の世界に戻る手がかりを探すため、とりあえず冒険者にはなれた。
だけど、これからどう手がかりを探せばいいのか、まったく見当がつかない。
この街のことさえまだよく分かっていないのに、この世界となると尚更だ。
分からないことだらけで、何が分からないのかすら分からない。
まるで、海のど真ん中に落とした小さな針を探すようなものだ。
「ふぁ……」
考えているうちにあくびが出る。
今は目の前のことを一つずつこなしていこう――そう思いながら、私は眠りについた。
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