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グレンとミリア

―グレン―


 カナちゃんを送り出したあと、銀髪のポニーテールを揺らした女エルフが、いつの間にかホール奥から姿を現し、ふらりと俺の元へ歩いてきた。


「鬼神のグレンが、あの娘にはずいぶん甘いのね」


 鬼神のグレン――。

 それは俺が冒険者として名を馳せていた頃、いつの間にか付けられていた二つ名だ。


「その名はやめろ。とうの昔に捨てた名だ。それに、俺自身が名乗ったことは一度もない。それより……何の用だ、ミリア。冒険者に復帰でもするのか?」


「別に?私はただ普通に客として来てただけよ。そしたら面白いものが見れたから、ちょっとからかってやろうかなって思っただけ」


 ミリア――。

 300歳ほどの女エルフで、かつて俺と同じパーティで冒険していた仲間の一人だ。


 今では冒険者を辞め、スケベ通りの嬢――通称スケ嬢として働いている。

 冒険者たちの話を聞く限りではどうやら人気も高いらしい。


「それにしても、あなたがあの娘を見る目……父親みたいだったわよ。あの娘、あなたの孫か何か?」


「あの娘は、どういうわけか別の世界から来たらしくてな。若い上に身寄りもない。だから少し手を貸してやってるだけだ」


「ふぅん……別の世界ねぇ」


「ミリア、お前……カナちゃんに興味があるのか?」


「あの娘、カナちゃんって言うのね。前にスケベ通りに迷い込んできたことがあったのよ。可愛い子だな、くらいにしか思ってないわ」


「……ミリア。カナちゃんをスケ嬢に引き込むなよ」


「誘ったりはしないわよ。でも、あの初心っぽさは可愛いわね。つまみ食いくらいはしてみたいけど?」


 ミリアが戯けた笑みを浮かべる。

 俺は無言で睨みつけた。


 こいつは男も女もいける両刀で、現役時代は気に入った相手を片っ端から食い散らかしていた。

 まるでサキュバスみたいな女だ。


「お~怖い怖い。あの娘に手を出してグレンに目をつけられたら厄介だし、やめておくわ。それより……ジェストの手掛かりは見つかった?」


「……いや、まだだ」


 ジェスト――。

 俺たちが冒険者として現役だった頃、共にパーティを組んでいた若い人間の男だ。


 大剣を軽々と振り回す腕力と、無鉄砲だが憎めない性格。

 俺もミリアも気に入っていた。


 だが、あるダンジョンでトラップにかかり、転移魔法のようなものに巻き込まれて姿を消した。


 もう随分昔の話だ。

 生きてはいないだろうが……せめて骨だけでも拾ってやりたい。


「……そう。それで今は、あのカナちゃんに入れ込んでるわけね」


「……そんなんじゃねえ」


 口では否定したが、カナちゃんを見ていると、どこかジェストを思い出してしまうのも事実だった。


「そういうことにしておくわ。それじゃ、またね」


「おう。また来いよ」


 ミリアはヒラヒラと手を振りながら、冒険者ギルドを後にした。

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