幕間6.裏社会の新たな出会い-1
ヒロと別れて、歩いて帰宅する
ちょっとばかし道を外れたりして、あえての遠回り
歩いているだけでカロリーを消化しきれないけど、しないよりはカロリーがマシになるだろう
ちょっとスマホが震えて確認してみると、家に帰ったとの連絡があった
セイも普通に家でゲームをやっているらしい
「もっと歩いて来る」と連絡をして2人の返事を見たらまた歩くの再開する
一度ゲームセンターに行き、パンチングを行うタイプのゲームで汗を流しカロリーをさらに消費する
……けど、もうちょっと痩せたいな
そう思ってもっと回り道をして行く
まあ、まだ時間的には滅茶苦茶余裕がある
公園とかを軽く走っていくのもいいだろう
そう思って、近道の路地の方へ向かう
誰もいない道を歩いて行き……
「止まりなさい」
「……っ!?」
路地に入って真ん中ぐらいに着いた瞬間に突然背後から声をかけられた!?
おかしい!?足音とか人の気配がなかったし近くに人はいなかったはずだ!?
本当だったら咄嗟に前に飛び出しそうになったけど、恐怖なのか普通に動けない
フルダイブゲームだったら無理をしてでも逃げたいけど、ここは現代
言われた通り、動かないほうがいいだろう……
てか止まりなさいってなんだ!?
「安心して、別にあなたに酷い目に合わせないわ
ちょっと会話をしたいのよ」
声は女性?
でも聞き覚えは無いし、知り合いとかではない
というか、そんなおふざけ合いができる女性なんて妹しかいない
「だから、一旦落ちついてこっちを振り向いて欲しいの」
本当だったら色々と質問をしたい
けど、手話をしようにも身振り手振りしようにも筆談しようにも手を動かさないといけない
手を動かしたら、相手からの反撃が来る可能性もある
言われた通りゆっくりを振り向いた
そこには、1人の女性が立っていた
なんて事の無い、黄髪の長髪の女性
街中なのにエプロンを着けていて細目である
なにか包容力を感じると思ったけど、なにか怖いものを感じてしまう
見覚えがある気がしたけど、やっぱり知らない人だ
まずは質問をしたいけど、手とか動かしてもいいんだろうか?
「喋れないんだよね?動くのが怖いの?
大丈夫、何もしないから」
そう言って両手に何も持っていないアピールをしている
俺が喋れないのを見抜いたのか?!それとも知っているのか!?
恐怖で動きが非常に硬くなっているけど、必死に動かして
ペンとホワイトボードを持って書く
手が非常に震えているけど、何とか文字にする
「(な、何の用ですか?
それと誰ですか?
なんで、俺が喋れないことを知っているのですか?)」
「そうね……単刀直入に言うわ
まず私の名前は新田 包海クラインフライカンパニーの人よ
あなたのしているバイトの関係者でもあるからあなた……三海山の事も知っているわ」
バイトの?でも仕事を始めてから会った記憶がないし……そもそも、ダイブ装置の関係者って男性しかいなかった気がする、食堂にでもいたのだろうか?
名前まで把握されているけどいったい?
「(え?バイト職場の人?何かお知らせしたいことがあるのですか?
それとも仕事の関係で不都合か俺の不手際があったんですか?)」
「そうゆう悪いニュースじゃないわ
色々と話したいことはあるんだけど、場所を移動してもいいかしら?」
場所を移動!?どこに!?
これ以上に人気のない場所にでも行くのか!?
「怯えなくてもいいわ、私の自宅に行くだけよ」
「(えっと……俺に選択権はありますか?)」
「ハイもイイエも自由でいいわ
でも、その時は後日になるだけよ」
それって、選択権が無いって言う事じゃないのか?
新田さんの家に行くって悪い意味でやりたい放題されるのでは?
「にしても、不思議ねあなた?」
「(何がですか?)」
「会社の人から聞いたけど『恐怖しても辛い目に遭っても、それを堪能してしまう性格』
今のあなたって……やっぱり堪能している?」
「(そう見えますか?)」
「うん、恐怖で口角が上がるとあるけど、それとは違った笑い方をしているわ」
「……」
片手で自分の口に触れてみる
明らかに歪な感じに笑ってしまうような感じになっている
……たしかに新田さんの言っていた通り、一般人だったら恐怖してしまう状況
命の危険を感じるような、まるで犯罪に巻き込まれたような状況
それなのに……「これもいい」と思ってしまう自分がいる
「(不快に思われたのならすいません、ちょっとこういった体質なので)」
「分かったわ」
そう言って……普通に後ろを向いて、路地裏に置いてある寂しげな雰囲気のする自販機の所まで行って、1つ購入した
後ろを向いている間に逃げようとも考えたけど、無防備な様子になぜかちょっと警戒心は溶ける雰囲気がしてその場で待ってしまった
戻ってくると、缶のお茶を購入したようだ……なんで急に
「これ飲んで落ち着くかしら?今寒いから温かいわよ」
「(あ、ああ、いただきます)」
渡されたものだけど、そこで買ったものだし危ない所は無いだろう
蓋を開けて、一口
お茶の渋みと温かいものが体内に入り込んで落ち着くような雰囲気がしてきた
ちょっと、混乱している所もあったけど
安らかな気持ちになったのか思考が結構スッキリしてくる
「私にできる、あなたから信じてもらえる方法の精一杯はこれで限界よ
それで、場所を移動してもいいかしら?」
「(えっと、その前に2つ質問なんですが
まず『色々と話したい』と言ってましたが、どうしてもここで話せないことですか?
それと移動方法って何ですか?晩御飯までに家に帰らないといけないので車が必要な距離だと時間がなくて)」
「1つ目の方は、どうしてもここで話すことはできないわ、誰か聞いているかも分からない守秘義務な話だし
2つ目の方は安心して欲しいわ、歩きで行く予定だから」
「(わ、分かりました
でもちょっと、ここで考えさせてください)」
「いいわよ、私はいくらでも時間があるからゆっくり考えてもいいわ」
……もし普通に知っている人だったら、普通について行ってる可能性があるだろう
今は晩御飯までに時間が結構あるし行くことはできる
相手の新田さんは「話をしたい」とは言っているけど、本当に話だけで終わるのだろうか?
「(その、質問が多くてすいません
会社の話でしたら、今から会社に行けばいいのではないのでしょうか?
ちょっと休日出勤みたいなものになりそうだけど……)」
「ここからだと遠いし晩御飯に間に合わない可能性がある、それにあなたの仕事の日ではないから空いてないわ、私も単独で入れる訳でではないわ」
まあ、確かに
バスに乗って行かなきゃいけないし、それに俺が働いているのはクラインフライカンパニーの地下深く
地上の表は開いていても、エレベーターの隠しコマンドで行ける所に急用で行けるわけないし
地上の所で裏の話は多分できない
「(話って言っても脅しとかじゃないですよね?)」
「そんなことはないわ、個人的な事も含めてだけど会話をする……意味深な事はないわよ」
……でも、何か怖さはあっても敵意とか殺意は感じない
それに、段々好奇心な気持ちににもなって来た
本当に普通に会話をするだけで終わる可能性があるし
……………でも、ここで断っても後日になるだけだし
行くという選択肢しかない、どちらにしても今度の水曜日に職場で話すことになると思うし
「(分かりました、でもスマホの電源を落としておく……とか言いませんよね?)」
「言わないわ」
「(じゃあ、ついて行きます)」
「ありがとうね」
……結局ついて行くことになった、でも敵意とかそういった物は本当に感じないし
普通に交流をするみたいなそんな雰囲気を感じる
でも、ここでは話せなくて仕事の関係者……本当に何の話をするのだろうか?
同意をした後は、普通について行く
新田さんは、俺の歩く速度に合わせているのか女性にしては結構足が速く見える
道の方は……なんだ?俺の自宅に近い?
でも方角は家の方ではないし、この先って……マンション?
「(誰か家にいるんですか?
屈強な男たちが沢山とかいて俺に何かするとか)」
「そんな危ないことは無いわよ
今は誰もいないわ、少し経つと弟が帰ってくると思うわよ」
新田さんには弟がいるのか、2人で暮らしているのか?
入り口から入って2階、その途中の場所にて部屋にたどり着いたらしい
扉の前にある表札には新田包海さんと新田なつきさんの名前があった
親とかはいないのか?それとも田舎の実家からここに2人で来ているのだろうか?
新田さんが鍵で扉が開いて室内に入る
警戒をしながら入っていくが、特に危険そうな人や物は見当たらない
廊下から真っすぐ行くとダイニングキッチンがあって、真ん中にテーブルがあり周囲に色々な家具が置かれていた
……本当に普通の家の様だな?
新田さんは奥のキッチンの方に行って……
「お茶はいるかしら?紅茶もコーヒーもあるわよ」
「えっと、じゃあ紅茶をお願いします」
お茶が必要になるほど話が長くなるのか?
ちなみにコーヒー派とか紅茶派とかは特にない、その日の気分で選んでいる
そう待っていると、暖かい紅茶が入れられてテーブルに並べられた
向かい合って机に座って何となく覚悟を決めて一口飲んでみるが普通の紅茶で何か体調の変化もない
「安心したかしら?」
「(……ようやく安心したみたいです
変に疑ってすいませんでした)」
「いやいや、それは私が怪しい感じに家に呼んだのが悪いわよ
ごめんなさいね
……疑いが解けたのなら、本題に入ってもいいかしら?」
「(はい、仕事の事と言っていましたがどういった要件でしょうか?)」
「ええ、その事なんだけど」
新田さんは真剣な顔をして両手を机の上に乗せる
「まずね、話は最後まで聞いて欲しいの
話しの途中ですぐに判断して欲しくないから聞いてもらっていい?」
「(ここまで、念入りにですか?
分かりました)」
1回新田さんは深呼吸をして、話を続ける
「まずね、あなたがクラインフライカンパニーで人体実験を筆頭に色々やっているのを知っている前提で話させてもらうけど
私は
クラインフライカンパニーで雇われている殺し屋よ」
「っ!?!?!?!?!?はっぁ!?」
こ……殺し屋!?
突然のことで喉から変な音が鳴って変な呼吸をしてしまう
俺は殺されるのか?!何か俺の行動に不手際があったのか?!
「落ち着いて、殺しはしないし誰かを今から殺すことはしないよ」
「(本当、ですよね?)」
「本当よ、もういっぱい紅茶を飲むかしら?」
「(いえ、飲める気がしないので……
慌ててしまってすいません、話を最後まで聞きます)」
そうだ「話は最後まで最後まで聞いて欲しい」って言っていた
殺し屋と聞いていきなり判断をしてはいけない
「それでね?まず、あなたが心配している事だけど
あのフルダイブゲームをする前にした契約書
……あなたはしっかりと呼んでいたみたいだけど、失敗をしたわけではないから安心してね?」
「(俺は特に不手際はしてないと?)」
「そう、あの焼肉屋でちゃんと友達からの怪しまれた質問にしっかりと誤魔化せて偉いと思ったわ」
「(ど、どういたしまして)」
ってあれ?なんで焼肉屋で話したことを知っているんだ?
それにあの室内では「口で話して」はいなくて「手話で話して」いたはずなんだけど
「疑問が沢山あるのは分かるわ、あなた自身が混乱しているような気配がするし」
「(はい、今ので沢山の疑問が思い浮かびました
どれから質問したらいいか分からないぐらいでして)」
「じゃあ、私から一通り説明するわ
まず、私は殺し屋よ
でも殺人鬼とは違う……この違いは分かるかしら?」
「(それぐらいはまあ、分かります)」
殺人鬼は、人を殺す事が快楽になってなりふり構わず殺すカスのこと
「誰でも良かった」と言っておきながら弱い人しか狙わないようなクズ
でも殺し屋は「人に頼まれてお金を受け取り誰かを殺す」者だ
誰かの個人的な恨みや要人を狙うような人だ
新田さんが殺しをした様子を見たことは無いけど、なぜか寒気を感じて「本当に殺し屋が目の前にいる」という感覚になる
警察への通報……は普通に出来ない、それぐらい隙を感じない気配もするし
「それなら良かった」
「(あの、俺がターゲットで俺の事を殺しに来た……と言う訳ではないなら
なんで俺に会いに来たのですか?)」
「そうね、まだ本題に入らないけど
実はターゲットは一応あなたなのよ?」
「(え?)」
一応?ターゲットなのに殺さない?
なんで?
俺に対して「殺す」って言っているはずなのに状況が訳分からなくなってむしろ混乱してきたんだけど?
「依頼者はクラインフライカンパニーの西門社長だけど
契約内容としては、あなたが今やっているテストプレイを他の人に『都合の悪い伝えかた』をしたら消す……って内容よ、その為にあの面談の日以降ずっと観ていたのよ」
え?ずっと監視されていたって事なのか?
それって、俺の本業の守秘義務が……いや、今は考えないほうがいいかもしれない
殺し屋も守秘義務を扱いそうだけど相手の方が多分ヤバイレベルな気がするし
「(あの、それって伝えてよかったんですか?
それに、さっき友達に怪しまれた時に俺が普通に『フルダイブゲームをしていた』って言ったら殺していたってことですか?
契約書には『誰にも話さないでください』って書いてあった気がしましたし)」
「ちょっと違うわ
まず、この契約内容は脅しという意味でもあなたが都合悪くなる状況にならなければいくらでも伝えてもいいのよ、社長はあなたに対して直接的な事は言ってなかったけどね
人って、秘密にするのってずっとなのは無理なのを知っているからね」
「(は……はぁ)」
「そしてさっきの焼肉店の時に、普通に『フルダイブゲームをしている』って言って、お友達さんが肯定的に受け取っていれば何の問題もないのよ」
「(じゃあ、都合の悪い伝えかたと言うのは……)」
「あなたが契約書をしっかりと読んだうえで同意をしているのに、何か変な勘違いをして『あの施設で人体実験をさせられている!助けて』とか言ってこっちの会社の都合が悪くなるようなことを言って通報する……なんて流れになったら
消してたわ」
その言葉、新田さんは何かと柔らかいような言い方をしていていたけど
「消してたわ」の言葉はひどく冷たく聞こえた
実例を見ていないはずなのに本物に見えてしまう
「(その、念のために聞きますが、このテストプレイが終わったら
『実験ありがとう、けどこの話を外に出すわけにはいかねえ』って俺が消されるなんてことは……)」
「あなたが都合悪く外部に言わなければ絶対に無いわ
仕事が終わっても普通に日常を過ごせるわよ
と言うよりも、1日の仕事が終わった後って普通にすごせているじゃない?」
「(じゃあ、俺以外にこの仕事の面接に来たけど帰ったって人が何人かいたと西門社長から聞きました
そう言った人たちって……)」
「普通に何もしないで帰った人たちは何もしていないわ
でも、会社の契約書を見て通報しようとした人は……後は言わなくても分かるよね?」
「(……ハイ)」
これ以上は、聞かなくてもいいか
うん
いや、頭の中で色々と固まってしまっているけど
「(それで、なんで俺と友達が焼肉で話している内容が分かったのですか?
のぞき見していたとしても、あの個室では手話でしていたんですが……手話は分かるのですか?)」
「そうね……実を言ってしまえば、ニクニク大天国!で日雇いバイトしていたのよ、あなたたちの所に配膳していたよ?」
え?なんかメッチャ手際のいい女性店員がいたけど
あの人だったの!?全然分からないんだが!?
路地裏で初めて会った時に感じた「どこかで見憶えが?」の違和感の正体ってこれだったんだ……
「それで、あなた達の会話を個室の監視カメラ越しに聞いていたのよ
私はね、手話は分からないけどそこに関しては監視カメラ越しにアプリの自動翻訳を使ったのよ?
便利だよね、世界各国の言葉だけではなく手話や点字まで翻訳されるんだから」
「(いや、まあ、確かにそんな翻訳アプリがありますが)」
カラオケとか料理屋でよくあるけど、あれって個室ごとに監視カメラがあるんだよな
まさか、アプリで見ていたとは思わなかったけど
「これで、ある程度の疑問は解けたかしら?」
「(いや、最後に1つだけ
俺の事を監視していると言ってましたが、俺のプライベートは無いってことですか?)」
「流石にトイレや風呂や自室に入っている時は覗かないわよ
それに、あなた自身の本業は小説作家って面接の時に言っていたし
書いている内容を盗み見とかはしないわ」
「(そ、それなら良かったですが
俺が先輩の所に行って作品の相談をしたときって……)」
「それも聞いてないわ」
よかった、こちらの守秘義務は問題ないらしい
「(分かりました、それが聞けて安心しました
流石に俺の本業に大きくかかわる事ですので)」
「ええ、プライベートはちゃんと守るわ」
「(そして、本題とは何でしょう?)」
「本題ね、あなたに伝えたいことがあるのよ」
と言った、がなんか様子がおかしい
なんだ?ちょっと下を向いている
さっきまで話していた殺し屋の話しよりも難しい事なのか?
「あなた、はっきり言わせてもらうわ」
「(はい、なんでしょうか?)」
「すうううーーーーーー
好きよ、結婚を前提に私と付き合ってもいいかしら?」
「……………」
え?今なんて言った?
おかしいな?
さっきまで殺伐とした話をしていたはずだった気がするんだけど
なんか告白を聞いたような気が?
いや、待って
話しの流れがおかしくないか?
鈍感系主人公みたいに聞き返してはいけない内容だったんだが?
え?ん?え?
「(ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?!?!?!!?!)」
状況を理解した瞬間、ホワイトボードからペンが派手にずれて机まで塗ってしまった
恋愛的な展開っぽいですが、あくまでメインはフルダイブゲームのテストプレイですので
今回の幕間は後、2話ほどで終わります




