はざまの戦地-4
ケニーも気が付いた。
重いからだを押してドラゴンの目の前に出る。
このままじゃケニーが押し負ける。
ケニーの近くに移動する。
「そのまま、盾を構えて!」
ケニーの横に並び立ち、高圧の縦渦を発生させる。
ちょうどよく、放たれた火炎ブレスとぶつかる。
押し負けてたまるものか!
魔素を次々と供給し、風圧を強めていく。
ドラゴンの胸にある魔石が光輝いたように感じた。
火炎ブレスの勢いが増し、渦が押し返される。
ダメだこのままでは・・・
瞬時に風の形を変え、自分たちを覆うように膜を形成する。
「すまない、ケニー少し耐えてくれ!」
「うっす!」
ケニーに防御を任せ、地面に魔素を浸透させていく。
ケニーの持つ大盾が、赤熱し、端部からかけていく。
あのツチノコの魔獣の鱗から作った盾ですら耐えられないのか!?
驚き隠せずとも、十分に地面に魔素を流し込むことができた。
「よし!準備完了だ。」
俺は掛け声とともに、地面の起伏を変化させる。土を盛り上げ、いくえにも壁を作り、ブレスを防ぐ。
さらには地下水を湧き上がらせ、ドラゴンを目掛けて、勢いよく高圧で打ち込んでいく。
大部分の弾丸がブレスによって撃ち落とされたが、何発かは命中した。
何よりブレスの方向をずらすことが出来た。
これだけで十分だ!
遠距離攻撃を打てるのが、お前だけだと思うなよ。
十分なプラズマを、左手にためることができた。
ドラゴンよりも高い位置に浮き上がり、思いっきり、打ち下ろす。
高速な一撃は避ける間もなく、ドラゴンに直撃した。
全力のプラズマ砲がドラゴンを破壊し続ける。
ドラゴンは攻撃を受けながらも、体をひねり何とか避けようと移動する。
逃がすものか!
より出力を高めて攻勢を強める。
周囲には甲高いビームの音と、ドラゴンにぶつかる鈍い音がなり続ける。
これでもくらえ!
力を振り絞り、さらに重い一撃を加えたところ、ドラゴンの片腕を飛ばした。
飛ばした腕が、ちょうど魔法陣の上に落ちる。
魔術使い達が、飛び出し、魔法陣を起動する。
高度な魔素操作により、切り離された腕から魔素が抜け、消失し、代わりに魔石だけが残った。
あれだ。あの腕と同じことをドラゴン本体でもやる。
ドラゴンの方を見る。
片腕から煙を上げながらも、こちらを睨む。
間違いなく、ドラゴンの魔素が減ったことが分かった。
ドラゴンは魔素そのもの。
大丈夫だ。
確実に弱体化出来ている。
ドラゴンは宙へ浮かび、纏う魔素の密度が上がる。
切れた腕の切り口からあふれる魔素量が多くなった。
攻撃すればするほど、魔素の効果が上がるのか!?
つくづく、異常な生物である。
俺は追いかけるように空中へ上がる。
舞台は空中へと移った。
さっきの攻撃で自分自身の魔素量はかなり減ってしまった。
周囲の魔素を使うには時間がかかる。時間を稼ぎつつ、周囲の魔素を吸収しないと!
ドラゴンの切れた腕から紫電が走る。
合わせるように俺も雷撃をまとう。
両者は同じタイミングで雷撃を打ち合う。
ぶつかり合う雷撃は、まるでボールがぶつかるように地上へと降り注ぐ。
ドラゴンの雷撃の隙間から赤い光が見える。
ブレスか!?
風の塊では押し返される・・・ならば!
自らを覆うように二重の空気の膜を張る。
ドラゴンの高温のブレスは空気の膜ごと、完全に包み込んだ。
「タロウ!」
地上からは、完全にタロウが炎に包まれたように見えた。
長い、長いブレスが終わり、タロウがいた場所には何も残っていなかった。
地上の部隊には絶望が広がっていく。
ドラゴンは、目の前の厄介者を片付けたと、いわんばかりに地上に視線を移す。
しかし、地上から見上げていた者たちには、絶望が広がることはなかった。
「お前は、真空という現象を知らないだろ。」
タロウは死んではいなかった。
自分を覆うように張った真空の膜によって炎の熱を防いでいたのだ。
さらに空中に大きく広がる火炎に隠れて一気に上空へ移動していた。
ドラゴンの激しい火炎ブレスによって、上空は完全に晴れ渡っていた。
今だ!今しかない。
小さい光の魔石を上空に放つ。
周囲の空間に広がる魔素を手中に収める。
支配が及ぶ魔素を使い、空中に放り出した光の魔石とつながる。
こっちの世界に来てから一番使ってきた魔石。もはや、どんなことでも出来る。
この光の魔石を媒介して・・・辺り一帯に降り注ぐ全ての光を奪った。
アレクは一瞬にして夜になったと勘違いした。
それぐらい暗くなった。
上空には星々が輝く。
いや、見たことない配置だ。どころか動いている?
あまりにも理解不能な状態に混乱が止まらない。
実際には、タロウが光の魔石を使って周囲を照らす光を収束させたのだ。
収束した光をいくえにも分割し、ドラゴンを四方八方から囲むように打ち抜いた。
音もなく発せられた、その光線を避けることなど出来ず、ドラゴンの全身を貫通し、焼き尽くした。
まるで、流れ星が落ちるようにドラゴンを通り抜けていった。
その様子を、光を制御するため、両手を広げたタロウだけが、見つめていた。
地上部隊の面々は夜明けのような暖かさを感じると同時に、周囲は明るさを取り戻した。
ドラゴンが墜落していく。
反応がない。
倒せたのだろうか?
今の攻撃は俺が出来る最大級の攻撃だった。なんて言ったって、地球に降り注ぐ太陽の力を使う攻撃だ。
これ以上の攻撃は、そうない。出来れば、このまま倒せていれば良いのだけど。
今までの経験が、ずっと警報を鳴らしている。
ドラゴンが地上にたどり着いた。
迷っている暇はないか。
すぐに追いつき、魔法陣を起動する。
ドラゴンの魔素を順調に吸収していく。反対に巨大な魔石がゴロゴロと地面に埋まるように析出していった。
辺りには静寂が流れていた。
ドラゴンから視界を離すことができない。
どんどんと体組織が崩れていくが、過去の経験が、目を離すなと言い続けていた。
ドラゴンの胸にあった大きな魔石が析出したときだった。
不意に頭の中にツチノコの魔獣と戦った記憶がよみがえる。
仮死だ!
「全員!、今すぐこの場を離れろ!」
悲鳴にも似た、叫び声をあげる。
世界中から集まった精鋭は、一瞬にして飛び跳ね、ドラゴンから距離を取ろうとするが、
それよりも早く、意識を回復したドラゴンが暴れまわり、数人を吹き飛ばす。
俺自身も自らを突風で飛ばし、緊急回避する。
他人を気にしている暇はない。
ドラゴンは明らかに、俺を狙っている。巨大な頭がどんどん迫ってくる。
風を発生させ、ドラゴンにぶつけつつ、反作用で自分自身を加速する。
ドン!と俺自身の動きがとまる。
さっき俺自身が地面から立てた土の壁だ。
考えている暇はない。
無意識に風の方向を変え、上昇するが、一瞬だけ停止した隙にドラゴンの頭が追い付く。
右足をかまれた!?
右足から引っ張られ、後ろの壁ごと吹き飛ばされる。
雷撃を放ちドラゴンの顎を割る。
拘束が緩んだ隙に、今度こそ上昇する。
うっ
右足から激痛が走る。
右足はだらりと力無くつながっているだけだ。
しかもこれ・・・
魔素がない?
右足の魔素だけが無くなっている。この感じ、知っている。
この状態を回復するには、長い時間をかけて魔素を吸収するしかない。
今、そんなことやってられるか!
右足のケガだけを治し、血を止める。
動きは悪いが、飛び続ければなんてことはない。
ケガが治ったことで周囲の状況を確認できる。
吹き飛ばされた皆はケガを負っているものの、すぐに回復の部隊が出てきて魔石を使って、回復を始める。
戦力は大きく削られたが、大事はないようだ。
ドラゴンの方を確認する。
!?
ドラゴンの頭は、頭だけが飛んできていた。




