はざまの戦地-2
「ええ、伝説の魔獣であるとはいえ、魔獣であることに変わりはない。魔獣と魔術使いは惹かれあいます。今となっては魔素に反応していたと考察できますが、ドラゴンも同じはないか?」
そうか、どこにいるか分からないなら、呼び寄せてしまえばいい。
もちろん、こんなデタラメなことをやるなら俺がやるしかない。
とはいえ、この大地中から無作為に探すというのは、やっぱり無理がある。もう少し狙いを絞らないと・・・
また外に出て歩き回る。
目的地があるわけじゃない。
考える事を止めない為に歩き続ける。
広い場所に出た。
子供たちが広場で遊んでいる。
ボールのような球体を投げたり、バウンドさせたりしている。
何の遊びをしているか、よく分からないけれど、どこの世界でも子供達の遊びに大差は無いようだ。
自然と動き回るボールに視線が移る。
その時、自然と腑に落ち、いい考えが浮かんだ。
そうか、下ばかり見ていても仕方ないんだ。
電離層・・・
この世界の宇宙がどうなっているかは全く分からないけれど、方位磁石が有り、雷は鳴り、夜は暗くなる。
どれもこれも、地球と同じだ。
ならば電磁波の反射だってできるはず・・・
地球では特定の周波数を持つ電波が、地球の上空に形成された電離層で反射して、遠方まで届くことがある。
この方法を使って、探査魔術を使って遠方の要所を調べる。
おれが初めて開発した技術。
もう何度も使ってきて、息をするように使うことができる。
不可能ではないはずだ。
この魔術を反射させて遠方を調査し、ドラゴンがいないか調べる。
いた場合はキサイの言う通り、おびき寄せる。
探査魔術を変化させて、魔素の塊にするのだ。
まるで餌で誘い出して、罠にかけるように魔素の道を作り、封印の地へ誘い出す。
無理がある案だけども可能性はゼロじゃない。
早速作戦を詰め、調査隊に戦闘の可能性を厳命する。
さすがは精鋭達だ。
全く戦果が上がらない日々が一か月も続いたというのに、すぐに表情が引き締まった。
結局、非常に単純な作戦を決行する事になった。
王国側の広場に展開された戦場に罠や魔法陣を仕込む。
電離層を利用して、ドラゴンを探し、魔素を使っておびき寄せる。
こんな方法、本当にうまくいくのだろうか?
やってみるしかない。
一日とかからず、戦いの準備が終わり、広い戦地の中にいくつも魔法陣が描かれる。
魔法陣で円を描くように配置した。
その中心に、ずっと使ってきた杖をもって俺は立っていた。
世界のどこかにいるドラゴンを見つけるため、集中する。
周りで見ていた者たちは、彼のその瞬間を、魔王の真価だと語った。
周囲の魔素に意識を伸ばしていく。
何度も魔法を使っていたおかげで、もはや魔素の掌握は息をするように出来るようになった。
周囲の魔素を吸収し、自分が持っている杖に注いでいく。
杖に埋め込まれた魔石から術式を解せず、強力な電磁波が上空へ向かって放たれる。
わかる。
自分の放った電磁波が上空で反射し、かなり遠方へと届いた。
いない。ここじゃない。
順々に角度を変えながら、念入りに調査を行っていく。
次の方角だ。
この方角は・・・ノイマンと戦った採掘場がある場所だ。
同じように強力な電磁波を打ち込む。
その反応は・・・いた。やはりいた。
やってよかったと思うと同時に一気に体に力が入る。
「皆!ドラゴンを発見した!今からここに呼び寄せる。予定通り準備してくれ。」
俺の言葉に反応して各人が、動き回る。
あるものは遠距離攻撃を行うため、遠くへ。
あるものは封印を行えるように魔法陣近くに隠れた。
皆が準備する様子を片目に納めながら、発する魔法の質に変化を加える。
まずドラゴンがいる場所を詳しく把握していく。
その場所は、ただの山肌が続いているようにしか思えない。
しかしいびつに崩れた跡がある、その場所からは明らかに普通では考えられないほどの魔素が漏れ出ていた。
以前にも見たことがある魔素のパターンだ。間違いないドラゴンである。
食っている。地面に埋もれた魔石を食べて、力を高めているようだ。以前よりも密度が濃い。
腹が減っているようだな。
良いだろう。たらふく食わせてやる。毒入りだけどな。
魔素を変質しドラゴンが地下に潜っている真上で、魔素を収束し塊を作っていく。
魔素の収束が十分に進み、大量の魔素が空中に溜まった。
その間、ドラゴンの様子を逐一確認していた。
ドラゴンの注目が、俺が集めた魔素に移ったことが分かった。
出てくるぞ。
周辺の大地が揺れ、岩が崩れる。
まるで餌に飛びつくように、そいつは飛び出した。
しかし、ドラゴンの腹が満たされる事はない。
餌として用意された魔素は瞬時に拡散し、消えてしまったからだ。
ドラゴンが周囲を探索すると一本道のように魔素の塊が用意されていた。
ただ本能の赴くままに、魔素の塊に飛びついていく。
食べる直前に拡散し、消えていくそれに気づくことなく、ただまっすぐに導かれていく。
ドラゴンの速度は凄まじく、一瞬にして大陸を移動し、我々が待つ決戦の地へとたどり着いた。
「来るぞ!構えろ。」
俺の言葉に全員が武器を構えなおす。
同時に轟音が鳴り響き、地面から地鳴りが聞こえる。魔素が震えているのだ。
点で見えてきた黒い塊は、気づくころには大きく、はっきりとした形を見ることができた。
「またあったな。お前がいると、全て破壊されてしまう。申し訳ないが封印させてもらう。」
目の前にドラゴンの咆哮が鳴り響いた。




