異世界魔法少女サファイアキミィ爆誕! 1
ハッと気が付いたとき、貴美子は見知らぬ場所にいた。
辺りを見渡すとそこには白い空間が広がっているだけで他には何もなく、
足元を見ると地面がなく、宙に浮いているような感じだった
驚いた貴美子は後ろへ倒れ込み、大きく尻餅をついた。
「気が付いたかい?驚かせてすまない」
突然どこからか男のような声が聞こえた、いや聞こえたのではなく頭の中に直接響いて来るような感じだった。
「え、え、え、え、な、なに、どこ、だ、だれ!?」
貴美子はパニックになって取り乱す
「突然で恐縮なのだが、事実を伝えさせてもらう、キミは死んでしまった」
「は?は?は?」
「本来キミはまだ死ぬ運命ではなかったのだが、私に仕えるモノが誤ってキミを死なせてしまった」
「は?は?なに?」
訳が分からない、貴美子は立ち上がろうするが相変わらず足元に地面が無い恐怖で上手く立ち上がれず再び尻餅をついた。
「そこでだ、お詫びとして提案があるのだが…」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!い、意味が分からない、誰なの!?」
貴美子は何もない空間を指差した
「ああ、すまない、そうだな。私はキミたち人間がいうところの神様だ」
「は????」
全く意味が分からない、貴美子は頭を抱えて呆然とする。
「そして提案というのはだな、キミを私が管理するもう一つ異なる世界へ転移させてあげようという事なのだが」
(あー…
はいはい、なるほど、これは夢ね、最近異世界転生モノアニメを観たから夢にまで出て来たって訳ね)
貴美子は状況が理解出来なさ過ぎて1周回って冷静になった
「いや夢ではないぞ」
「やば、心読まれてる」
「キミは今日仕事に行った事は覚えているだろう?そしてその帰りに神社へ寄った事も覚えているな?」
「え、あ、はい…」
「そして、神社を出てその後は?」
「えっと、牛丼食べに行こうと思って、それで、歩いてたら突然光が…」
「そう、キミはその時車に跳ねられて死んでしまった。睡眠をとっている訳ではない、したがってこれも夢ではない」
確かに、言われて見れば直前までの記憶がハッキリとある。
もしかして、本当にこれは夢なんかではないかもしれないという実感が湧いてきた貴美子は段々と顔が青ざめる
「い、いや、ちょっとまってください、死んだって、そんな」
「先程も伝えたが、私に仕えるモノが誤って死なせてしまった、すまない」
「すまないって、じゃあ今のこの状況は!?」
「キミは今日神社で願い事をしただろう?キミはこれまでもあの神社にたまに足を運んで願い事をしていた。あの神社、実は私を祀る為の神社なんだ。だからその縁もあったのと、誤って死なせてしまったお詫びに特別にキミをここへ連れて来た」
貴美子はまだ、頭の中の整理がつかず、黙って唇を噛み、俯く。
「で、先程の提案なのだが、キミを特別に別の世界へ転移させてあげようと思う」
「別の世界って…元の世界で生き返らせてくださいよ!」
「うーん、それも出来なくはないが、こうしてる間にもキミの世界の時間は流れている、それで突然生き返らせるというのは…時間を戻したり、キミが死んだという事実そのものを無かった事にも出来なくはないが、私の力の介入で世界の因果を捻じ曲げてしまうのはよろしくない、うーん…」
(なんだ、神様も案外マニュアル人間なんだな、いや、人間じゃないか)
もうどうにでもなれ、と貴美子はやけくそのような気持ちになった
「でもどうして異世界なんですか、そもそも元の世界で生き返るのは駄目で異世界に転移するのはいいんですか?」
「キミは死の前に神社で仕事を辞めたいと願っただろう?異なる世界に行ってしまえば今の仕事からは解放される、そして次に魔法少女になりたいとも願っただろ?もう一つの異なる世界にはキミ達のいう魔法というものが存在する、つまりキミの願いは叶うというわけだ」
「あ、いや、あれは、その、ちがくて、いや、違うくはないですけど、はい…」
願望を叶えてもらいたくて神頼みをしたはずなのだが、いざ本当に神様に届いていたという事がハッキリと証明されると途端に恥ずかしくなった。人間とはむずかしいものだ。
「そのもう一つの世界はキミが生きた元の世界とは違い、魔法というものや他にも不思議な力が存在するが故に、異なる世界からの来訪者を1人送り込んだところで大きく世界のバランスや理、因果が崩壊する事は無い、キミを元の世界で生き返らせるより穏便に済むというわけだ」
「いや、そんなの滅茶苦茶ですよ!いきなり殺されて、いきなり他の世界に飛ばされるなんて!そりゃあ、魔法とか異世界とか多少の興味はありますけど…でも...」
普通に考えて、そんな提案には乗れるはずがない。
元の世界に未練も当然山ほどある。
「ふむ…ならばこうしよう。実はそのもう一つの世界には、この先の未来で世界を大きく揺るがすような災いが待ち受けている。
正直私は世界がどうなろうと直接手出しをするつもりはないし、
全てはその世界の成り行きのままに任せようと思っていたのだが、もし、キミがその災いを食い止めるとしよう。
そうなれば結果的には私の力の介入により世界の因果を大きく変えてしまった事になる。
それは先程伝えたようにあまりよろしくはない、
そうなってしまえばキミを死を無かった事にして元の世界で生き返らせる方が私の力で世界に与える影響というのは少なくなり、穏便に済ませられる。」
「つまり、私がうっかり異世界を救ってしまった場合、神様が私を転移させたせいで世界の未来を大きく変えてしまった事になる、そうなってしまった場合には私が転移して世界を救ったという事実を無かった事にして私を元の世界で生き返らせたほうがマシだ、と」
伝えられた事は頭の中で整理しながら復唱する、社会人の基本だ
「そういうことだ」
「もう一度確認しますが、そんな回りくどい事をせずに普通に今から元の世界で生き返るというのは無理なんですね?」
「…申し訳ないが、それは出来ない」
「つまり私は、異世界でぬくぬくと平和に過ごすか、異世界を救って元の世界で生き返るかの2択を迫られていると」
「そうなるな、異なる世界でどう生きるかはキミ次第だが、今すぐに元の世界には帰せない」
いきなりそんな事を言われて、はいそうですかと受け入れるなんて出来るわけがない、
正直今でも半分夢なんじゃないかっていうフワフワした変な気分だし、
それでも、他に選択肢がないなら、
どうせ死んだ身なんだ、もうどうにでもなれ、
と貴美子は拳を強く握り、歯を食いしばって顔を上げた。
「あーーーー!もうどうでもいい!!!私を異世界にでもどこにでも連れていけ!!!!」
貴美子は腹の底から叫んだ、
こんなに大きな声を出したのは人生で初めてかもしれない、
ストレス発散のためのカラオケより大きな声が出た。
「ふむ、ならばキミをもう一つの異なる世界へ送ろう」
神様からのその言葉が頭の中に響いてすぐ、貴美子の身体は白く発光した。
「キミは魔法少女になりたいと願った、魔法少女というものには、力を与え、お供となる存在が必要だと、キミの中の魔法少女像とやらを探って理解した。
ならばその同伴者は用意しておこおう、
キミを誤って死なせてしまった私の従者を連れて行くがいい、
本来、罰として存在を抹消するはずたったが、
丁度いい贖罪の機会だ」
自分を殺したようなヤツを同伴させるのは流石にモラルがなさすぎるだろとツッコミたかったが、
もう時間がなさそうだ、今のうちに大事な質問はしておかないと
段々と下半身から消滅していく中、
貴美子は頭の中に真っ先に思い浮かんだ事をとりあえず叫んだ
「最強チートスキルとか不死身は付与されますかー?」
「それは無理だが、世界のバランスを崩さない程度にはそこそこ強力な力は与えよう。その力を伸ばすかどうかはキミ次第だ」
「あ、それともう一つ」
言いかけている最中だが、貴美子の身体は完全にその場から消滅した。




