異世界魔法少女サファイアキミィ爆誕! 2
ハッと気が付いたとき、貴美子は見知らぬに場所にいた。
辺りを見渡すとそこには緑の草原が広がっているだけで他には何もなく、
足元を見ると謎の虫のような生物が這っていて、田舎にいるような感じだった
驚いた貴美子は後ろへ倒れ込み、大きく尻餅をついた。
「気が付いたッチ?驚かせてすまないッチ」
突然どこからか可愛らしい声が聞こえた
「え、え、え、え、な、なに、どこ、だ、だれ!?」
貴美子はパニックになって取り乱す
「突然で恐縮だけど、事実を伝えさせてもらうッチ、ここが異なる世界だッチ」
「は?は?は?」
「本来キミはまだ死ぬ運命ではなかったけど、ボクが誤ってキミを死なせてしまったッチ」
「は?は?なに?」
訳が分からない、貴美子は立ち上がろうするが相変わらず足元に気持ち悪い虫のような生物が這っている恐怖で上手く立ち上がれず再び尻餅をついた。
「そこでだ、お詫びとしてボクがキミのお供として同行することになったッチ…」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!い、意味が分からない、誰なの!?」
貴美子は目の前に浮かんで一方的に話しを進行する生物を指さした
「ああ、すまないッチ、そうだね。ボクはキミたち人間がいうところの魔法の妖精だ」
「は????」
全く意味が分からない、貴美子は頭を抱えて呆然と──。
いや、違う、似たようなやり取りをつい最近もした気がする。
そして貴美子の脳内におおよそ現実とは思えない直前の記憶がフラッシュバックした。
「ハッ!!!そうだ、私、いきなり死んじゃって異世界に飛ばされたんだ!!」
全てを思い出した貴美子はゆっくりと立ち上がり、改めて目の前に浮いている魔法の妖精とやらをまじまじと見つめる
猫のような外見、背中に生えた小さな羽、全身は白と紫のカラーリング、
まるで、貴美子が今まで通って来た魔法少女アニメに登場する妖精のデザインを全て足してたような、
いかにもな見た目をしている。
そして、つい先ほどその妖精の口から語られた言葉が今になってようやく貴美子の中で引っ掛かり始めた。
「ねえ…聞き間違いじゃなければアナタ、私を死なせたって言ったよね?」
「言ったッチ!本当申し訳…
「ごめんで済んだら警察はいらねえんだよ!!!!」
貴美子の全力のパンチが妖精にヒットし、妖精は吹っ飛んだ
「酷いッチ…いきなり何て事をするんだッチ…」
妖精は再びフラフラと浮かび上がって来た。
「酷いのはどっちだよいきなり殺しやがって!!!」
「別の人間と間違えただけだッチ!キミだって仕事でミスくらいするッチ?」
「ミスの次元が違いすぎるだろ!!!!どうしてくれるんだよ!!!」
「だからボクはこんな見た目とこんな喋り方にされてキミに同行させられる事になったんだッチ!」
「こんな見た目って、元は違ったって事?」
「そうだッチ、本来はもっと麗しい見た目の天使なんだッチ」
「麗しいとか自分で言うんだ…」
こんな不毛な議論をしていても仕方ない、と貴美子は改めて今の状況を整理することにした
「とりあえず、私はアンタの手違いで死んでしまって、元の世界で生き返る事は出来ないからかわりに異世界に飛ばされたと」
「そうだッチ」
「で、私がこの世界で魔法少女になる為のお供としてアンタも一緒に飛ばされたと」
「そうだッチ」
「で、この世界にいつか大きな災いが訪れる、それを食い止める事が出来れば私は元の世界で生き返れると」
「そうだッチ」
「で、その災いってのは何なの?」
「それはボクも知らないッチ」
「うわー!使えねー!!!!!一番肝心なとこ知らないのかよ!!!」
貴美子は頭を抱えて絶叫した
「それとボクはアンタじゃないッチ!ボクの名前はエスティバンだッチ」
「無能な癖に名前だけはいっちょ前なんだ…」
「ボクは無能じゃないッチ!」
「あー、はいはい、長いからとりあえずエスティーって呼ぶわ」
「ま、別にいいッチ」
仕事出来ない癖に偉そうなヤツって天使にもいるんだな、と貴美子は内心呆れた。
そして、エスティーはそれに対して特に何のリアクションも無いのでどうやらこの妖精(天使)は
神様と違って心を読むことは出来ないんだな、と少し安心した。
「で、これからどうすればいいの?」
「あっちに行けば街があるみたいだからとりあえずあっちに行ってみるッチ」
エスティーが示した先を見てみると確かに遠くに街があるような雰囲気の景色が見える
しかし、かなり距離があるようだ。
「ゲッ…めっちゃ遠くない?」
「キミがいつも利用している電車でいうと10駅分くらいの距離だッチ」
「距離わかるんだ、てかそんなに具体的に言われると向かうのが更に億劫になるんだけど…なんかワープしたり私を連れて飛んだり出来ないの?」
「無理だッチ」
「あー、ほんと使えない!!!ウチの部署の秋山と同じくらい使えない!!!!」
「流石に秋山より下は心外だッチ!」
「こわ!秋山の事知ってんのかよ!」
「ボクは天使だッチ、神様程ではないけどある程度は全知全能だッチ!」
誇らしげに胸を張るエスティーに対して貴美子は、「いや、でも災いが何か知らないし、街へひとっ飛びも出来ないし、心も読めないじゃん…」と思ったがこれ以上無駄に言い争いをするのも疲れるだけだし、
思ったことを何でも口にしないのが大人というものだから、不満は胸の奥にしまいつつ、トボトボと歩き出した。
どれくらい歩いただろうか、ようやく街がハッキリと大きく見える距離までやって来た
学生の頃の遠足でもこんなに歩かないぞと、学生時代は一生帰宅部で過ごしていた貴美子にとっては
学生時代のマラソン大会とかいう謎の行事以来の長距離歩行で満身創痍になっていた。
「ハァ…ハァ…」
今にももう一度死にそうな様子で歩みを進めていると、少し先に人影が見えた。
金髪の若い女性が一人こちらに向かって歩いてくる。
「あ、誰かいる!でもよく考えたらここって異世界だから言葉通じないじゃん!」
「そこは大丈夫だッチ、神様がうまいことキミの言語をこっちの言葉に入れ替えてくれてるッチ。キミは日本語で喋ってるつもりかもしれないけど、実はずっとこの世界の言語で喋ってるッチ」
「そうなの!?なんて都合が良すぎる設定!!」
貴美子は女性とある程度距離が縮まったら声をかけて助けを求めてみようと思ったが、
何か様子がおかしい、
女性の背後から複数の大柄な男たちが現れて、あっという間に女性を囲い込んでしまった。
「キャー!!一体何ですの!?」
「へへへ、姉ちゃん、見たところ随分と育ちが良さそうな見た目じゃねえか」
「ちょっと俺達にお恵みをいただけねえかな、ヘヘヘ」
男達に囲まれた女性の悲鳴が貴美子にまで届いた
「まずいよアレ!助けなきゃ!」
「よし、早速魔法少女に変身して助けるッチ」
「え!?こんなあからさまなチュートリアル展開ある!?まさかこれ神様が仕組んでたりするんじゃ…」
「いや、多分ホントにたまたまだと思うッチよ。そんな事よりこれを!」
エスティーがそう言うと貴美子の目の前に小さな光が出現し、ゆっくりと落下する。
貴美子はそれを両手で受け止めると光が弾けて、丸いピンク色のパクトケースになった。
「さあ!そのキューティーマジカルパクトを使って変身するッチ!」
「え!?ああ、うん!」
子供の頃に持っていた玩具のようなそのアイテムをギュッと握りしめて、貴美子の心は高鳴っていた。
「そうだ!エスティー!変身するならトゥインクルマジカル☆ミライのブルースカイスタイルみたいな衣装にして!」
トゥインクルマジカル☆ミライのブルースカイスタイルとは、トゥインクルマジカル☆ミライの数あるフォームのうちの一つで、青を基調としたコスチュームで空中戦を得意とするフォームだ。
貴美子はそのブルースカイスタイルが子供の頃からの一番のお気に入りだった。
「大丈夫ッチ!そういうと思ってバッチリ準備してるッチ!」
「シゴデキ天使じゃん!」
貴美子はそう言いながら女性を助けるために走り出した
「お前達!その人から離れろ!!!」
貴美子が叫ぶと、大柄な男達は一斉に貴美子の方を見る
「なんだァ!?」
「おいおい獲物が一人増えたぜ、へへへ」
「悪党共め!この私が成敗してくれる!!」
そう宣言すると貴美子は、パクトを顔近くの高さで構え、そして高らかに叫んだ
「変身!!!!!」
それは魔法少女というよりは特撮ヒーローのような掛け声だったが本人は気付かなかった。
何はともあれ、いよいよ魔法少女の醍醐味ともいえる変身バンクへと突入する。
貴美子の身体が白く発光し、衣装が順に変化してゆく、
それに合わせて貴美子は順番にポーズをとる。
魔法少女は何故は何故初めての変身でもしっかりと変身バンクをキメる事が出来るのかという無粋な疑問を抱いた事があるが、今なら理解できる。
自然と身体が動いてしまうのだ。
「闇を滅する青き光!サファイアキミィ!」
口上と共に貴美子、いや、サファイアキミィはポーズをキメた。
先ほどまでの目つきの悪い黒髪の冴えないアラサーOLの姿はなく、
青を基調とした可愛らしいフリフリの衣装に身を包んだ青髪の魔法少女?(目つきは相変わらず悪いまま)がそこには立っていた。
「ハァ~!?なんだコイツ」
「俺たちとやろうってのか?」
「ナメてんじゃねーぞ!!!」
男達達の内の1人が剣を抜きサファイアキミィへと真っ直ぐに突撃してくる。
「マジカルサファイアロッド!」
サファイアキミィが叫ぶと、まさに魔法少女が扱うような可愛らしい装飾の派手な杖が出現し、
サファイアキミィはそれを手に取り男の剣を防いだ。
「ハァァア!!!」
サファイアキミィはマジカルサファイアロッドで男を押し返して吹っ飛ばし、そのまま男へ飛びかかり
振りかざしたマジカルサファイアロッドを男の脳天へと叩き込んでノックアウトした。
「こんのぉ~!」
「調子に乗るんじゃねえぞ~、へへへ!」
今度は男が2人、剣を振りかざし向かってくる。
「チッ!邪魔ァ!」
マジカルサファイアロッドを握ったままだと戦い辛いと判断したサファイアキミィはマジカルサファイアロッドを投げ捨てて拳を握り構える
片方の男が振り下ろした剣をかわして、サファイアキミィは強烈な腹パンをぶち込んだ。
もう片方の男が振り下ろした剣も悠々とかわして男の顔面に肘内をお見舞いし、2人ともノックアウト。
「きゃっ!」
悲鳴が聞こえ、サファイアキミィがそちらを見ると
残った最後の1人の男が女性を人質に取っていた
「そこまでだぜ!これ以上暴れるならこの女を殺す!」
「しまった…!」
サファイアキミィは苦虫を嚙み潰したような表情で両手をあげて無抵抗をアピールする
万事休すか、と思われたが
エスティーが男の背後から顔を出し、女性の顔の前まで移動すると、
女性の顔を隠すように覆いかぶさった。
「サファイアキミィー!!!今だッチ!!!」
エスティーの行動の意味を咄嗟に理解し、サファイアキミィは叫んだ
「サファイアフラーッシュ!!!!」
サファイアキミィの身体が激しく発光し、男の視界を潰した
「ああああああ!!!!目がああああ!!!!いてえええええ!!!」
サファイアキミィは男へ飛び掛かり、剣を持つ手の手首を掴み、力を込めた。
男は痛みで剣を落とすと、サファイアキミィは女性を男から引き離し、男の顔面へ正面から右ストレートをぶち込んだ
男は数十メートル吹っ飛び、ノックアウト。
サファイアキミィは腕を組み仁王立ちで、男が吹っ飛んだ方向を睨み付ける。
こうしてサファイアキミィの初陣は見事勝利で終わった。




