01-08.初めてのダンジョン
「パーティー申請ですか?」
危ない人を見る目だ。完全に要注意人物扱いだ。
師匠はギルドの外で待っているけど、最早焼け石に水らしい。早く用事を済ませてこの町を離れた方が良さそうだ。
「フィーアさん。どうかお考え直しを」
ひどい……。
「い、いえ! やります! 私やります! 諦めたくないんです!!」
「そ、そうではなく……」
「やらせてください!!」
「は、はい……」
少女のあまりの勢いに受付嬢は言葉を引っ込めた。
その後はちらちらこちらを睨みながらも、パーティー申請を受け付けてくれた。
「ベランさん。くれぐれもお願いしますよ」
「はい。任せてください」
「……本当にわかっているんですか?」
「師匠のセクハラを阻止するって話ですよね?」
「「えぇ!?」」
何故驚くのか。
「違いました?」
「い、いえ。合っています」
何故戸惑うのか。
「ベランさん……あの……」
「行こう、フィーア。大丈夫。師匠は優しい人だよ。嫌だとハッキリ言えば変なことはしないから」
「……言わないとするんですね」
「……うん。まあ」
否定は出来ないけども……。
「誤解しないで。師匠はエルフだから。エルフには魔力を這わせて相手の身体を感じ取る習慣があるんだ。彼らは魔力に敏感だからね。挨拶代わりなんだよ。本来なら」
「本来なら……」
「まあ……うん……。ほら。人間ってエルフとは身体の作りが違うからさ。魔力だけじゃ探りきれないんだよ。だから足りない分を手の平や全身で感じ取ろうとするんだ」
自分もよく抱きつかれていた。特に心臓の音を聞くのが好きなのだと言っていた。それが一番安心するのだと。
「そうやって丸め込まれたわけですね」
受付嬢がトゲトゲしい……。
「……少しくらいなら……我慢します」
「ダメです!!」
「そんな必要は無いよ」
「けど……少しわかりますから……」
??
「行きましょう。ベランさん」
フィーアが覚悟を決めた表情で見上げてきた。
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再びギルドを出て、今度こそダンジョンにやってきた。
「魔物狩りじゃぁ~~!!」
師匠がすっごく張り切ってる。
「よいか! おヌシらはワシの側を離れるでないぞ!!」
それだけ?
「ゆくぞ!!」
師匠が駆け出した。
フィーアと二人で後に続く。
「ギャー!?」
「グワー!?」
「ゲェー!?」
次々と魔物が討ち取られていく。
ダンジョンの魔物を全て刈り取ってしまいそうな勢いだ。
初めてのダンジョン探索が何か違う。思い描いていたものと全然違う。このままついて行くだけで良いのだろうか。
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「先ずはここじゃ!」
「「はぁーはぁーはぁー!!」」
「なんじゃ。不甲斐ない奴らじゃのう」
ひどい……。
師匠が立ち止まったのは厳かな扉の前だ。
この向こうに何か目当てのものがあるのだろうか。
「ほれ。ボサッとしとらんで。はよ行ってこい」
え? もしかして二人だけで?
「ここは二人で戦うのじゃ。今のおヌシらには十分じゃろ」
「二人!? そんな無茶な!?」
フィーアは何か知っているのか?
「ここはボス部屋です!! 普通は四人以上で挑むものです!!」
「言われずとも知っておるわ。ワシを誰じゃと思っとる」
ボス? 強い魔物がいるのか?
「よいから行け。死なせはせん」
なるほど。師匠は無茶振りをしているのか。別に珍しくもないことだ。
「フィーア。大丈夫だ。本当に危険は無いよ」
今のところ通知も無いし。
たぶん師匠と一緒にいるからだろう。危機系の通知が軒並み沈黙している。
「っ! わかりました!」
強い子だ。師匠は厳しいけど、この子なら付いてこれるかもしれない。
フィーアと二人で扉を開けた。
奥には大柄な何かが立っている。
バタンと、背後で扉が閉まった。
師匠は付いてきている。気配を殺して扉の直ぐ側に立っている。早く行けと目配せしてきた。
「グォォォォォォォオオオオオオ!!!!」
立っていたのは牛頭の怪物だ。
筋骨隆々の巨人みたいな化物だ。その手にはフィーアの身長と同じくらいの巨大なナタが握られている。
「くっ!!」
フィーアの足が震えている。それでも負けじと牛の怪物を睨みつけている。
「先行する! 合わせて!」
先に一歩を踏み出した。そのまま震えるフィーアを置いて駆け出した。
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「ほぅ」
クックック♪ やるではないか♪
流石は我が愛しのベランじゃ♪
「おヌシは行かんで良いのか?」
「い、行きます!!」
フィーアも駆け出した。こちらも期待が持てそうだ。
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凄い! ベランさん攻撃を全部避けてる!!
あんな近くで戦ってるのに!
それに私の方へ意識がいかないようにもしてくれている。まるで未来でも見えているみたいに。
けれど攻撃の威力は足りないみたい。ベランさんの振るう剣は全然通じていない。ミノタウロスはかすり傷すら負っていない。
レベルが全然足りないんだ。私より低いんじゃないかな。今までどうやって戦ってきたんだろう。冒険者にはなったばかりなのかな。お師匠様に鍛えられてきたのかな。
違う! そんなこと考えてる場合じゃない!
私が攻撃しなくちゃ! 私の魔術ならダメージを与えられる筈だ!!
「ファイヤー! ボール!!」
初級の炎魔術を放つ。
魔術はあらぬ方向へ飛んでいった。
……これが私の追放された理由。私の魔術は威力が高い代わりに狙った方向へ飛んでいかない。何度練習してもダメだった。どれだけ繰り返しても遠くから狙って当てられたことがなかった。
私のスキルは『リリース』。
誰も聞いたことのない珍しいスキルだ。どうも魔力を増強する力があるらしい。実際私には無限とも言える魔力がある。どれだけ練習しても尽きることはない。それだけ見れば便利なスキルだった。
ただし魔術を使う瞬間に内なる魔力が溢れ出してしまう。その魔力に煽られた術は、予想もしない方向へ飛んでいってしまうのだ。
「ファイヤーボール!! ファイヤーボール!! ファイヤーボール!!!」
やっぱりダメだ。幾つ放とうが魔術は一つも前に飛んでいかない。
敵との距離が遠すぎる。もっと近づかないと。至近距離なら当てられる。それでも偶然にはなるけど。私は今までそうやって魔物を倒してきた。
けど今そんなことをすればベランさんに当たってしまう。
さっきのだって偶然で当たらないとも限らない。先に伝えるべきだった。慌てて動いちゃダメだ。連携を取らないと。
「続けて!! フィーア!!」
「けど!!」
「大丈夫!! 俺には当たらない!!」
やっぱり予知系のスキルなのかな。
もしかしたら……ベランさんとなら……私は……!
「ファイヤぁー!! ボール!!!!!」




