01-06.ヒロイン登場?
「なんだ、おっさん。オレたちEランクだぞ?」
訝しげな視線を向けられた。完全に不審者扱いだ。
先ほどギルドに到着した。勇気を出して、ダンジョン探索向けメンバー募集を行っているパーティーに声を掛けてみた。しかしあからさまな警戒心と共にそんな言葉が返ってきた。
「おっさんはあれか? 変態ってやつなのか?」
ひどい……。
「ちょっと! そんな言い方ないでしょ!」
パーティーメンバーの一人と思しき少女が少年の袖を引っ張って、小声で注意した。
「騙されんな! 子どもばっかのパーティーに声かけてくるおっさんなんて絶対ろくな奴じゃないぞ!」
少年も一応声を潜めてくれたけれど、全部丸聞こえだ。
とほほ……。
「すまない。邪魔をした」
これ以上しつこくしても意味は無いので、素直に引き下がることにした。
その後も幾つかのパーティーに声を掛けてみたが、どこも似たりよったりの結果に終わってしまった。
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そんなわけで、今回もパーティーに入れてもらうのは難しいようだ。
もちろんここにいるのが初心者だけってことはないのだろう。もしかしたら一度警戒させてしまったせいだろうか。要注意人物として認識されてしまったのかもしれない。
十年かけてDランクというのは珍しいわけじゃない。むしろ平均的なランクだ。Cランク以上は一部の才能がある者たちのランクだ。Dランクのまま生涯を終える冒険者も珍しくはない。つまり社会的な自分の評価は年相応だ。
けど今の自分にDランク相応の経験があるわけじゃない。十年冒険者を続けていたのは事実だけど、周囲から見られる印象程にベテランなわけでもない。
自分は経験の浅い若者たちと同じだ。だからって声を掛けられても、向こうからしたら正体不明の大先輩が突然絡んできたようにしか見えないのだ。そんなの下心があると思われて当然だ。
でも実際妥当なんだ、なんて言っても、それは結局こちらの都合でしかない。
今日はただ単に新人たちをビビらせて回っただけだった。そのことにもっと早く気付くべきだった。反省しよう。
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「なるほど。ベランさんは苦労されているようですね」
ギルドにも相談してみることにした。
「申し訳ございません。補助スキルしか持たぬ方に、ソロでのダンジョン攻略は許可出来ません。それが当ギルドの決まりですので。どうかご理解いただきたく」
万事休すだ。
「こちらから紹介させていただくことも可能ですが……」
「是非!!」
「……はい。では伝えておきます。また明日お越しください」
「ありがとうございます!!」
いったいどんな人たちだろう♪ 気になるな~♪ 楽しみだな~♪
「……あの、ベランさん」
「はい! なんでしょう?」
「……い、いえ。なんでもありません」
???
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翌日、朝一番に冒険者ギルドを訪れた。
「じゃから言うとるじゃろう!! ワシはパーティーなんぞ組まん!! なんぞ子守なんぞせにゃならんのじゃ! ワシの弟子は後にも先にも一人だけじゃ!!」
何故だか聞き覚えのある声だ。それも懐かしい声だ。
「師匠?」
「だから弟子は取らんと……!?」
受付嬢を相手に騒いでいた少女が振り向いた。
「ベラン!? ベランじゃと!?」
少女が駆け寄ってきた。俺の身体をベタベタ触って確かめ始めた。
「お、お~……」
人の胸元まさぐるのやめてもらえませんか?
「なんぞ逞しくなりおって。あの泣き虫小僧とはエライ違いじゃのう……じゅるり……これはこれで……ふむふむ……」
じゅるり?
「お久しぶりです。師匠」
「うむ! 実に健やかに育ったようじゃのう! ベラン!」
どこ向かって応えてるんですか? 顔見てくださいよ。
「ひそひそ……」
「ヒソヒソ……」
受付嬢たちが何やら小声で話してる。
「あのショ……コン……が……? 成人……に……?」
「……チャンス……です……」
「……片付き……ね……」
なんだろう。皆師匠をコソコソ見ながら頷き合っている。
「カザリナス様。ベランさんこそがご紹介させて頂きたかった人物なのです」
「なんじゃ! それならそうと早く言わんか! もちろん構わんぞ♪ 早速手続きを進めるのじゃ!!」
「「「ははぁ!!」」」
なんでこの人、王様みたいに振る舞ってるの?
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師匠はエルフだ。見た目は少女だけど、そんじゃそこらの老人が比較にならないくらいには長生きだ。
そして世界でも数人しかいないSランク冒険者でもある。
何故そんな師匠がここに居るのかは不明だ。ここには初心者向けダンジョンくらいしかないのに。
「決まっておろう。あのダンジョンには欲しいものがあるのじゃ」
相変わらず顔を見てくれない。膝に座って胸に耳を押し当てている。心臓の音でも聞いているのだろうか。
「え? そうなのですか? てっきり子どもたちを連れ回すのが目的なのかと」
ここのギルド長は女性の方だった。
「人聞きの悪い言い方をするでない!! どいつもこいつも放っておけんからじゃ! 親心じゃ!! 本当は子守なんぞゴメンじゃがな!!」
「子どもたちから苦情が来ています。それも大量に」
「指導に接触は付き物じゃ!」
あ~……師匠、スキンシップ激しいからなぁ。
それでか~……子どもたちが酷く警戒してたのって……。
重ねて申し訳ない……。
「弟子は取らない方針では?」
「ワシの弟子は生涯このベランただ一人じゃ♪」
師匠……。
「ベランさんはDランクでしたね」
「なんじゃと!? どういうことじゃベラン!! おヌシならとっくにSランクになっとる筈じゃろうが!!」
師匠の期待が重い……。
「実は……スキルが……」
「軟弱者め!! この筋肉は見せかけだけか!?」
言う程筋肉質ではないと思うんですが……。
「面目ありません……師匠……」
「む、むう。そのような声を出すでない。よいじゃろう。軟弱な弟子は鍛え直さねばなるまいな」
「良いのですか!? 嬉しいです! 師匠!!」
「むふふ♪ よいよい♪ おヌシも苦労したのじゃろう♪ それもこれも師であるワシの不徳じゃ♪ 責任を持って鍛え直してやろうぞ♪ ぐふふふ♪」
おお! なんとお優しい!!
「割れ鍋に綴じ蓋とはこのことですか」
「なんじゃと?」
「いえ。なんでも。私から見てもお二人はお似合いかと」
「よせやい♪」
「目的を果たされたら旅立たれるのですか?」
「うむ。そのつもりじゃ」
「それは朗報……ごほん。寂しくなりますね」
「聞こえとるぞ。まったく。老人に対する敬意がなっとらんやつじゃのう」
「この地にSランクは必要ありません。ぶっちゃけた話、他所のギルドからせっつかれてるんです。いつまでSランクを足止めしてるんだって。こちらも迷惑しているのに」
ぶっちゃけたなぁ~……。
「ワシはとっくに引退した身じゃ! どこで何しようが関係ないじゃろうが!!」
「だからってここで子どもたちを摘み食いするのはやめてください」
摘み食い?
「なっ!? ベランの前でなんてことを言うのじゃ!!」
「愛しのお弟子様が戻られたのなら、その方一人に愛情を注がれては?」
「誤解するでないわ! ワシの愛は最初からベラン一人に注がれておるわ!!」
師匠……。
「とにかくワシはそんなことしとらん!! ちぃーとばかし触れ合う機会は多かったかもしれんがな!!」
「子どもたちだってわかるんですよ。邪な感情は。ベランさんはそうでもないようですが」
「ういやつじゃろう♪」
「はいはい。もうわかりましたから。惚気は結構です」
「むっふっふ♪ 欲しくてもくれてやらんぞ♪」
「そうですか。残念ですね。Sランクを自由に扱える人質なら利用価値もあったのですが」
「なんじゃと!?」
「冗談です。それよりもう行ってください。手続きは済みました。私はいつまでも貴女がたの相手をしていられる程暇ではないのです」
「まったく! 可愛げのないやつじゃのう!」
「可愛い盛りの幼少期に貴女と出会わなかったことを神に感謝します」
凄い……この人、師匠を相手に一歩も引いてない……。
「行くぞ! ベラン!」
凄い……師匠が自分から切り上げた……。絶対言い負かさないと気が済まない人なのに……。
「貴方の活躍に期待しています。ベランさん」
師匠がご迷惑おかけしました……。




