01-04.卒業と旅立ち
「ガッハッハッハ♪ 良かったじゃねえか♪ ベラン♪」
ソファにドカッと腰を下ろすなり、ギルド長は豪快に笑いながら労ってくれた。
「神様ってのは本当に見てるもんなんだなぁ♪ ベラン程の信心者が報われねえわきゃぁねえわなぁ♪」
「ありがとう、ギルド長。最初にチャンスをくれたのは貴方たちです」
「そら俺たちの仕事だ♪ 気にするこっちゃねえさ♪」
本当に感謝している。彼らが認めてくれなければとっくに冒険者になる道は閉ざされていた。
「だがあれだ。黙って戦ってたことは褒められんぞ」
「すみません……」
声のトーンが変わった。ここからは仕事モードだ。
「今までスキルも無しによく傷の一つも負わなかったな。そうなっていたならとっくに止めていたぞ」
もちろん細心の注意を払っていた。止められるのはわかりきっていたことだ。
「その慎重さと勤勉さに免じて咎めはせん。だがわかっているな。この町のギルドにお前を置いておくわけにはいかん」
……そうなるよなぁ。
スキルが進化して戦えるようになりましたは良いにしても、そもそもどうやってスキルが進化する程に成長したのか説明がつかない。
規約に明示されていない暗黙の決まりとはいえ、ギルドのルールを破ってこっそりゴブリン狩りをしていたと喧伝するわけにもいかないのだ。
だからこの町を離れる必要がある。これからもスキルを使って魔物を狩るつもりなら。
「折角手に入れた力だ♪ ここで隠れてこそこそ生きてちゃ勿体ねえだろ♪ どうせなら世界を見て試してこい♪」
「ありがとうございます。ギルド長」
「おう♪ 頑張れよ♪」
旅立ちの時は思っていたよりも早く訪れた。
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「そっか。ベラ兄、行っちゃうんだ」
「すまない」
「いいよいいよ♪ ずっとなりたかったんだもんね♪ 英雄みたいな冒険者に♪ 頑張ってね♪ 応援してるからね♪ いつでも帰ってきて……いいんだから……ね……」
「ミリー……」
「……ぐす……ベラ兄のうそつき……まだ行かないって……昨日は言ってたのにぃ……」
「ごめんな、ミリー」
「うわぁぁぁぁぁ~~~ん!!」
ありがとう、ミリー。慕ってくれて。気にかけてくれて。喜んでくれて。いつか必ず帰って来る。約束するよ。
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数日かけて準備とお世話になった人々への挨拶を済ませ、あとはミリーとギルドを残すのみとなった。
「絶対帰ってきてよね! 立派な英雄さんになって迎えに来てね! 待ってるから! ベラ兄のお嫁さんになるから! 約束だよ! 帰ってこなかったら追いかけちゃうんだからね! すっごいスキル貰ってベラ兄を追い抜いちゃうよ! そしたらミリーが迎えに行ってあげるからね!」
「楽しみだな。ミリーがどんなスキルを貰うのか」
「違うでしょ! 楽しみなのはお嫁さんでしょ! まったくもう! ベラ兄はいつもそれなんだから!」
「あはは♪ そうだな。ミリーが誰かと結婚する頃には帰ってくるさ♪」
「ベラ兄とだってば!! もう! 何聞いてたの!?」
ミリー。それは今だけだ。もう五年もすれば素敵な出会いが待っているさ。ミリーは可愛いからな。きっと引っ張りだこだ。花嫁姿もさぞかし綺麗なものだろうなぁ。
うん。やっぱり見に来たいな。
よし。登録しておこう。半年くらい前に気付けば帰ってこれるだろうか。
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ミリー結婚|ミリーが結婚する半年前
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よし。これで設定完了だ。
通知が届いたら必ず結婚式を見に来よう。世界中どこに居ても必ず戻ってこよう。約束するよ、ミリー。
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「ベランさん♪ こちらをどうぞ♪」
真新しい冒険者カードを差し出された。
「……Dランク?」
「はい♪ 皆さんには内緒ですよ♪」
いやでも……。
「受け取ってください。本来なら一日でゴブリンを百匹も狩れる冒険者はDランクにだっていないんです。これは正当な評価です。多少の無茶はギルド長からの餞別でもあります。ベランさんのご活躍に我々一同期待しています♪」
「……ありがとう。受け取ります」
「はい♪ どうぞお気をつけて♪ いってらっしゃいませ♪」
「いってきます!」
こうして十年間お世話になったギルドと町を後にした。




