01-18.六属性の魔術
「ズバリ幻術じゃ!!」
師匠の姿が掻き消えた。
「ひゃんっ!?」
フィーアがお尻を押さえて飛び上がった。
「むっふっふ♪」
どこからか、師匠の笑い声だけが聞こえてくる。
「お師匠様!? もしやこれが!?」
「そうじゃそうじゃ♪ 扱い方はようわかったじゃろう♪」
「はひゃっ!?」
今度は耳元を押さえるフィーア。
「カッカッカッ♪」
笑いながら姿を表す師匠。
「お師匠様! 是非ともご教示を!!」
ふんす! と、鼻息荒く師匠に迫るフィーア。
「今回はちぃとばかし難しいぞ♪ 覚悟せよ♪」
「はい! 必ずや習得いたします!!」
おぉ。凄い気合だ。
確かに便利そうな魔術だ。もしかしたら今度こそフィーア一人で戦えるようになるかもしれない。姿を見えなく出来るなら、相手に気付かれないように側まで行って攻撃魔術を放てば一撃だ。
「ベランさんと手を繋ぐために!!」
「その意気じゃ♪」
なんでさ。
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「ルミナスミラージュ!!」
ダンジョン内に強烈な閃光が広がった。
「ダメダメじゃな」
「そんなぁ~!」
フィーアは苦戦中だ。本来なら姿を消す筈が、何故だか光が爆発したかのように広がってしまうのだ。
「これはこれで目眩ましには使えるんじゃないか?」
「はっ!? 見られそうならこれを使って逃げれば!?」
こらこら。
「そうじゃないだろ。魔物との戦いでだ。俺なら事前に察して目をつむることも出来る。今度気にせず撃ってみてくれ」
「はい! ベランさん!」
よしよし♪ これで一件落着だな♪
「って! そうじゃないんですってばぁ~~~!!」
ダメだった。
「ところで師匠」
「なんじゃ、ベラン」
「これは地水火風の四属性とは違うのですか?」
呪文の頭が聞いたことのない単語だった。
普通は、アース、アクア、ファイア、ウインドのどれかなのに。
水と風の複合属性である氷魔術、フロスト・バインドのように、これも複合属性の一種なのだろうか。
「よしよし♪ ベランもよう勉強しとるのう♪」
「パートナーのことですから」
「パートナー!?」
え? なんでフィーアが驚くの?
「ふっふっふ♪ 愛されとるの~う♪」
「えへへ~♪」
……もう突っ込みませんよ。
「一般的には炎、風、水の複合属性とも呼ばれておるのう」
とも?
「実態は全くの別物じゃがな」
どういうことだろう。
「地水火風の他に光と闇の魔術が存在するのじゃ」
「闇の魔術!?」
「何故そこでフィーアが驚くのじゃ」
「禁忌ではありませんか!!」
「それはニュアンスが違うのう。今しとるのは単純に属性としての話じゃ。光属性と闇属性が存在するのじゃ。おヌシその自覚もなく、よう術を発動出来たものじゃのう」
地水火風の四属性ではなく、実際には六属性あるのか?
「そうか。それで『万象六花』」
「おい。誰に聞きおった。言っておくがな。ワシはそんな呼び名なんぞ認めとらんぞ。人間どもが勝手に付けおった二つ名じゃ。二度とその名を口に出すでない」
たいそうご立腹だ。
「どういう意味なのですか?」
フィーアは怖いもの知らずだな。
「あらゆる事象を六つの技にて現象と成す。そんなところじゃろ」
なんだかんだ言いつつ答えてはくれる師匠。お優しい。
「魔術のなんたるかをまるで分かっとらん」
「とおっしゃいますと?」
フィーアは怯むことなく質問を続ける。
「おヌシは色々と惜しいのう」
「精進します」
「うむ。期待はしておる」
期待は?
「フィーアは無意識に掴んでおる。あとは自覚だけじゃ」
「自覚……」
「これは宿題じゃ。解ける頃には今日教えた術も扱えるようになっておるじゃろう」
師匠はそう言い残し、再び姿を消した。
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現在フィーアが扱える六つの魔術。
地属性:探知魔術『アース・フィール』
水属性:治癒魔術『アクア・ヒール』
氷属性:遅延魔術『フロスト・バインド』
炎属性:攻撃魔術『ファイヤ・ボール』
風属性:攻撃魔術『ウインド・ブレード』
光属性:幻影魔術『ルミナス・ミラージュ』
これらは本来の効果だ。実際には殆どの魔術が本来想定されているものから逸脱してしまっている。
『アース・フィール』はいい。これは唯一安定して扱える魔術だ。むしろ見えすぎるくらい見えている。たまにフィーアの処理しきれない情報が流れ込んでくることが欠点と言えば欠点か。
『アクア・ヒール』は水量が多すぎる。というより、本来であれば純水を生じさせる効果自体がない。被術者の体内にある水分に働きかけて治癒を促すものであるからだ。それがフィーアの場合、何故か被術者を水球に浸して癒すという全くの別物と化している。その代わりというか、例の如くというか、回復力は抜群だ。あと飲水としても使える。便利。
『フロスト・バインド』は本来足止め用の魔術に過ぎない筈だが、フィーアのそれは上位の氷結呪文にすら匹敵する破壊力を有している。このまま成長すれば、どんな魔物だって一撃で凍りつかせられるのかもしれない。
『ファイヤ・ボール』は単純に火力が高い。そして一度着火した炎は中々消えない。代わりに制御も利かない。まるで下から煽られるようにあらぬ方向へ飛んでいく。
『ウインド・ブレード』はその使用すら禁じられている。どうやらこれは俺でも避けきれないものらしい。フィーアの使う魔術だし、やはりその破壊力は絶大なのだろう。
『ルミナス・ミラージュ』は本来の術から最もかけ離れている。光を操って姿を消す筈が、強烈な閃光を発生させる目眩まし呪文と化してしまった。これはもしかしたら、フィーアの光魔術に対する理解が浅すぎるせいなのかもしれない。或いは他に何か理由があるのやも。師匠の宿題とやらがその答えと関係しているようだ。




