01-17.お騒がせ兄妹
「師匠、今日も居なくなってしまったな」
「そうですね~……」
どうしたんだろう。今朝からフィーアの元気が無い。
やはり師匠が居ないからだろうか。或いは風邪でも引いてしまったのだろうか。
「今日は休むか?」
「い、いえ! そんなわけには!!」
「大丈夫だ。俺が行く。フィーアは宿に戻って休んでいてくれ」
「できません!!」
……そうか。……そうだよなぁ。
「すまない。やっぱり手を貸してくれ。俺では探知魔術を使うことも出来ないからな。見落としがあっても困る」
「あ、いえ! あの!! そんなことありません!! ベランさんのスキルだって似たようなことは出来る筈です!!」
……それはそうなんだけどな。フィーア程の精度はないから、どうしても対応が遅れてしまうだろうし。
「でも一緒に行きます! 私たちはパーティーです! ベランさんだけに仕事を押し付けたりなんてしませんから!!」
フィーア……。
「……そうか。ありがとう。けど無理はするなよ。フィーアが怪我をしたら元も子もないからな。より多くの人を救うなら、自分の健康が第一だ」
昔師匠がそんなことを言っていた。
「はい!! ベランさん!!」
大丈夫だろうか……。先ほどまでと一変して、今度は気を張りすぎているようにも見える。
「フィーア。手でも繋ごうか」
「はい!! って!? えぇ~!?」
「昔師匠がよくそうしてくれたんだ」
「はっ!? それってまさか!? また子ども扱いしてるんですかぁ!?」
扱いもなにも、フィーアはまだ子どもだろう。国の法律で成人と定められていようと、経験の浅い若者に違いはないんだし。
「やめておくか?」
「いえ! それはそれです!!」
ガシッと握ってきた。
……やっぱり俺より握力強いんだな。
……いかんいかん。こんなことで卑屈になるなんて。
それより見回りだ。ギルドからも頼まれた大切な職務だ。しっかり全うするとしよう。
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「不審者の目撃情報が相次いでいます」
見回りを始めてから暫くが経った頃。
俺たちはまたしてもギルド長に呼び出されていた。
「「不審者?」」
そんな……俺たちが見落としていたなんて……。
「大人の男性が、年端もいかぬ少女を連れ回し、ダンジョン内でいかがわしい行為に耽っていると」
「「なんですって!?」」
「……誤報であったようで何よりです」
「「???」」
「しかし誤解されるような行動は控えて頂きたく」
……あれ? もしかして俺たちか? この噂って。
「毎日毎日手を繋いで仲睦まじく歩いていれば、嫉妬の一つ二つも買うでしょう」
えぇ……。
「ただでさえ貴方がたは警戒されているのです。いらぬトラブルが起きるのも時間の問題です。くれぐれもご注意を」
「「す、すみませんでした……」」
「もちろん貴方がたが真面目に見回ってくださっていることも理解の上です。個人的に二人の関係に対して思うところもありません。ですが皆がそうであるとは限りません。どうかお忘れなきよう」
「「はい……気をつけます……」」
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やっぱりなぁ……。世間一般の評価はそうなるよなぁ。
俺としてはフィーアは妹や娘のような存在……正確には妹弟子だけど、そんなの端から見たらわからないもんなぁ。
だいたい、この歳の兄妹が手を繋いで歩くことなんて普通は無いもんなぁ。そんなの、本当の兄妹がいない俺にだってわかることだ。もっと気を遣うべきだった。
「フィーア。悪いけど」
「ダメです!!」
「フィーア?」
「我に策ありです♪」
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「あのですねぇ……」
「「すみませんでした!!」」
ダメでした……。
フィーアの作戦。それは二人ともダボダボのローブを着て、人相や繋いだ手を隠す作戦だった。
どうしてそこまでして手を繋ぎたいのかはわからないけど、フィーアの勢いに押されてつい了承してしまった。
結果、今度は見るからに怪しいローブの二人組が誕生しただけだった。なんなら新手の魔物だと疑われて攻撃されることさえあった。
「「もう二度といたしません」」
「頼みますよ。本当に」
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「う~ん……」
フィーア。また悩んでる。
ローブ作戦は失敗だったけど、他にも何か手がある筈だと考えているようだ。
「誰か近づいてきたら放すのでよくないか?」
どうせ二人とも探知を使えるんだし。
「そうですね~……」
何か納得いっていないようだ。
「いえ! 私決めました! お師匠様に相談してみます!」
「よかろう♪ 新技を教えてやろうぞ♪」
あ、出てきた。
師匠さては、ずっと付いてきていますね?




