01-14.少女の成長
十階層までの調査が完了した。
元々十階層までは調査済みのエリアではあったものの、どうせ下の階層も調べるならと、纏めて調べ直すことにした。
何より怖いのは、ボス部屋を介さずに十一階層以降へ進めてしまう通路の存在だ。ダンジョンには稀にそういう通路が生じることもあるそうだ。
だから徹底的に調べ上げた。フィーアの魔術のお陰で隠し通路の類も漏れなく把握できた筈だ。地属性の探知魔術『アース・フィール』には、魔物だけでなく、罠や隠し部屋の類を見つけ出す力もあるからだ。
「結構変わってるな」
「そうですね。ショートカットが無かったのは幸いですが」
新しく作った地図と、既存の地図を見比べて、二人で頭を悩ませる。
「一旦ギルドに戻ろうか」
「ですね! 調査を進める前に報告しておきましょう!」
そんなわけで、一旦その日の調査を切り上げて、冒険者ギルドを訪れた。
----------------------
「ご苦労さまです」
ここ数日、毎日定期的に報告を入れていたお陰か、受付嬢のノーラさんは嫌そうな顔をしなくなった。
「十階層までの調査が完了しました。直ちに脅威となる存在は認められませんでしたが、既存の地図とは幾分か変化が生じています。取り急ぎご報告を」
「どうぞこちらへ」
ギルド長の待つ奥の部屋へと通された。
----------------------
報告を済ませると、ギルド長も地図を見比べて考え込み始めた。
「まだ暫く変化が続くかもしれませんね」
やはりか……。
「見回りを優先すべきでしょうか?」
フィーアが次の判断を仰いだ。
「そうですね。貴方がたにお付き合い頂けるのであれば、当面は調査を中断して十階層までの見回りを続けて頂きたく。直に応援も来ますので。それまでお願いできますか?」
「「はい!」」
「感謝いたします」
元はと言えば俺たちのせいなんだがな……。
「ところで『万象六花』は? 今はどちらに?」
ばんしょうりっか? 何の話だ?
「失礼。カザリナス氏はどちらに赴かれたのでしょう?」
「師匠とはあれ以来会えていません」
「今のって二つ名ですか!? お師匠様の!? すっごくカッコいいです!!」
フィーアが興奮してる。
そうか。二つ名か。Sランクだものな。そういうのあるよな。聞いたことは無かったけど。どういう意味の言葉なのだろうか。気になる。
「詳しくは本人からどうぞ」
探せと言っているのかもしれない。
----------------------
ギルド長との打ち合わせを終えて、いつもの宿へと戻ってきた。
「ベランさん。そろそろ部屋を一緒にしませんか?」
何を言い出すのだろう、この子は。
「お師匠様は戻られませんし。私一人では万が一襲われた時に対応できません。なにせ物防低いですから」
それでもここらの冒険者たちよりは上だからね。
「心配ないよ、フィーア。俺のスキルは知っているだろ。俺が寝ていてフィーアに危険が迫っても、危険があれば必ず伝わるから。必ず間に合うように乗り込むよ」
----------------------
フィーア危機:フィーアに危険が迫った時:30分以内
----------------------
リマインダースキルが必ず察して通知を鳴らしてくれる。
俺が気付けないことはあり得ない。必ず余裕を持って対応できる。だから何の心配もしていない。
「ベランさん。本当は私、不安なんです。毎日心細くて寝不足気味なんです」
むむ。
「お師匠様が戻られるまでで構いませんから。どうか一緒の部屋で寝てください」
う~ん……。そうかぁ。スキルで安心出来るのは俺だけなんだよなぁ。確かにフィーアの心理的な負担までは考えてなかったなぁ……。
「でもなぁ~」
「なんだいなんだい! 女の子にここまで言わせといて! 男ならスパッと覚悟決めないかい!」
「あ♪ 女将さん♪」
この宿の女将さんが、受付の奥の部屋から出てきた。話は全て聞かれていたようだ。
「おかえり♪ フィーアちゃん♪ ほれ♪ 二人部屋の鍵さね♪」
あ、ちょっと。
「ありがとうございます♪ 女将さん♪」
「頑張んだよ♪」
「はい♪」
いやあの……。
「行きましょう♪ ベランさん♪」
えぇ……。




