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ラウンドシフト 俺四捨五入で死ぬの!?  作者: 池金啓太
ラウンド2「星の戦の絶えぬ世界で」

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22/33

022:すれ違った結果がこれだよ!

 作戦の見直しは、主に吉野を軸に動いていた。吉野が主に考えた作戦であるため、作戦会議に主に出席するのは吉野や、他の将軍たちの腹心の部下で、その報告を各将軍が受ける形になる。


 当然、変更点しか伝えられないから入弦はまだ作戦の全容を知らない。


 こんな状態で本当に良いのだろうかと思いつつ、吉野に少しずつではあるが口頭で質問をすることで全容を掴みつつあった。


 今相手が行っている意図的な戦闘行為。これに関しては基本的には今まで通り圧倒的戦力差を作って対処する。


 そしてそれによって航行ルートを意図的に把握させ、同時にこちらの工作員がとある情報を流す。それは本星周辺の防衛の増強の噂だ。


 現在存在している四つの衛星型の要塞をさらに増やすことを目的としている。


 そのため、衛星軌道を僅かにずらし、今まで比較的等間隔となっていた要塞同士の距離に変化を加える。


 当然、要塞間の防衛線は強化するが、その分要塞一つに当てられる防備を若干減らすというものだった。


 今回相手を引き込もうとしているのは、要塞の一つ。周辺の防衛線を強化する代わりに、戦力を若干減らし、他の要塞との距離を少し開けたその場所だ。


 逆に言えば、その要塞さえ突破できれば、本星までの道はほぼ開いたも同然。相手にそのような情報を意図的に流す。だが決して、こちらから意図的に流しているものだと悟られてはいけない。


 その辺りは帝国の情報部がかなり気を遣っていたと吉野はぼやいていた。


 そして、予想していた通りに諸星での戦闘が行われた。


 戦力差のある中での戦闘行為。そしてその中でも、やはり民間の船がいくつか確認されたという。


 帝国側からすれば、あの民間の船が怪しいことはわかっていても、民間の船を戦闘中だからと言って攻撃していい理由にはならない。


 ちょうどその星に商売に来ていた商船という名目で逃げ去るその機体は、すでに帝国からもかなり厳重にマークされていた。


 吉野たちが持ち帰った情報をもとに、すでに反乱軍に対しての包囲網は形成されていると言っていい。


「報告します。反乱軍が動き出したとのことです」


「そうか……ようやくか」


 この世界に来て一体どれくらいの時間が経過しただろうか。一カ月どころの話ではない。この間の世紀末な世界に比べて随分と長くこの場所にいてしまった。


 おそらくこの反乱軍の戦闘が、全てを決めることになるだろうと、入弦も確信していた。


「失礼します……っと、報告か?」


 部屋に入ってきたのは吉野だった。そしてすでにいた兵士を確認してからそれを迎えている入弦の方を見る。


「はい。反乱軍に動きが」


「ようやく来たか。オッケーだ、あとは俺がやっとくよ」


「はっ、失礼します」


 鎧を着こんだ兵士が出ていくのを確認して吉野は大きく肩をすくめる。機械らしからぬ動きだが、それでも人間らしさも残しているということだろうか。


「キョーちゃん、報告の通りだ。すでに連中は動き出した」


「あぁ。これで最後だ。これで最後にする」


 その言葉に吉野は首を横に振って入弦のいる机の近くにやってくる。


「今、集結しつつある反乱軍の一部が、帝国の警戒網のいくつかに引っかかって戦闘を始めた。当初の予定通り、一割程度の戦力は足止め、もしくは殲滅できるだろうよ」


「だが連中は止まらない。そうだろう?」


「あぁ、連中もこの程度は想定内だと思ってるんだろうよ。だが、もうこっちも準備を終わらせてある。いつでも行けるぜ」


「悪かったな。準備大変だったろ」


「こんなのどうってことねえよ……なぁキョーちゃん、本当に、このままでいいのか?」


「どういうことだ?」


 吉野が気まずそうにそう聞くことが、あまり良いことではないと入弦も察していた。何か問題でもあるのだろうか。そんなことを考えていると、吉野は入弦の机の前に立ち、前のめりになる。


「このまま行きゃ、反乱軍はもうすぐここにやってくる。大量の軍艦が押し寄せる。間違いなくここは落ちる。同時に、この要塞の自爆と、周辺に用意してある兵器を総動員して、一帯の空域を消滅させることになる。その後は包囲殲滅戦だ」


 そう言う手はずだったのかと、入弦はようやく全容を知ることができて安堵する。この要塞の自爆。どれだけの威力があるかは不明だが、襲い掛かる戦艦をすべて巻き込むことはできずとも、かなりの損害を与えることはできるだろうことは予想できる。


 さらに周辺に待機している防衛用兵器を用いた殲滅戦。一か所に敵を誘引している状態であれば大打撃を与えることも不可能ではない。何せここは自陣。相手の情報を獲得するのは問題ないだろう。


 あとはどれくらい自爆で相手を巻き込めるかという話になってくる。新たな要塞の建造というのもあながち間違いではないのだ。


 何せこの要塞を吹き飛ばして、新しいものを作るのだから。


「それの何が問題だ?唯一の懸念としては、自爆した時にどれだけ相手を巻き込めるかだ。そのタイミングだけは気を付けなければならないだろう」


 そして入弦にとって問題なのは、その自爆の前にこの場所から離れるということだ。本星に逃げるというのが一番確実かもしれないが、将軍という立場の人間がどのタイミングで逃げるべきなのか測りかねるものがある。


「……それが問題だって言ってるんだよ……!この要塞を自爆させるには、将軍クラスの承認がいる。この辺りの宙域にいる将軍はキョーちゃんだけだ。キョーちゃんじゃなきゃこの要塞を自爆させられない。それでいいのかって聞いてんだ!」


 その言葉に、入弦は目を丸くする。もっとも仮面のおかげでその表情は相手に伝わらなかっただろう。


 俺自爆するの?そんな感想を抱きながら、入弦は内心冷や汗を止められなかった。


 この要塞の自爆に必要なのは、中央コンソールにて将軍クラスの人間の生態データをもとに形成されたパスコード入力を行うことで成り立つ。


 直接コンソールを操作する必要があり、遠隔での操作は不可能。


 つまり要塞の自爆には、将軍が直に操作する必要があるということである。


 そんな設定知らんぞ!と入弦は内心叫びたかった。とはいえ、そのような情報があればこのような提案はしなかったし何か別の策を考えただろう。


 とはいえ吉野が入弦の考えを深読みし、なおかつそれに対して何度も止めようとする言葉をかけていたのは事実だ。


 互いに明言を避け、ここまで来てしまったのが原因とはいえ、入弦は内心頭を抱えていた。


『アカさん!アカさん!ヘルプ!』


『なんだ久しぶりに呼び出しおってからに。そっちの世界は順調か?』


 入弦の呼び出しと同時に世界の時間が止まり、間の抜けた声を届かせるアカは、即座に応じてくれていた。入弦の緊張感ある状況とは全く違うリラックスした声だった。


『このままだとまずい。俺このままだと要塞ごと自爆するかもしれない』


『…………すまん、状況が理解できんのだが……お前は生きようとしていたのではないのか?それがなぜ自爆など?』


『いや、話の流れというかなんというか……とにかくこのままじゃ間違いなく死ぬ』


 ここから逃げようとすれば、帝国の人間につかまって殺される可能性が生まれてくる。逆にこのまま居座れば入弦の言うように自爆するしかなくなる。


 入弦のことを目の敵にしている将軍たちが自棄にこの作戦を推しているのかがようやく理解できてしまった。


 この作戦を入弦から言い出したことで、入弦を何の苦労もなく、自主的に退場させられるのだ。


 自爆などという行動をとることで、何の策を弄することもなく入弦を殺せる。他の将軍としては渡りに船だったのだろう。


 逆にこの策に反対していた皇帝、モーバー将軍などは入弦にとって味方というべき存在だったのだ。もっとそのあたりを見極めて話しを進めるべきだったと、入弦は強く反省し後悔していた。


『とにかく、このままじゃ俺、この世界では死んじゃうんだけど、その場合どうなるんだ?近似値的な話で』


 入弦の元の世界、そこで生き残るためにはほかの世界にいる入弦の死の運命を回避することが必要だった。


 だがこの世界の入弦を助けられなくなった時、もう助けられないというところまで、手遅れの状態になってしまうのか否か。それが気がかりだった。


『んー……実際になってみないことにははっきりしないが……少なくとも救わなければいけない世界が増えるのは間違いない。今一つ、あと二つ救えば何とかなりそうだったところが……逆そこがダメだったとなると……少し遠くの世界にも足を運ばなければいけなくなるだろうから……救わなければいけない世界の数が三つくらい追加されるかもしれん』


 つまり、この世界を除きあと五つの世界の入弦を救わなければいけなくなる。だがまだ絶望的な状況ではないのだ。まだ何とかなる。


 その希望を胸に、入弦はこの状況でどうしようかと近くにいる吉野の方に意識を向ける。


 前の世界で入弦を命がけで助けてくれた吉野だ。この世界でも、入弦のためにずっと働いてくれている。


 そんな吉野だけは何とか助けられないかと、入弦は考えていた。


『アカさん、たぶんこの世界の俺死ぬから。次の世界に行く準備だけ頼める?』


『諦めるのか?まだ取れる手段はあるだろうに』


『最後まで頑張ってみるけど、まぁ期待薄だと思っててくれ。それじゃ』


 入弦が生き残る可能性があるとすれば、反乱軍が予想より弱く、自爆させるまでもない状況に陥った時。自爆装置が壊れていた時。入弦が逃げ出しても帝国の人間が気づかず、入弦をどこか辺境の地まで逃がしてくれた時の三種類程度だ。


 このような状況になるような好都合なことがあるはずもない。反乱軍は間違いなく大軍を率いてくるだろう。確実に大規模な戦闘になる。


 自爆装置が壊れているなどということもあり得ない。何せこの作戦の肝だ。そんな重要なものの点検をしていないとは思えない。


 三つめもない。入弦のことを目の敵にしている将軍たちが、敵前逃亡をした入弦をこれ幸いと捕まえるだろう。そして入弦を帝国の裏切り者として処刑する。


 どうあがいてもこの世界の入弦に助かる術はない。


「吉野、お前はモーバー将軍のところに行け」


「は?いきなり何言ってんだ……?」


「ここにいたってお前にできることはもうない。だから、モーバー将軍のところでお前を雇ってくれないか、頼んでみる」


「ざっけんな!許さねえぞそんなこと!そんなことじゃねえかって思ってたんだ!勝手に話進めるなんざ絶対に認めねえぞ!」


「ここにいるよりはいいだろ。モーバー将軍なら、あの人ならお前を悪いようにはしないはずだ」


「そういうこと言ってるんじゃねえんだよ!キョーちゃんは、死にたくないとか、そういうこと思わねえのかよ……帝国のためとかなんとか言って……そんなのよ……皇帝に恩があるのはわかるし、俺だって帝国のために働きてえって思うよ。けど、けどよ……」


「……俺だって、死にたいわけじゃない。死ぬ以外の方法があればそうしてる」


 死にたくないからこうして別の世界にまでやってきているのだ。そんなことを吉野に言っても仕方がない話なのだが。


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