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OZ-Operation Zero-  作者: Tea
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第4話「OZ対策特別チーム」

2036年4月初旬。

東京では、桜が散り始めていた。朝の雨が庁舎の窓を濡らし、灰色の空が会議室のガラスに映っていた。

長いテーブルにはOZに関する資料が並び、壁の大型モニターには過去1年の事件が時系列で表示されている。


老人ホームへの襲撃、高齢者を狙った殺人、政治家への脅迫。

事件の数は増えているのに、組織の実態はほとんど見えていなかった。構成員の人数も、資金源も、全国にどれほど拠点があるのかも確定できない。

公開された声明には一貫した思想があり、現場の動きにも一定の規律がある。単独犯の集まりと片づけるには、説明できない点が多すぎた。


「世論は待ってくれませんよ」


会議に出席した幹部の1人が言った。

新聞の見出しがスクリーンに映し出される。

「政府はOZを放置するのか」「高齢者を狙う連続事件、対策は」「社会保障への不満を利用する過激派」。報道だけでなく、インターネット上でも政府への批判が広がっていた。


別の幹部は腕を組んだ。


「だが、OZが本当に国家的脅威なのか、現在の状況だけではまだ判断材料が足りない。大規模な組織だと決めつけて予算を投じるのは難しい」


「では、次の事件が起きるまで待つのですか」


会議室に短い沈黙が落ちた。誰も、そうだとは言いたくなかった。

だが、予算を増やすには根拠が必要であり、根拠を得るには捜査が必要だった。何もしないことへの批判と、十分な証拠なしに大きな組織を作ることへの警戒が、同じ机の上でぶつかっていた。


その結果、政府は2036年4月、「OZ対策特別チーム」を結成した。

人数は合計15名。情報分析、捜査、サイバー対策、通信、現場対応、狙撃対策、救護を小さなチームで分担する。

必要最低限という説明だったが、実際には、これ以上の人員と予算を確保できなかったという事情が大きかった。


新庄(しんじょう)たいきは、配布された編成表を見つめた。

52歳。長身で、黒髪を後ろへなでつけており、メタルフレームの銀の眼鏡をかけている。

若いころから期待に応えることを求められ、組織の中で結果を出すために努力してきた。だからこそ、手元の数字が何を意味するかはよく分かった。


「15人ですか」


向かいの幹部は、書類を閉じた。


「まずは予備的な体制だ。状況が変われば増員も検討する」


「現場は待ってくれません。OZが複数の場所を同時に狙ったら、捜査も警備も手が回らない」


「だからこそ、情報を集めて優先順位をつけてほしい。君の判断に期待している」


期待という言葉は、時に予算の代わりに使われる。新庄は反論を飲み込み、編成表を持って会議室を出た。


同じころ、警察官の金瀬(かなせ)らいも新しい配属先を知らされた。

26歳、階級は警部補。小柄な体格と若い顔立ちのせいで、初対面の相手から実力を疑われることがあった。

新設チームの現場担当と聞いても、周囲の反応は必ずしも歓迎一色ではなかった。


「君が現場を?」


書類を渡した職員が、確かめるように尋ねた。


「はい。金瀬警部補です」


「いや、失礼。思ったより若いのでね」


「年齢は資料に書いてあります」


金瀬は淡々と答えた。相手は気まずそうに咳払いをし、配属書類を渡した。

金瀬は言い返すために来たのではない。現場で結果を出すために来たのだ。


初会合の日、15人が会議室に集まった。

情報分析を担当する高橋直樹、捜査担当の水野玲子、組織と資金の分析を担う佐伯健一、情報管理の中村美咲、通信とサイバー分野の田島直人、小川雅也。

現場には藤本和也、吉田翔太、石井修司、松田拓真、山本由紀、岡田雄介、井上裕也が配置された。

全員が専門を持っていたが、全員の仕事を合わせても、OZの全体像を追うには足りなかった。


新庄は立ち上がり、資料を机に置いた。


「我々はOZの規模も、次の標的も、まだ分かっていない。

だからといって、何も分からないままにするつもりはない。事件が起きてから追うだけでは遅い。

情報を共有し、仮説を立て、外れたら修正する。15人しかいないことは変えられないが、15人でできることまで諦める理由にはならない」


「同時に2件起きた場合はどうしますか」


現場担当の1人が尋ねた。


「優先順位を決める。必要なら、できないことも報告する。できるふりをして現場を危険にさらすのが、いちばん最悪のパターンだ」


金瀬は新庄を見た。現実を分かっている人間の言葉だった。だが、現実を理解することと、現実を変える力を持つことは別だ。


会議のあと、金瀬は窓際に立ち、雨上がりの道路を眺めた。車のライトが濡れた舗装に伸び、歩道では傘を畳む人々が行き交っていた。誰もが自分の生活に戻っていく。

OZが次にどこを狙うのか分からないまま、日常だけが続いている。


「金瀬警部補」


新庄が声をかけた。


「はい」


「現場で無理をするな。勇気と無謀は違うぞ」


「分かっています」


「君の判断を信頼したい。だが、こちらにはまだ十分な情報がない。分からないことを分かったふりはしないでくれ」


金瀬は頷いた。


「その代わり、分かるまで調べます」


新庄は小さく笑った。


「そうしてくれ」


15人のチームは、あまりにも小さく、装備も予算も限られていた。政府はまだOZを本格的な国家的脅威と認めていない。

だが、その小さな部屋で働く者たちは、事件が次に起きたとき、自分たちがその最前線に立つことを理解していた。


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