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カース・オブ・エレニア ~蘇りし呪術師の成り上がり復讐劇~  作者: さかさき まる
第五章 風に舞う偽りの絆

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第32話-2「血塗られた処刑台」



 夜が明けても、空は灰色の雲に塞がれたままだった。陽の光は、どこからも差してこなかった。

 エオリアの広場は、朝早くから異様な熱気に包まれていた。

 中央に、夜通し組み上げられた木の処刑台がそびえている。乾ききらない材木から樹脂の匂いが立ちのぼり、それが古い血の臭いと混じって、鼻の奥にこびりついた。

 処刑台の周りを、黒い甲冑の兵士たちが幾重にも取り囲んでいる。黒いマントの背には、羽を広げた鳥の紋章。エアハルト家の精鋭だ。その内側には黒衣の術師が数十人並び、低い声で守りの術式を唱え続けていた。途切れない詠唱が、広場の空気を重く押さえつけている。


「見ろよ......あれが例の呪術師だろ?」

「七大貴族の領地を荒らし回ってたお尋ね者だってな」

「ケッ、いくら暴れたところで、ゼフィロス様とシルヴァン様に捕まっちゃお仕舞いよ。見せしめにはちょうどいい」


 集まった群衆は数千にのぼった。怯えと好奇心の入り混じった目が、処刑台の上へ向けられている。野次と囁き声、広場を見下ろす露台からは貴族たちの笑い声。誰もがこれから起きることを、少し離れた見世物として眺めていた。

 その群衆の端に、フードを目深に被った男がいた。左の袖は肩の先から空っぽで、包帯が固く巻かれている。


 ガルトだった。


 シルヴァンは、自分が昨夜あの地下で死んだと思っているだろう。ここへ来たのは、誰に命じられたからでもなかった。


(カース……すまねえ)


 処刑台の上を、まともに見ることができなかった。自分が売った若者だ。その結末が、今から目の前で行われようとしている。

 失った腕の付け根が疼いた。だがそれより、昨夜腕の中で消えていったあの温もりのほうが、ずっと深く胸を抉っていた。


(俺には、もう何も残っちゃいねえ)


 それでも、ガルトの足はその場を離れなかった。せめて最後まで見届ける。償いにもならないとわかっていても、それしかできなかった。

 処刑台の中央。石を敷いた床に、一人の少年が跪かされていた。


 カースだった。


 黒い旅外套はずたずたに裂け、乱れた髪の間から覗く顔は泥と乾いた血にまみれている。両手首には、太い呪封じの鎖。鎖の継ぎ目から青白い光が漏れるたびに、カースの体に細かい痙攣が走った。呪力の通り道を、内側から一本ずつ焼き切られていくような痛みだった。


「......惨めなものだな、呪術師」


 処刑台の脇、豪奢な椅子に腰かけて杯を傾けながら、シルヴァンが目を細めた。傍らには、甲冑に身を包んだゼフィロスが控えている。


「お前が死ねば、その呪いも、古い怨念も、すべてこの世から消える。お前が仲間だと思っていたあの男もな、最後には自分の大事なもののために、あっさりお前たちを売った。哀れだとは思わんか?」


 カースは何も答えなかった。答える力が、もう残っていなかった。

 ガルトの裏切り。捕らわれた自分。自分がいたせいで起きた、いくつもの惨劇。頭の中が濁り、全身の痛みで感覚が遠のいていく。


(......ここで、終わるのか)


 首筋に、執行人の大斧の刃が当てられた。冷たい鉄の感触だけが、はっきりとわかった。

 執行人が、斧の柄を両手で握り直す。

 群衆のざわめきが、潮が引くように静まっていった。


 誰もが、次の一瞬を待っていた。


「どけええええええっ!!」


 広場の後ろで、怒号と悲鳴が弾けた。

 群衆が悲鳴を上げて散っていく。その真ん中を、一人の男が血しぶきを巻き上げながら、真っ直ぐ処刑台へ突っ込んできた。


 ウォルターだった。


 全身が返り血で赤黒く染まっている。銀の大剣が、曇り空の鈍い光を跳ね返した。


「なんだ奴は! 止めろ! 斬り伏せろ!」


 指揮官の怒鳴り声に、黒甲冑の兵士たちが一斉に槍を揃えて立ち塞がった。

 ウォルターは足を止めなかった。


(シークが屋根から行く。それまで、下の目は全部俺が引きつける)


「邪魔だっ!」


 大剣が一閃し、突き出された槍が五本まとめて半ばから折れ飛んだ。踏み込んだ勢いのまま横薙ぎに振り抜くと、前列の兵士が三人、甲冑ごと吹き飛んだ。


 だが、数が違いすぎた。


 一人倒せば、死角から三人、五人と襲いかかってくる。いくら薙ぎ払っても、黒い甲冑の列は途切れなかった。


「囲め! 一人だ! 足を狙え!」


 槍の穂先が、太腿を、腕を、脇腹を掠めていく。革鎧が血で重くなり、一撃受けるごとに体の芯から力が抜けていった。


「ぐ......っ」


 左肩に槍が深々と突き立った。

 それでもウォルターは歯を剥き、大剣を振り上げた。


「見てるだけなのは......もう、ごめんなんだよ!」


 あのとき、手を伸ばせなかった。伸ばせないまま、大事なものを失くした。ここで下がれば、また同じことを繰り返す。


「カースに手を出すなああっ!」


 振り抜いた大剣に、周りの兵士が数人まとめて倒れた。だが膝ががくがくと震え、視界の端が赤く滲んでいく。大剣がひどく重い。息は浅く、喉からは掠れた音しか出なかった。


「そこまでだ、死に損ないが」


 頭上から、とどめの一撃が振り下ろされた。ウォルターは歯を食いしばり、最後の力で大剣を掲げた。




 空気が裂けた。

 ウォルターに群がっていた兵士たちの頭上へ、紫の雷が幾筋も降り注いだ。轟音とともに、十数人がまとめて吹き飛ぶ。


「やれやれ。随分と泥臭く粘ったじゃない」


 立ちこめる煙の中から、ゆらりと人影が現れた。

 アズラエルだった。いつもの薄笑いはなく、瞳の奥で紫の光が細かく爆ぜている。


「アズラエル......てめえ、遅えんだよ......!」

「文句言わないでよ。これでも急いだんだから」


 アズラエルが指を鳴らした。突っ込んできた重装歩兵の列が、雷の衝撃に薙ぎ払われて転がった。


「術師ども、何をしている! 奴を止めろ!」


 ゼフィロスの声が飛ぶ。処刑台を囲んでいた術師たちが、一斉に詠唱の向きを変えた。だが、アズラエルのほうが速かった。


「――邪魔」


 紫の雷が広く弾け、処刑台の前を固めていた兵士たちが次々と崩れ落ちていく。たった一人で、軍の前列を押しとどめていた。

 処刑台の上では、執行人の斧がじりじりと持ち上がっていく。


「撃つな! 動くな!」


 兵士の一人が叫んだ。

 その腕の中に、幼い少女がいた。広場の隅で震えていた、街の子どもだ。髪を鷲掴みにされ、喉元にナイフを押し当てられている。


「ひっ......お、お母さん......っ」

「一歩でも動いてみろ、このガキの首を掻っ切るぞ!」

「......ちっ」


 アズラエルの手が止まった。指先の紫電が、じじ、と音を立てて萎んでいく。


「一般の子どもを盾にするのかよ、貴族の兵隊が!」


 ウォルターが血を吐きながら怒鳴った。兵士たちは、にやにやと笑っているだけだった。


「ボクとしたことが。こんな下らない手で足を止められるなんてね」


 アズラエルの眉間に皺が寄った。雷は広く届く。届きすぎる。撃てば、あの子ごと焼いてしまう。

 処刑台の上で、執行人が大斧を頭上まで持ち上げきった。


「ねえ、呪術師くん」


 アズラエルは処刑台を見上げて、ぽつりと言った。


「こんなところで終わる気?」





「――まだ、終わらせない」


 二人の頭上を、風を裂く音が駆け抜けた。


 シークだった。


 両脚に、限界を超えた風の力を注ぎ込んでいる。屋根から屋根へと跳ぶたびに、足の皮膚が裂けて血が宙に赤い尾を引いた。痛みは感じない。自分の足が今どうなっているのか、見ようとも思わなかった。


(カース......カース......!)


 処刑台の上に跪く姿だけが、目に入っていた。

 実験台の上で何も感じなくなっていた自分に、もう一度、温かいものを思い出させてくれた。死なせてたまるか。


「おおおおおっ!!」


 シークは空中で身を捻り、風の弾丸になって処刑台の真上から急降下した。


 硬い音が響いた。


 処刑台を覆っていた、目に見えない風の障壁だった。叩きつけられた衝撃で肩が外れ、口から血が溢れる。それでもシークは、落ちながら次の拳を握り直していた。


「障壁......っ」

「無駄だ、小僧! この守りは術師十人がかりで張っている! 拳など通るものか!」


 障壁の内側で、術師が嘲笑った。


「どけ......どけええええっ!!」


 シークは着地の体勢も取らず、障壁に拳を叩きつけ始めた。


 ごっ。ごっ。ごきっ。


 一撃ごとに拳の骨が砕け、皮膚が裂け、障壁に赤い手形がべったりと増えていく。痛みを感じない体は、止まる理由を持たなかった。シークは叩き続けた。何度目なのか、もう数えていなかった。


「く、狂ってる......! 腕が壊れるぞ!」


 術師たちが、シークの形相に気圧されて後ずさった。


 障壁の表面に、細かいひびが走り始めた。だが、遅かった。


 障壁の向こうで、執行人の斧が頂点で止まった。次に動くときは、振り下ろされるときだ。


「カース! 目を開けろ、カースっ!! 諦めるなあああっ!!」


 障壁に顔を押しつけ、血と涙にまみれたシークが叫んだ。

 かつて何も感じなかった少年の喉から絞り出された、剥き出しの声だった。





 その叫びは、深い水の底で聞く泡の音のように、遠く、くぐもってカースに届いていた。


(......シーク......? ウォルター......?)


 体の感覚が消えていく。目の前が暗い。鎖が呪力を削り取るたびに、自分という形が少しずつ闇に溶け出していく。


(届かないんだ)


 ぼんやりと、そう思った。


(みんな、僕を助けようとして、また傷ついてる。僕のせいで)


 胸の底から、冷たいものがじわりと湧いてくる。


(最初から、生き返らなければよかったんだ)


 暗闇の奥から、懐かしい影がいくつも滑り出てきた。

 無邪気に笑っていたミミ。優しかったトウマ。気の強かったリタ。小さなチビ。黒い毛並みのネロ。そして、最後に涙を見せたミト。


 影たちの手が、闇の中からそっと伸びてくる。


『もういいんだよ、カース』

『つらかったでしょう。もう頑張らなくていいの』

『こっちへおいで。静かなところへ、一緒に行こう』


 温かい声だった。この手を取れば、もう痛みに耐えなくていい。誰かに裏切られて泣くこともない。

 カースは、その手へ向かって腕を伸ばしかけた。


『カース、諦めるなっ!!』


 シークの声が、暗闇の壁を突き破って届いた。


 続いて、ウォルターのしゃがれた怒鳴り声。


『カースに手を出すなああっ!』


 そして、どこか他人事のような、アズラエルの声。


『こんなところで終わる気?』


(あいつらは......)


 カースは伸ばしかけた手を止めた。


(呪術師としてじゃなく、僕を僕として見てくれた。今も、命を懸けてあそこにいる)


 伸ばされていた影たちの手が、ふっと形を変えた。引き寄せようとしていた手が、いつの間にか、カースの背中を前へ押していた。


『行きなさい、カース』

『生きて。私たちの分まで』


 影たちが光の粒になって、ほどけるように消えていった。


(死ぬわけにいかない)


 胸の底の冷たいものが、裏返った。


(生きる。あいつらと一緒に生きて、生き抜いて、奴らを必ず終わらせる)


 処刑台の上で、鎖に縛られたカースの指先が、かすかに動いた。





 大斧が振り下ろされた。

 重い鉄の刃が、カースの首筋に触れる。時間が、その一瞬だけ粘りつくように引き延ばされた。

 群衆が息を呑んだ。シルヴァンの口元が吊り上がる。障壁の向こうで、シークが目を見開いた。

 刃が、皮膚にわずかに食い込んだ。


「――身代わりの藁人形(かたしろ)」


 声にもならない声だった。


 カースの意志より先に、その内に積もり重なった呪術師たちの記憶が動いていた。死にたくない。消えたくない。何百年分もの執念が、宿主の死を拒んで溢れ出した。

 光ではなかった。処刑台の上に広がったのは、腐った泥と、饐えた血の臭いだった。

 カースの輪郭が、水に落とした墨のようにぐにゃりと崩れた。黒い泥が、藁くずを絡めながらどろりと溢れ出す。振り下ろされた大斧が断ち割ったのは、カースの首ではなかった。泥と藁で練り固めた、人の形をした塊だった。


「な......なんだ......っ、ぐあああっ!」


 執行人が悲鳴を上げた。二つに割れた泥の塊から、黒い手のようなものが何本も噴き出し、その腕と顔に絡みついたのだ。


「泥が......人の形に......!」

「化け物だ! 呪いが出たぞ!」


 処刑台の周りの兵士たちが、悲鳴を上げて逃げ惑い始めた。術師たちも詠唱を放り出して後ずさる。シークが叩き続けていた障壁が、音もなく揺らいで消えた。

 泥の人形は膨れ上がり、カースそっくりの形になったかと思うと、乾いた音を立てて弾けた。黒い泥が、広場じゅうに降り注いだ。

 少女を捕まえていた兵士が、泥を頭から浴びて悲鳴を上げ、思わず腕を緩めた。その一瞬を、アズラエルは見逃さなかった。細い雷が兵士の手首を撃ち抜き、ナイフが石畳に転がる。少女は泣きながら、群衆の中へ駆け戻っていった。


「なんだと......!」


 シルヴァンが立ち上がった。手の杯が石畳に落ちて砕けた。


「ゼフィロス! 奴はどこだ! 殺したのではないのか!」


 ゼフィロスは答えず、鋭い目で広場を見回していた。


「身代わりの術か......己の血と、そこらの瓦礫を種にして、一瞬で入れ替わったな。だが、生身の人間にあんな真似ができるはずが......」

「驚くのはそれくらいにしておけ」


 シルヴァンは大きく一つ息を吐いた。次に出た声は、さっきまでとは質の違う、冷えた声だった。


「街の出入り口をすべて塞げ。港も運河も、例外なくだ。あの体で遠くへは行けん。必ずこの街のどこかに潜んでいる」

「かしこまりました。ですが、あの力は」

「私も初めて見た。だからこそ、生け捕りにする値打ちがある」


 シルヴァンの口元に、薄い笑みが戻っていた。


「逃げおおせたと思わせておけ。次は、もっと確かな檻を用意してやる」


 ゼフィロスは、かすかに眉をひそめた。ほんの一瞬前まで取り乱していた父が、もう次の盤を並べ始めている。この人の底は、いつまで経っても見えなかった。




 処刑台から少し離れた、崩れかけた見張り台の陰。

 倒れた木箱の隙間に、少年が一人、うつ伏せに倒れていた。


 カースだった。


 呪封じの鎖は、術の反動で粉々に砕けていた。だが、その代償も大きかった。無理やり絞り出した呪力に体が耐えきれず、皮膚のあちこちから血が滲み出している。胸の上下は、見ている者が息を止めてしまいそうなほど浅かった。


 それでも、確かに息をしていた。


「カース......! カースっ!!」


 シークが、壊れた腕を引きずるようにして駆け寄ってきた。砕けた指でカースの頬に触れ、息があるのを確かめると、その目からぼろぼろと涙がこぼれた。


「生きてる......! 生きてるぞ、ウォルター! アズラエル!」

「ったく......しぶとさだけは化け物並みだな、うちの坊主は......!」


 ウォルターが血まみれの体を引きずってきて、震える手でカースを抱き起こし、背中に背負った。口元は安堵で緩んでいた。だが、その奥がどこか強張っていた。


(さっきのあれは、何だったんだ)


 処刑台の上に広がった黒い泥と、そこから伸びた無数の手。あれがカースの力なら、自分たちは隣に何を背負っているのか。安堵の底に、小さな寒気が残っていた。


「シーク。今の......見たか」

「......ああ」


 シークの声も、少し震えていた。


「わからない。でも、あれもカースだ。それだけは確かだ」


 ウォルターはそれ以上、何も訊かなかった。背中にかかる、まだ温かい重みだけを確かめていた。


「アズラエル! 引くぞ! 道を作れ!」

「言われなくても」


 アズラエルが残った力を振り絞り、追ってくる兵士たちの前に雷の壁を立ち上げた。逃げ惑う群衆と雷の壁に阻まれて、兵士たちは近づけない。


 ばちばちと爆ぜる壁を見つめるアズラエルの口元に、誰にも見られない笑みが浮かんでいた。


(やっと、だね)


 呪いが、また一つ形になった。そのおぞましくて綺麗な瞬間を、この目で見届けた。胸の奥が、じんわりと熱かった。


「行くぞっ!」


 ウォルターたちはカースを庇いながら、闇市の入り組んだ路地へ駆け込んでいった。背後の怒号と、崩れる処刑台の軋みが、少しずつ遠ざかっていく。

 群衆の端で、ガルトはその背中を見送っていた。握りしめた右の拳が、震えていた。




 揺れる背中。誰かの荒い息。

 途切れ途切れの意識の中で、カースはわずかに目を開けた。


(――ここ、は)


 視界がぼやけて、焦点が合わない。鼻先に、汗と血の匂いがした。ウォルターの匂いだと、なんとなくわかった。


「......ウォル、ター」


 掠れた声に、ウォルターが首だけ振り返った。


「気がついたか! 無理すんな、じっとしてろ!」

「......僕、は」


 言葉がうまく繋がらない。頭の奥に焼きついているのは、黒い泥のぬめりと、執行人の悲鳴。それから、自分の中から溢れ出した、おぞましいほどの「生きたい」という渇き。


(僕は、何になったんだろう)


 答えの出ない問いを抱えたまま、カースの意識はまた闇に沈んでいった。

 煙と血の臭いが立ちこめる広場に、砕けた処刑台が取り残されていた。


 その上から、シルヴァンは散らばった泥の残骸を見下ろしていた。部下へ次々と指示を飛ばすその声は、低く、落ち着いている。取り乱してはいなかった。獲物を取り逃がした狩人の、静かな苛立ちだった。


「闇市の隅々まで、耳を放て。あの呪術師と仲間を匿う者は、一族もろとも同罪とする。街じゅうに、そう触れ回れ」


 怒鳴らないその声に、周りの兵士たちのほうが震え上がっていた。

 エオリアの冷たい風が、砕けた処刑台の間を吹き抜けていった。



(第33話「風を喰らう牙」へ続く)

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